表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最後の恋は神さまとでしたR  作者: 明智 颯茄
50/244

気づいた時にはそばにいた/5

 コウの話はさらに、物質界から神世へと引き上げられる。


「五歳になったその日から、小学校に入学だ。年度なんてものは存在しない」

「じゃあ、毎日が入学式で、新しいお友達が入ってくるってことだね?」


 五歳で年が止まるのなら、そこからそれぞれスタートで、神さまの世界は対応できるだけの人材と教師の数が揃っていた。


「そうだ」と、コウはうなずいて、「クラス分けは、その子供が他の生徒の中に入って、全員が成長すると先生が判断したクラスへ入ることになる」


「このクラスが人数が少ないからここに、じゃないんだね?」

「そうだ。だから、兄弟同士や甥と叔父で一緒っていうのもよくある」


 親はいつまでも若さいっぱい。とにかく子供が生まれれば、十ヶ月で五歳児になる。血や遺伝子のつながりというものはない。しかし、心のつながりというものが重要視され、それが一番大切なことなのだ。


 神さまはさすがによくそこを心得ていた。澄藍は上半身を左右にねじりながら、自然と笑みをこぼす。


「個性がよく考慮された、素晴らしい学校制度だね」


 入学が一人一人違うのだから、卒業も一人一人違うということで、澄藍は話を続ける。


「それで、十七歳になったら大人ってこと?」

「そうだ。十七歳でちょうど高校卒業になる」


 高校では卒業式が毎日あることになる。しかし、小学生のように人数がいない。邪神界の影響で子供が産まれなかったため、高校生は今のところ数百人しかいないのだった。


「大学とかはないの?」

「あるが、行っても行かなくても関係ない。勉強したいやつが行けばいいし、仕事をしながら学びたいやつは職場で学べばいい。地上みたいに、キャリアなんてものはない。似合った努力したやつが人々に評価されるのが当たり前だろう? 学歴だけでどうこうなるほど、神さまの世界は甘くないぞ」


 人間界のように好きな仕事につけないとか、やりたりことが見つからない。なんてことは起きないのだと、澄藍は以前から聞き及んでいた。


「十七歳になったら結婚できる?」

「そうだ」

「十七歳になったらお酒が飲める?」


 話の流れで当然のことのように聞いたが、コウは彼女の頭をぽかんと殴った。


「お前バカだな。人間がお酒を飲めない理由は、肉体の成長に影響が出るからだろう? 神さまは肉体を持っていないんだから、お酒に関しては特別に規制がない」

「なるほど……」


 こんなに神さまの話を聞いていても、まだまだ違いがあるのだと、澄藍は納得しながら、手のひらをゆらゆらと揺らし出した。


「それでも子供は飲まないけどな。おいしく感じないらしい」

「恋って小さい時からするもの?」


 大人の神さまでさえ、すぐに運命の人が見つかるような世界だ。恋に年齢は関係ない。


「そうだ。ろくがいただろう? 守護が解散したあと、すぐに運命の出会いをしたぞ」

「そうか。じゃあ、十七歳になったら結婚するってことかな?」

「おそらくそうだ」

「ラブラブだね〜」


 永遠の別れがこないというのは、子供の頃に出会おうがいつかは、魂を交換して結婚の儀式をする。そして、永遠の時を二人で助け合いながら生きてゆくのだ。


 板床で体が痛くならないように敷いていたブランケットを、澄藍は慣れた手つきで畳み、柔軟体操は終了した。


「それからな、以前に生まれた神さまでも子供の頃の体験がなくて、不具合が出ていた神がいたからな、記憶を親が預かって、五歳からやり直すようになったやつもいる」

「その神さまにはそのやり方が一番だったってことだね?」

「そうだ。だから、光命に《《姉》》がいただろう?」

「あぁ、いたね」


 澄藍はデジタルに切り捨てる、自分の感情を。心の声が聞こえる存在がそばにいるのだから、なおさらだ。


「《《妹》》になった」


 神さまも神さまでやはり大変なのだと、未来の見えない世界で生きている女は思った。


「……人間だったらついていけないね、ちょっと。でもまあ、みんなが幸せになれると判断して、そういう決まりになったんだから、受け入れるしかないのか。どういう心境になるんだろう? お姉さんが妹になるなんて……。何かの映画みたいだ」


 小さくなっただけでなく、記憶をなくしている。そうなると、話す内容にも気をつけないといけないということだ。やはり神さまのレベルでないとできない出来事なのだと、澄藍は思いながら部屋をあとにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ