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最後の恋は神さまとでしたR  作者: 明智 颯茄
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陛下の執務室/1

 そして、翌日。颯茄が廊下へ出てくると、光命は瞬間移動で現れた。


「謁見の時間は、明日の九時からで取れましたよ」

「ありがとうございます」


 いよいよ、噂にしか聞いたことのない陛下の元へ行くこととなった。颯茄は少し緊張しながらその日は過ごし眠りについた。


    *


 瞬間移動で城の正門前へやってきた二人は、約束している旨を伝えると、中へ通された。謁見を希望している他の人々と一緒に待合室へやってくると、颯茄は思わずため息をもらした。


「うわ〜、聖堂みたいに天井が高くて趣がある」


 アンティーク感のある木で全体的にできた教会のような吹き抜けの部屋で、いくつものベンチが並んでいる。ステンドグラスから入ってくる光は、色とりどりの顔を見せる。


 颯茄は光命と一緒に初めて家の外へ出て、神世を歩いているということに、ちょっぴり緊張しつつも照れ臭いような気持ちで待っていた。


 九時からの謁見の時間まであと五分と迫ったところで、一人の男性が足早に近づいてきた。静かな待合室で、彼はささやき声で言う。


「失礼したします。明智 颯茄さまと光命さまでよろしいでしょうか?」

「はい」

「陛下が執務室へお呼びでございますので、こちらへどうぞ」


 言われるがまま立ち上がったが、颯茄は違和感を覚えた。


(え……? 謁見の間じゃなくて、執務室)


 個人的な呼び出しということだが、それは光命が呼ばれた時と関係するのだろうか。なぜ、みんなと同じ謁見の間ではないのだろうか。


 颯茄はソワソワしながら、ドアの前までやってきた。陛下の部下がドアをノックする。


「陛下、お連れしました」

「入れ」


 威厳ある声が響くと、扉は開けられ、朝の光が目の前に広がり、颯茄は一瞬まぶしくて目を伏せた。そして、


「よう、よくきたな」


 さっきと違って、子供の声が響いてきた。


「あれ? この声って……」


 もうだいぶ前に聞いたっきり、ずっと聞いていなかった声だ。もう一度会えたらと願っていた声だ。颯茄は慣れてきた目で、小さな人を捉えた。


「コウ!?」


 銀の長い髪と赤と青の目を持つ子供。その子が陛下の椅子に座っている。なぜそんなところに――颯茄の頭の中でピカンと電球がついたようにひらめいた。


「あ、そう言うことか!」

「おや、今頃気づいたのですか?」


 光命は中性的な唇に神経質な手の甲を当てて、肩を小刻みに揺らし笑っていた。守護神は知っていたのだ。コウが誰だったのかを。


 颯茄は額に手をやって、トントンと何度も叩いた。


「いや〜、陛下のお名前は、こうさんです。コウがまさかそうだったとは」


 コウはふわふわ途中へ浮いて、横向きの八の字を描き出した。颯茄は今何もかもがわかって、膝に手を置いて肩の力が抜けた。


「ということは、今回の結婚って、十四年も前から決まってたんだ」


 コウは少しイラッとしながら言う。


「そうだ。お前があの時、俺の言うことを聞いて光を呼び出してたら、わざわざこんな遠回りしなくてすんだんだ!」


 光命を執務室へ呼び出さなければならなくなったのは、この人間の女のせいだった。颯茄が守護神として呼び出していれば、恋は自然と進み出して、今のバイセクシャル婚につながるという未来を、陛下は読んでいたのに、人間の女が頑なに拒んだがために、新しい作戦を考えるしかなくなったのだ。


「だから、光さんを謁見の間に呼んだの?」


 悲鳴にも似た颯茄の声に、コウは両腕を組んでふんぞり返りながら注意した。


「呼んだのじゃない。呼んだんですか――だ!」

「そうでした。申し訳ありません」


 光がひとしきり笑い終えると、陛下は光に包まれ、大人の姿に戻った。鋭い赤と青の瞳で、颯茄を見据える。


「ひとつ達成し終えた、そなたに新たな命令だ」

「はい」


 颯茄は真っ直ぐ立って気を引き締めた。

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