106.ヘビ様は俗物的なのがお好き?
覚悟はしていたが、上級スクロールを手に入れるだけで、ここまで苦労するとは思わなかった!
王都に戻る前に、一度自宅に戻ってゴロゴロしたい。
パンジーがいるから大丈夫だとは思うが、一度ヘビ様の社に顔を出さないと。
暫く放置に近い状態だったからなぁ。
自宅に戻ると、耳がキーンッと鳴り頭がガンガン痛くなった。
『毎日、お供え物を献上する約束を反故するとはどういうことだ!! 献上する時間もまちまちだ。貴様、我を蔑ろにする気か?』
ヘビ様、ご立腹のご様子である。
声が頭に直接響くから、凄く気持ちが悪いくて頭が痛いんですけど!!
「すみません。忘れてたわけじゃないんです! サイエスとこっちの時間軸が違うので、どうしてもお供えが出来ない時も出てしまったんです」
苦しいが言い訳をしながら、這う這うの体でソファーに座る。
『むっ……しかし、約束を破ったことには変わらんぞ』
天照大御神がバックに付いているから、強く出れないんだと思うけど、文句タラタラ言ってくる。
今回は、私の配慮が足りなかった落ち度だ。
文句も甘んじて受けよう。
私は、素直にその場で土下座して謝罪した。
「本当に申し訳ございませんでした! 私のお給料の範囲で供物を用意するので、今回はそれに免じて許して下さいぃ」
私の半泣きになりながら言ったら、頭痛が無くなった。
『社の掃除もだぞ』
「心得てます」
箒と塵取り、雑巾と水を張ったバケツを持って屋上へ行き、隅々まで掃除した。
この糞寒い青空の下、ヘビ様監修のもと延々と掃除。
風邪引かないと良いな……。
掃除に取り掛かって三時間弱。
やっと、ヘビ様の満足いく掃除が出来たようだ。
『次は供物じゃ!』
「コンビニにある物なら直ぐに用意できますけど」
『それじゃあ、意味がないじゃろう。ぱそこんでお取り寄せランキングの通販があるのは知っているぞ。それが良い』
「……」
俗物化してないか、このヘビ様。
呆れて言葉を失ってしまった。
確かに五階に設置されている神棚にお供えしているのは、スーパーで購入したお菓子やお酒を備えている。
通販をどこで知ったんだ?
まさか、ずっと見ていたとか?
私生活を覗き見されたような気分で、内心複雑だ。
「時間かかりますけど良いですか?」
『まあ、仕方なかろう。ぱそこんでラティエンの酒造ランキングを見せるのじゃ』
ラティエン?
そんなサイトあったっけ?
「ラティエンって何ですか?」
『漢字で楽天という名前のサイトかのぅ』
あー……なるほど。
楽天ですね。
ヘビ様は、中国語に嵌っているんだろうか?
「ちょーっと待ってて下さいね」
ノートパソコンをリビングのテレビに繋いで、ラティエンのサイトを見せる。
酒造ランキングを検索し表示させると、ヘビ様のテンションが爆上がりしている。
『どれも旨そうじゃのう。一位~十位までは欲しい。プレミアムな缶詰も良いが、違うものも食べてみたい』
評価が高いもの順に並べ替えし、上位十位までを無言でカートに入れる。
つまみで検索をかけて見せたら、さらにテンションが上がり奇声を上げている。
神使が、これで良いのか?
凄く残念な感じなんだが。
「どれにします?」
『上から下まで全部じゃ』
「いや、現実的に無理ですから! 私の薄給を全部供え物を買わせるの止めて下さい。予算三万円内で収めて下さいよ」
『会社、順調に儲かっておるじゃろう。ケチケチするでないわ』
ケチとかそういう問題じゃないし!
確かに儲かっているけど、その分出費も多いし、人件費も馬鹿にならないんだよ。
私や容子に残業代付けたら、月に数百万単位になる。
でも、そんな事したらお金の有難みを忘れてしまいそうだから、役職手当だけにしているのに。
まあ、容子の残業代払うくらいなら他に回したいのが本音だけどさ。
「ケチで結構。会社が儲かっても、それは会社のお金です。私のお金じゃありません。大体、社長が会社を私物化したらアウトでしょう! 三万円もあれば、十分贅沢できます。私、薄給なんで本気勘弁して下さい」
薄給を主張したら、ヘビ様に思いっきり呆れられた。
『おぬし、他の者には大金を払っているくせに自分は安月給とはな。……可哀そうだから、今回は無理は言わんでおこう。つまみは、これとそれとあれが欲しい。後、そのセットもな』
言われるままにカートに入れたら、三万強になりました。
予算オーバーしているけど、払えるギリギリのところを狙ってくるところが憎い。
注文した荷物が届くまでの間、ヘビ様の相手をしながら基礎化粧品セットと各上級ポーションの量産をして時間を潰した。
こんな時くらいダラダラ過ごしても良いと思うんだが、ヘビ様が覗き見していると思うと出来ないんだよね。
ある意味、最強の監視カメラが付いた感じがする。
届く期間もまちまちで、結局三週間ほど日本に滞在した。
その間、アンナに見つかって拡張空間ホーム経由で書類仕事を押し付けられる。
私がヒイヒイ言いながら馬車馬の如く働いている間、サイエスでは容子達がスラム街の子供たちを根こそぎスカウトしていた。