101.奉仕活動を提案された
容子の呼び出しに、戦々恐々としながらサイエスに戻っが、トラブルではなかった事に安堵した。
私事の相談をしたかっただけみたいだ。
私は、ドラえもんではないだがな!
この怒りどうしてくれようかと思いながら、アンナにサイエスへ行っても問題ないか確認したら、大丈夫と二つ返事を貰った。
仕事を詰めて一段落付けてサイエスに渡ると、艶々した顔の容子に出迎えられた。
「休暇ありがとうね。こうして見ると、宥子の顔を見るのは久しぶりに感じるわぁ!」
うーんと伸びをしながら、容子は良い笑顔でハッスルしている。
サイエスの時間の流れは、数日でしかない。
それを言うなら、私の方が久しぶりと口にするべきではないだろうか?
「王都周辺でレベル上げしていたけど、最近は上がりにくくなっているんだよねぇ。一応、レベル上げる前と上げた後の一覧表だよ」
容子は、勝手に作成したレベリング一覧表を渡してきた。
イスパハン・ボブ・ジョンのレベルが、他の者達よりも大幅に高くなっている。
容子、何気におっさん好きーなのかな?
ジョンは既婚者だから、イスパハンかボブになるが……ボブはなぁ。
腰抜けだから容子が、尻を叩いて動かすしかないがお勧めしたくない結婚相手だ。
「目指せレベル300! 調理のレパートリーも欲しいし、女性陣はパンジー慣習の元で仕込んで貰おうかな♪」
などと、勝手に目標を立てている。
女性陣に料理を仕込めば、当番制にも出来るし、一定の味も補償されるから悪くはない話だ。
「女性陣の皆が、OKを出したら良いよ」
「そうと決まれば、スラムで炊き出しして良い!?」
何故そうなる!
話が、行き成り変な方向に飛んでいるぞ。
ギロリッと容子を睨みつける。
「何、厄介事に首を突っ込もうとしているのかなぁ?」
容子の脳天にチョップを落とす。
容子は、痛がりながらも頭を押さえ文句を言ってきた。
「ちょ、人の話を聞けクソババア!!」
「誰がクソババアだ! お前の話聞いても、1円の得にもならん!」
「何故に最初から全否定!?」
賛同したら面倒事しか起きないじゃん。
そうなると全否定一択だろう。
ギャーギャーと喧嘩したら、様子を見に来ていたアンナにスリッパで叩かれた。
スパーンッと良い音がした。
私の頭は、除夜の鐘じゃない!
坊さんの木魚と一緒にしないで欲しい。
「お二人共落ち着いてください。先ずは宥子様、頭ごなしに全否定されては容子様が暴走されて迷惑の倍率が上がります!」
確かに、アンナの言葉には一理ある。
容子は、アンナに向かって抗議しているが鼻で笑われあしらわれている。
容子テラ馬鹿ス、ざまぁ!
「次に容子様、どうして考えが炊き出しに至ったんですか!?」
アンナの背中に修羅が見える。
回答次第では、芋虫の刑だな。
新武器の鞭の練習台にされるが良い。
「こっち料理って正直不味いやん。私の作るダラ飯でも美味しいと感じる異常さ!! 絶対、料理のレシピは売れる。でも、見た事も食べた事もない料理に対して、お金を出してまで食べたいとは思わない。尻込みすると思うから、炊き出しという名目で日本の家庭料理を知って貰おうかなって。商業ギルドから、レシピを売ってくれとお声が掛かるかもしれないし」
確かに、サイエスの料理は不味い。
旨味成分もないし、味付けは塩と至ってシンプル。
素材の味云々の前に、素材を台無しにする味付けだ。
その点、私達の世界は多種多様な調味料が存在している。
この世界にも私が知らない調味料もあると思うが、味は今一つだ。
「それに、彼女らの料理修行にもなるし、材料だって自分らで賄えるじゃん」
と力説している容子の必死さが、逆に笑いを誘う。
前にアンナから、レシピ売れ売れの打診があった。
現在、無言になったアンナを見ると、頭の中で損得勘定を計算しているんだと思う。
「炊き出しは構わんが、サイエスに根付く宗教関連から文句言われない様に対策だけはしっかり取っておいてね」
面倒事は、ごめんである。
炊き出し出来るなら寄付しろとか言いそう。
考えただけで鬱だ。
「バザー感覚でクッキー十枚セット銅貨3枚でどう? 炊き出しと並行して菓子売ったら儲かると思う」
「まぁ、悪くありませんね。料理の素材は、男性陣に集めて貰いましょう。調理は、言い出しっぺの容子様が筆頭に頑張って下さいね!」
アンナの許可が下りたよ!!
ちゃっかり『言い出しっぺが逃げるんじゃねーぞ』と釘を刺している。
流石アンナさん、痺れる。憧れる。惚れてまうやろう。
容子は、どこでどの料理を炊き出しするかアンナと話を詰めている。
こうなったら、企画が決まるまで終わらないだろう。
「じゃあ、私は始まりの町へ行って基礎化粧品のレシピの特許取ってくる。暫く留守にするから、その間はアンナが仕切って。容子は、アンナの言うことに従うように」
それだけ言い残して、私は王都を旅立った……はずなのだが、王都から出る途中でチームバルドに出くわし絡まれたのだった。