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最後の恋は神さまとでしたR  作者: 明智 颯茄
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永遠は真実の愛/4

 ここへとたどり着くまでの、私も含めてみんなの道のりは長かったけれど、大切なのは真実の愛だけ。受け入れてしまえば、何てことはなく、みんなの今までの人生はここへと続くためだったのだ。


 死んでも続く結婚、これが永遠の愛だ――


 それでもいつか終わりがくるって?

 ううん、来ない。だって、神さまの住んでいる世界は永遠だから、愛も永遠。神さまの世界では別れはこない。それが常識。だから、出会ってしまえば、本当に永遠で真実の愛。私は死んだら、みんなのところに戻るだけ――。


 イケメン神の魔法で、メルヘン世界へと飛び立っていた妻の耳に、夫たちの声が次々に入り込んできた。


「僕が今日は彼女の隣です〜」

「ボク、まだ一回しか寝てないんだけど」

「俺は端っこでもいいぞ」

「なら、てめえは一番はじな。オレもそろそろそばにしろや」

「俺っちはどこでもいいっすよ」

「それでは、私は彼女の隣に――」


 教会へ行ってきた夫の言葉は、他の旦那さんたちに素早くさえぎられた。


「お前はいい。毎晩、八回するって約束だから、どのみちそばに寄るだろう」


 我が家のルール、その二。

 私とこの旦那さんは、夜八回するという約束が毎晩、律儀に守られている。


 妻が座っている椅子の背もたれにもたれかかったまま、マダラ模様の声が螺旋階段を突き落としたようにグルグルとまとわりつく。


「お前は?」

「俺はどこでもかまわん」


 地鳴りのような低い声が簡潔に答えた。白いモード服を着ていた夫が、間延びした声で窓際に立っていたゴスパンクの夫に問いかける。


「どうするの〜?」

「お前らの好きにしろ」

「お前さ、そろそろ素直になったほうがいいよ。じゃないと、颯のそばにいつまでたってもいけないからさ」


 マダラ模様の声に忠告され、ゴスパンクのロングブーツを履いた夫はそれっきり動かなくなり、言葉も発しなくなった。視線もまったく動かない。


「…………」


 誰にもわからない夫の心のうち。他の旦那たちは、マダラ模様の声の持ち主に視線を集中させた。昔からの親友ならば、この男の言動を翻訳してくれると思って。


「返事なし、ノーリアクション、考え中。そして、ちょっと後悔中!」


 まるで学校の先生のように、パンパンと手を打ち鳴らして、凛とした澄んだ女性的でありながら、男性の声が仕切り直した。


「この際ですから、彼女に決めていただきましょうか? みなさんよろしいですか〜? どちらの場所になっても文句はなしです」

「じゃあ、颯ちゃん、決めて」


 白い服が視界にまた入ってきた。妄想していた妻は記憶が飛んでいて話がよくわからず、思いっきり聞き返した。


「はぁ? 何を?」


 後ろから、ドアをノックするようにトントンと頭を軽く叩かれて、マダラ模様の声が耳元で響く。


「お前のそばで俺たち寝るから、それぞれの場所でしょ?」


 何かと思えばそんなことで、妻はあきれて盛大にため息をついた。


「毎晩毎晩、同じことでもめて。あれでしょ? 空中に浮くベッドも使って寝るんでしょ?」

「そうだ」


 夫全員が声をそろえる。


 神さまルール、その五。

 ――人間の世界より、神さまの世界は文化が発展している。コンピュータを人間に作らせたのは神さまなのだから、当然のこと。


 私が神であったならば、ムチを手に出して、ぴしゃんと床に叩きつけているであろう。と思いながら、颯茄は高飛車に言ってのけた。


「よくお聞きなさい、旦那さまども。結婚した順に左からお並びなさい! っていうか、子供じゃないんだから、明日から自分たちでお決めなさい!」


 妻が仕切ると、夫たちは速やかに部屋から出て行き、自分の布団を妻のベッドの近くに、指示通り並べ始めた。


 今日の夢は、夫たちとの出会いを見ることにするか。いや、旦那さんたちの境遇から見よう。十四年間という長い月日を今夜、紐解こう。

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