夏休みのパパたちは三角関係/2
それを気にした様子もなく、貴増参のピンク色をした瞳は優しさが満ちあふれたように微笑む。
「僕たちの家族で一緒に行きませんか?」
「三家族一緒ってことか?」
独健からの問いかけに、貴増参は「えぇ」とうなずき、
「そうすれば、明引呼のガラではないは、他の親たちが子供を見るでの解決しちゃいます。独健の瞬間移動の件も、僕は賛成派なので、僕がすれば子供たちも満足です。それに、大人でも楽しめちゃう乗り物もたくさんあるそうです。大人もたまには息抜きしてはどうでしょう?」
「策略的に話もっていきやがって。初めっから家族旅行したかったんだろ?」
プールサイドのフェンスに、明引呼のガタイのいい体躯が黄昏気味に寄り掛かった。濃い青を見せる夏空を見上げ、独健はさわやかに微笑む。
「他の家族と一緒に旅行か。うんうん、新しい風が吹きそうでいいな」
「それでは決定です。家族旅行を一緒に楽しみ、僕たちの親睦をより一層深めちゃいましょう!」
貴増参が話をまとめる頃には、水慣れしていなかった我が子も、他の子たちと一緒にプールで夢中になって遊んでいた。
*
海底にあるテーマパーク。息を吸う必要がない魂の世界。重力が十五分の一は水力による圧迫死がない。
本当の海のように青い空間で、三家族は様々なアトラクションを楽しみ、シーフードを中心としたランチを取っている。海の生き物がスタッフの多くを占めるレストランで、貴増参は真正面に座っている人に話しかけた。
「独健は最近、何か新しいことを始めましたか?」
「あぁ、いろいろやってる」
子供が切りづらそうにしていたものを切りながら独健は答えた。
「例えば、どんなんでしょう?」
「サッカーだな。あんなスポーツは今までなかっただろう? 子供のために一緒に公園に行って遊んでたんだが、俺がはまって、今度みんなで大人のクラブを作ろうって話が出てるんだ」
子供にフォークを戻して、独健は小さな頭を優しくなでた。そこへ、貴増参のボケが飛んでくる。
「さすが、独健です。魅惑的です」
「微妙にあってる気もするんだが、それは活動的」
貴増参は気まずそうに咳払いをし、
「んんっ! そうです、それです」
独健はピザをかじって、カラフルな皿があちこちで花咲いている様を眺めた。
「いろんな暮らしが変わった。今まで料理なんて誰もしなかっただろう?」
「えぇ。僕たちは食べなくても生きていけますからね。というか、食べないで働いてましたから、やはりブラックです」
死なないからこそ、過酷な労働条件だった。独健の腕にしてあるミサンガが海の青を吸って、涼し気に揺れる。
「陛下がグルメだから、食べ物や作り方にもみんな興味が出てきて、俺も料理してみたんだ」
「どうなりましたか?」
「なかなか面白いんだ。しかも、自分でやった分が成果として出るし、お腹も満たされるしいいことづくめだ」
父として、家族の笑顔が何よりも幸せを連れてきてくれて、独健の鼻声は楽し気に料理の上に降り注いた。貴増参は膝の上に乗せていた子供の口元を拭いて、ニッコリ微笑む。
「奥さんも子供も喜んでくれますからね」
「そうなんだ。この間なんて、チャーハンってやつを作ったけど、なかなか好評だった」
食べている途中の子供がスプーンを持って、嬉しそうに大きく腕を上げた。
「チャーハン好き!」
「具材を変えると、いろいろなものができるって話は僕も聞きました。僕も少々やってみましょうか?」
あっという間の八人の子持ちになった貴増参だったが、彼は家庭のために何ができるのか色々と悩んでいたところだった。
パパ友は力強い存在で、別のテーブルに座っていた子供がそばにきて、膝の上に乗りたがるのを、独健は抱えながら、
「最初から覚えるなら、料理教室とかもあるらしいぞ。月主先生が奥さんの付き添いでついて行って、できるようなったってこの間話してた」
幸せそうで何よりの話だったのに、貴増参はこう言った。
「そうですか。なかなかの『恐妻家』です」
「それを言うなら、『愛妻家』!」
いつもボケ倒してくる古くからの親友に、独健はピシャリと突っ込んだ。




