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最後の恋は神さまとでしたR  作者: 明智 颯茄
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これ以上は無理!/2

『結婚したいと思ったんだけど、誰も張飛のこと知らなかったみたいだから、まずは家に招待したほうがいいかと思って』

「何で、それが孔明さんの留守中なの?」

『ボクじゃなくて、みんなとコミュニケーションを取るからでしょ?』

「はあ……。罠仕掛けて出かけていって」


 油断も隙もない。倫礼は頭痛いみたいにおでこに手を当てた。


『ところで、倫ちゃん、張飛のことを思い出した』

「思い出したよ」

『じゃあ、結婚するのかな』

「ただ、何だかイメージ違くない?」


 すぐそばで、夫たちと挨拶をしている張飛を倫礼は見つめた。


『どう違ったの?』

「もっとゴツい感じで、誰かと揉めてたって話を聞いたことがあるけど」

『山本勘助でしょ?』

「そうそう、その人だ。それなのに、ずいぶんやんちゃな好青年になってるんだけど……」


 ひげをもじゃもじゃはやしていて、いかにも大食漢みたいにデーンとした体格で、何でも豪快で、細かいことを気にしないタイプだったはずなのだが、今目の目にいるのはすらっとした長身で、ヤンチャで気さくな感じのさわやか好青年だった。ひげはなくイケメン。


 張飛はおまけの倫礼ににっこり微笑みかける。


「結婚したら変わったっす」

「そういうこと」


 結婚という言葉で何でも合点がいく。多少無理な問題であってもだ。倫礼は過去の結婚のエピソードを思い返した。


「見た目が変わったっていう人に初めて会った。年齢とか身長が変わるのは聞いたことがあったけど」

『そういうことだから、張飛のことよろしくね』


 そういうこととはどういうことだ。問い詰めたかったが、


「よろしくねって」


 それっきり、孔明から返事は返ってこなかった。


「ああ、もう圏外――」


 孔明の声の代わりに、ツーツーツーと通話切れの音が耳に聞こえてきた。


「なんて一歩的な電話なんだろう」


 今圏外なったのも、罠だったのではないかと、妻はにらむのだった。倫礼は携帯電話を机の上に投げおいて、突然現れた客に向き直る。


「とにかく、張飛さん、客間でお茶を御馳走しますから」

「ありがたいっす。宇宙船降りてすぐにきたから、休んでないっす」

「宇宙船? どこに住んでるんですか?」

「三つ隣の宇宙にいるっす」

「それじゃ、孔明さんともなかなか会えなかったのでは?」

「そうなんす。久しぶりに会えるかと思ったら、この通り留守だったっす」


 罠を仕掛けられたのは、どうやら張飛も同じのようだ。部屋から出て、客間へ案内すると、独健がお茶の用意をして持ってきた。開いていたドアから子供たちが波のように押し寄せる。


「お兄ちゃん、誰?」

「張飛って言うんす」


 怖いもの知らず、我が子たちは話し続ける。


「パパになるの?」

「そうなると嬉しいっすね」

「子供いる?」

「三人いるっすよ。男の子が二人で女の子が――」


 そこまで順調だった会話は、子供たちの泣き声で崩壊された。


「うわーっ! これ以上は無理だよー!」

「無理!」


 子供たちが倫礼の足元に寄ってきて、足を必死につかんだ。


「僕、一生懸命、新しい兄弟に話しかけたよ」

「やっと仲良くなれたのに」

「これ以上増えるのは無理〜!」

「全然知らない子がくる」

「学校が一緒だから、話も合いやすかったのに」

「これ以上は無理〜〜っ!」


 火がついたみたいに泣き出した我が子。地球のことに囚われっきりで、子供のことはみんなに任せっきり。倫礼は少し反省した。子供たちの頭を優しくなでながら、


「あー、子供たちも一生懸命頑張ってたんだ。みんな仲良くっていう法律をきちんと守ろうと思って、これは孔明さんの失敗だな」



 その頃。宇宙船の中で携帯電話を瞬間移動でポケットに戻した孔明は、窓の外の星々を見ながら、張飛に想いを打ち明けた日を思い返していた。


『俺っちも好きっすよ』


 やけに簡単に返事が返ってきて拍子抜け。電話口で孔明は訝しげになった。


『張飛、ボクの言ってる好きの意味わかってる?』

『わかってるっす』


 結婚をして引っ越してしまった孔明の部屋からは、金色のススキ畑は見えなくなっていた。その代わりに広大な庭が広がる。


『人としてじゃなくて、性的に好きってことだからね』

『わかってるっすよ』

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