121.パーティーの後は
王宮のパーティが終わり、サイエスの自宅へ戻ったら緊張が緩んで疲れがどっと出た。
談話室のソファーに四人でぐったり座っている。
他のメンバーは、私室に引き籠り思い思いのことをしているようだ。
パーティーに置いて行った紅唐白が、私の膝の上を陣取り顔をお腹にこすり付けている。
可愛いけど、重いよ。
「パンジーお茶ちょーだい」
「あ、私も欲しいです」
スッと出された緑茶をすすり、ホッと一息吐いた。
パンジーの入れるお茶が、一番美味しいわ。
流石、メイドの中のメイド。
これから拠点も増えていくだろうし、他国にも行きたい。
今後、メイドの育成も必要になるだろう。
アンナと相談して、メイド要員を募集してみるのも良いかもしれない。
「あぁーーー疲れたわぁ。お茶が美味い! 姉ちゃん、絶対王家の奴ら神社が出来たらお忍びで来るんじゃね!?」
「私も思う」
分かってる。
エルザ陛下を見て思った。
あれは、忠臣を振り回すタイプの人間だ。
自ら面白い事、新しい事を率先してするタイプの奴だ。
自分の目で確かめるとか何とか言って、自国に損益がないか確認しにくるくらいはするだろう。
「絶対に来る。祭事を妨害されたら嫌だけど…お布施はがっぽり欲しい」
「それな! てか、お守りの新作でも作ったか?」
「新作っていうか、お守りの種類を増やした。流石に、お札は無理。本職じゃないし!! 今は、神社が寄り合い所みないになっているな。神社を建設してから、休憩所でのんびりしてお金を落として行って欲しいとは思っているよ! 桜の木を百本ほど移植したから、春には桜が満開になって綺麗に咲き誇る。良い観光スポットになんで」
こいつ、また会社の金を着服したんか!!
思わず尋問の声が低くなる。
「その桜の木ってどうやって用意した? まさか、会社の金に手を着けてないだろうな!?」
容子の肩を鷲掴みにし、高速で前後に揺さぶった。
「ちょ、ちょっと……揺らすん止めてー!! 病気になって手に負えない桜の木を無料で譲って貰ったの! サクラちゃんに状態異常解除と完全治癒を重ね掛けして持ち直したんだよ。元手はタダって分かった? 植える事を相談しなかったのは悪かったとは思ってるけど、そこまで怒らなくても良いじゃん」
と、逆ギレ混じりに怒鳴られた。
「また、会社の金を着服したんかと思ったんだよ。普段の行いが悪いから疑われるんだ。反省しろ」
そう云い捨てて、ぺいっと容子を捨てた。
「酷い! でも、桜を植えて景観美を整えて観光名所にすれば人が集まる。一石二鳥でしょう?」
「ま、良いけどな。話は反れるが、アーラマンユ教の対策をしないとダメだな。褒賞の件で、確実に敵意持たれたと思う」
「スラム街の方で、マーライオンから嫌がらせがあると情報が上がってきたし。王家は、マーライオン側に釘を刺さないのか?」
「宗教関の口出しは、しない姿勢だろうね。つか、アーラマンユ教な」
宗教と王家が癒着してたら面倒臭いことが更に面倒になる。
どうにもエルザ陛下は、アーラマンユ教を疎んでいる感じがした。
感だが、お布施やら何やらで相当お金を取られているんじゃないだろうか。
国家予算の中にアーラマンユ教用の費用が割かれている可能性も無くはない。
もし、可能性の話で国家予算にアーラマンユ教会への寄付金が割り当てられていたら、予算を割り当てる必要がない新たな第三勢力が現れれば、教会への寄付金の減額は現実的にあり得る話だ。
アーラマンユ教会一つに権力を集中させたくないのが、エルザ陛下の本音だろうな。
「Crema出資先の神社は、マーライオンと全面対立の関係になるな。上手く立ち回れそうな人物が、何人かスラムにいたから宮司と巫女に据えるわ。嫌がらせ対策は、姉ちゃんが何とかして。マーライオンの相手するの、正直メンドイ」
簡易神社が本格的なお社になるなら、アーラマンユ教の相手を引き受けても良い。
良い嫌がらせが出来そうだ。
「了解。後、何度も言っているがマーライオンじゃなくてアーラマンユだから。此処で徹底的に潰すか…」
これを足がかりにして、アーラマンユ教を徹底的に潰すのもありだ。
アーラマンユ教会は、実質金を持っている奴しか相手にしてない。
この国の民八割が貧困層だ。
逆にそこを突いて、良心的なお値段で治癒やポーションを提供すれば鞍替えする人が出てくるだろう。
場合によっては、慈善活動で無償奉仕もありだ。
邪神の信仰心を根こそぎ奪って、力をガッツリと削ってやる。
鑑定できる道具があれば、アーラマンユ教と同じ土台に立てるのになぁ。