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琴陵姉妹の異世界日記  作者: もっけさん
容子の追憶と暗躍
147/152

142.テイムさせました

 昼食が出来上がった頃に、宥子(ひろこ)が返ってきた。

「ただいまー」

「お帰り。昼食出来てるよ」

と台所から顔を出して声を掛ける。

 テーブルの上には、豆腐サラダと親子丼、ワカメの味噌汁が並べてある。

 宥子(ひろこ)は、欠伸を噛みしめながら席に着き、

「頂きます」

と言って、昼食にありついた。

「病院の先生は何て?」

と問うと、

「次回は、採血とレントゲンしましょうだって。診療代も馬鹿にならないしなぁ」

と今後も通院しなければならないと言う。

 貯蓄も心もとないし、何とかしてお金を稼がねば。

容子(まさこ)は、サイエスから売れそうなものを仕入れてきて。私は、フリマサイトやネットオークションで売り捌いてみる。それが軌道に乗れば、会社を興して仕事にしてしまえば良いし。蛇達の世話は、私がするから安心して稼いできてね!」

 宥子(ひろこ)の口ぶりからして、日本での社会復帰を諦めている様子だ。

「ごめん、もう眠気がMAXなの。寝かせて。残りは、後で食べる」

 宥子(ひろこ)は頭をフラフラさせながら、自室に戻って行った。

 私は、食べかけの食器にラップをして冷蔵庫に放り込む。

 行儀が悪いと怒りたいが、命懸けで冒険をしてきている宥子(ひろこ)に言える言葉じゃない。

 私は、彼女が目が覚めるまでの間、遅々として進まなかった執筆作業に取り掛かった。



 宥子(ひろこ)が惰眠を貪り目を覚ました頃には、空は赤く染まっていた。

 私もいつの間にか、執筆中に眠りこけていたようだ。

 時刻を見ると壁時計の短針が4を指している。

 時刻は、16時と少し回っていた。

「…きて……起きてってば! 容子(まさこ)、いい加減に起きろっ!!」

 宥子(ひろこ)の声が聞こえたかと思うと、肩をガシッと掴みにされ高速で前後左右に揺さぶられる。

 往復ビンタのおまけ付きで起こされた。

「うぅ……はよっ? 痛い…何で叩かれてんの、私??」

 往復ビンタされた事実に、理不尽と言いたげに不機嫌な顔で宥子(ひろこ)を睨みつける。

「起こせって用件をメモにして、おいたんでしょーがっ! というか、あのダンボール箱の量は何? 無職(ニート)がいるのに、散財とか馬鹿か?」

 メモ書きを突き付けて文句を言う宥子(ひろこ)に、

「ああ、悪い悪い。すっかり、忘れてたわ。ダンボール箱については、久世(くせ)師匠の援助だから気にしなくて良いよ」

とダンボールの出どころを喋ると、最後の一言に宥子(ひろこ)は顔を顰めた。

容子(まさこ)、話しちゃったの?」

「口止めされなかったし。師匠も向こうの世界(サイエス)が気になるみたい。最低限の生活費を援助して貰う代わりに、私も宥子(ひろこ)に同行して向こうの世界(サイエス)に行くことにしたから。というわけで、私を契約(テイム)して」

 私単体では、サイエスに渡れなかった。

 宥子(ひろこ)のスキルに契約(テイム)がある。

 私が宥子(ひろこ)契約(テイム)されれば、サイエスに渡れる可能性があるのだ。

 久世(くせ)の狙いは、多分そこだと思う。

 異世界の珍しいものを手に入れれば、高く買うと言うのだ。

 無職一名と売れない小説家の二人で生活するには、最低限稼がなくてはならない。

 裏稼業だって、毎回仕事が回されるわけではないのだ。

 安定した収入を確保できるように動くのは、当然のことだろう。

「何が、というわけなの? 日中の仕事はどうする気? 容子(まさこ)を下僕にしても、私にメリットが無いんだけど。嫌だよ。お前を養うなんて無理! 絶対無理ぃ!!」

 必死に無理無理と連呼する宥子(ひろこ)に、

「勿論、日中の仕事は辞めたよ。最低限の保証もされたからね。私と宥子(ひろこ)は、久世(くせ)師匠のところで雇われる形になったから。それに、私も向こうの世界に興味あるんだ。進んで宥子(ひろこ)の下僕になりたいわけじゃないけど、契約(テイム)することで世界を渡れると思ったんだよ」

と真面目に返す。

「アンタ、異世界に来るの? 本気(マジ)で? ドMなの?」

と言われ、無言でアイアンクローしてやった。

「物は試しだし、やってダメなら諦めるよ。確認したい事もあるし!!」

「……分かった。人にする魔法じゃないから、失敗しても文句言わないでね」

「分かってる」

 食事を終えた宥子(ひろこ)は、私の前に立ち魔法を展開させた。

 結論から言うと、契約(テイム)は成功した。

 それも、すんなりと出来てしまった。

「うそ……出来た」

 宥子(ひろこ)は出来ないと思っていたようだが、彼女のステータスボードのスキル欄に契約(テイム)∞と表示されていたのでイケると思ったのだ。

「じゃあ、私のスキルってどうなってるか知りたい。ステータス画面見せて!!」

「そっちが目的だったのか!?」

「ステータスオープンと唱えれば、自分のステータスを確認出来るよ」

「そこは、ゲーム通りなんだね。ステータスオープン」


---------STATUS---------

名前:未設定(琴陵 容子(ことおか まさこ)

種族:人族

職業:社畜

レベル:1

年齢:25歳

体力:8

魔力:11

筋力:5

防御:6

知能:20

速度:1

運 :10

■装備:綿のパジャマ

■スキル:縁切り・料理4

■ギフト:なし

■称 号:ヒロコの従魔

■加護:須佐之男命・櫛稲田姫命

■ボーナスポイント:0pt

-------------------------------


「職業が、社畜って酷い! てか、スキルが縁切りと料理かぁ。ポイントが入ったら、回復系と鍛冶師のスキル取得したい。職業の変更できるかな?」

 生産系のスキルが欲しい。

 職業は回復職か、プリーストが良いな。

「ナニコレ……」

 私のステータスを見て、宥子(ひろこ)が絶望した顔をしている。

 何で最初からスキルを持っているんだよ、と言いたげな顔だ。

 私は、そんな彼女を気にも留めず異世界へ行く準備を始めた。

「ちょっと服着替えてくる! レッツ異世界ライフ♪」

 黒のパンク系で纏めた恰好に着替え、腰にはドラゴンフライとエアガンM85を装備している。

 宥子(ひろこ)が放心している間に、私はは原付バイクの燃料残量を確認しに外に出た。

 ガソリンは、ほぼ満タンに入っている。

 給油の必要はなさそうだ。

容子(まさこ)準備はできた? 時計の針を合わせるよ」

 宥子(ひろこ)に声を掛け、私はペンダント型の時計の針を合わせている。

 呆然としている宥子(ひろこ)を急かし、私は原付バイクと事前に用意していたキャリーケースをアイテムボックスに収納してサイエスへ旅立った。

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