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琴陵姉妹の異世界日記  作者: もっけさん
容子の追憶と暗躍
139/152

134.姉、異世界から帰還しました

「ただいまー」

 宥子(ひろこ)の呑気な声に、私は心配が怒りへとメーターが振り切れて姉を出迎えた。

「宥子ひろこ!! 三日もどこに行っていたのさ! 外泊するなら、連絡入れなさいよね! 後一時間遅かったら捜索願出してたんだからね!!!」

 久世(くせ)の助言の通りにして良かった。

 捜索願を出していたら、赤っ恥を書いていたところだろう。

 絶対に話さんとばかりに、ガッシリと腰を掴んで抱きしめた。

「落ち着け妹よ。取り敢えず、上がらせてくれ。茶入れて話そうや」

 宥子(ひろこ)が腰が痛いと悲鳴を上げてるが、それ以上にハートブレイクした私の心の傷を癒して!

 そして、私の心配と時間を返せ!

「落ち着け妹よ。取り敢えず、上がらせてくれ。茶入れて話そうや」

 ポンポンと背中を叩かれ、強引に引っぺがされた。

 宥子(ひろこ)に促され、リビングへ移動した私に宥子(ひろこ)はお茶とお茶請けを用意して、私が効きたかった本題に入った。

「姉ちゃん、異世界の自称神様に誤召喚されちゃったのよ。スキルを貰って、サイエスって世界に拉致されて帰還したってわけさ」

 説明が面倒臭いのか、肝心な部分を思いっきり端折って説明している。

「……心療内科じゃなく精神科予約しようか?」

と嫌味を言ったらガックシと肩を落としている。

 冗談なのに。

 宥子(ひろこ)は溜息を大きく吐くと、自分のステータスを見せてきた。

「見える?」

「見える。何かゲームっぽいね。後、何ちゃっかりペットの蛇達を契約テイムしてんの!! つか、召喚先で放置されてよく戻ってこれたね。どうやって戻ってきたの?」

「地球にある私物を使えるようにしてくれって頼んだ。この家も私の私物の一つだから、鍵を使えば戻れると思って」

 神様相手に頓智(とんち)で乗り切るとか、大物なのか、馬鹿なのか。

 久世(くせ)の言う通り、ガッツリ厄介事に巻き込まれているようだ。

「障害が全くないわけじゃないんだよ。私を呼び出した神様に向こうの世界サイエスで面白いことを起こすって契約したからね」

「それ、大丈夫なの? 私が、縁切りしようか?」

「容子まさこの力でも無理だよ。一応、相手は神様らしいし。そうでもしないと、私ここに戻ってこれなかったし、召喚されなかったら死んでたから、結果オーライだね。玄関は向こうの世界サイエスと繋がっているけど、窓を見る限り地球と繋がっているから、裏口や窓からなら地球で活動できると思う」

 宥子(ひろこ)が勝手口のドアに手を掛けて開けると、見慣れた近所の家がある。

 宥子(ひろこ)の口ぶりからすると、彼女自身は玄関が異世界への入り口になっているのだろう。

「これからどうするの?」

 私も今後は、念を入れて裏口から出入りした方が良さそうだ。

「取り敢えず、会社に連絡して無断欠勤の謝罪する。クビが確定するから、暫くニートになってサイエスで活動しつつ、時差を確認するわ。生活拠点は、基本的に自宅だけどね。まずは、町を探しからかな。向こうの世界サイエスで扱っている物が、こっちの世界で売れる可能性もあるし。その辺は、追々考えよう。最悪、久世(くせ)師匠に仕事を回して貰えば食べるものに困らないでしょう。何より自称神様が、本気マジで許せん。絶対ぶっ殺す」

 生活基盤と将来をを根本的に変更せざるえなくなったのを憤慨してなのか、宥子(ひろこ)はご立腹の様だ。

「物騒だね。久世(くせ)師匠にこの事報告する?」

 既に、久世(くせ)宥子(ひろこ)の行方不明について知っているが、何故そうなったのかまでは今の話を聞いて理解した。

 ちゃんと最後まで報告しないと、彼女は拗ねるだろう。

「報告しないと怒るだろうね。その辺は、任せる」

「OK。自称神様も馬鹿だよね。よりにもよって宥子ひろこを召喚するなんて。消滅のカウントダウンが聞こえてくるよ」

「本当にね。まずは、地道にレベル上げと金策かな」

 宥子(ひろこ)は、徐に台所に行き万能包丁を片手に玄関の扉を開けた。

 玄関の向こうは、見たことのない世界が広がっている。

 180度見渡す限り草しか見えない。

 これは、鬱蒼と生い茂る草原だ。

「じゃあ、行ってくるわ。夜になったら戻るから夕飯の支度宜しく」

「あ、うん……いってらっしゃい」

 玄関が草原になっているのに気を取られた私を放置し、宥子(ひろこ)は万能包丁を片手に向こうの世界(サイエス)へ足を踏み出した。

 パタンとしまったドアをもう一度開けると、変わらない近所のアパートが目に入ってくる。

 ほんの少し、あり得ない可能性を信じていた。

 その期待は、あっさりと裏切られた。

「……ファンタジー要素盛り込みすぎでしょう」

 ハァと溜息を吐きながら、夕飯の支度をしようと戸棚を開けたら包丁だけでなく、ミックスナッツの袋とフ●キラーゴキジェット-85℃が無くなっている。

「フ●キラーゴキジェット-85℃と私のおやつ持っていきやがった!! 絶許だ」

 姉よ、お前は許さん。

 食い物の怨みは恐ろしいって事を身を持って知るが良い!

 私は、夕飯は嫌がらせ飯を食わせると心に誓ったのであった。

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