105.上級ポーション
マーリンこと糞ババアは、MPとHPの上級ポーションのスクロールをくれた。
しかし、その後が頂けなかった。
練習していけと言われて、上級ポーションの量産をさせられた。
上級ポーションとなると、MPも腕力も思っていた以上に必要になってくるのだ!
ゴリゴリと薬草をすり下ろしながら始終魔力を注がなくてはならない。
MPポーションでドーピングしながら、せっせと作りまくる。
経験値倍化が無かったら、多分何年も掛かっていたと思う。
缶詰にされて三日、やっと上級ポーション(普)が出来るようになった。
それまで作った上級ポーション(劣)は懐に入るものだと思っていたが、(劣)でも上級ポーションには変わりないので回収されることに。
がっつり一週間タダ働きさせられて、納得できないと喚いたら打ち身の軟膏のスクロールを貰った。
ありがたく頂いたけど、不満が解消されたわけではない。
「……コキ使い過ぎだと思うんですけどぉ」
ポーション(劣)のネコババする宛てが外れた。
「若いんだから、キリキリ働きな。短期間でこれだけの物を作れるんだ。大成するのも早いが、やっかみや嫉妬で要らぬトラブルが舞い込む。注意を怠るんじゃなよ」
「それは経験からで?」
つい聞いてしまったら、ハァーっと大きな溜息を吐かれた。
「そうさ。私は、生まれつき魔力が多くてね。魔法はからきしでも、魔力を込めるくらいは出来る。薬師になったのも、魔力を暴発させないようにするためだったんだけどねぇ。そしたら、私と相性が良かったのか、今のあんたみたいにドンドン腕が磨かれて王宮薬師にまでなっちまったんだよ。王宮の派閥争いとかに巻き込まれて、今じゃあこのザマさ」
思っていた以上に重かった!!
やっぱり左遷されられたんだね。
「良いかい。(極)は作っても、絶対に市場に出しちゃいけないよ。権力者に目を付けられて、良いように使われるだけだ」
成程ね。
確かにマーリンの言う事は一理ある。
「分かりました。身内だけに使います」
「そうしな」
「そう言えば、創世神アーラマンユって知ってます?」
ふと、思い出したように聞くとまた大きな溜息を吐かれた。
「この世界の唯一の創造神だよ。魔族から人を守り、唯一勇者を遣わしてくれる女神様だ。教会に行けば、説法が聞けるよ」
魔族を敵視している女神様か。
私が出会った自称神は、女神様だったのか。
発光して光の球にしか見えなかった。
勇者召喚も、邪神が率先して絡んでいる。
召喚された人の年齢が十代なら、邪神の口車に乗せられ有頂天になって契約に応じそうだ。
私を転移させた時は素が出ていたように思うが、人によって顔を使い分けているに違いない。
邪神は、享楽を求めるタイプの輩だ。
「気が向いたら行ってみます」
まあ、行くことはないと思うけどな!
それより、魔族が気になる。
魔族と手を組んで邪神の地位を奪いたい。
魔族が虐げられる理由も気になるし、その辺りはワウルに調べさせよう。
「じゃあ、私はこれで」
「何かあったら、ここに来な。匿うぐらいはしてやるよ」
ニヤッと笑うマーリンに、私は肩を竦めた。
「何か起こる前提で話さないで下さいよ。本当になったら恨みますからね」
「あんたみたいなのは、厄介ごとが舞い込んでくるんだよ」
「それも経験上の話ですか?」
私の問いには答えず、カカカッと笑った後、手を振って私を追い出した。
マーリンなりの気遣いなんだろう。
「結構、時間食ったし早く戻らないなー」
炊き出しはどうなっているだろうと思いを馳せつつ、はじまりの町を後にした。
一方、容子が行った炊き出しは大盛況で、色んなところに目を付けられる切っ掛けになってた。