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最後の恋は神さまとでしたR  作者: 明智 颯茄
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気づいたらバイセクシャル/2

 テレビではひっきりなしに特番が放映されている。結婚したかと思うと、一ヶ月ほどで新しい人間が加わるをずっと繰り返している家だ。独健からしてみれば、どこか別世界の出来事だったのに、それが現実になろうとは夢にも思わなかった。


「はい、光秀さんが義理の父です」

「結婚式にはテレビの記者に囲まれるんだろう?」

「少し囲まれますが、蓮と光命を中心にして記者会見は行われるので、僕たちにはあまり支障はありません」

「苗字が広家から明智に変わる」

「それは、婿養子ですからね、奥さんの苗字になっちゃいます」

「はあ、断りたいのに、もう断れない」


 独健はため息混じりに言ってうなだれた。最初の約束にうなずてしまったばかりに、バイセクシャルの複数婚に仲間入りが決定してしまった。だがしかし、言うことを一方的に聞いているわけにもかない。結婚なのだから。優しい独健は一言断りを入れた。


「妻と子供、それから、うちは父と母が人の上に立つ人間だから、一人でも反対すれば、結婚はなしだ」

「えぇ、構いません。僕も誰かが悲しむのは黙って見ていられませんから」

「返事は少し待ってくれ」


 独健は空を見上げ、ひまわり色の短髪を風になびかせると、瞬間移動で自宅へと帰っていった。


    *


 家族そろっての夕食も終わり、食器を片付け終わると、独健はダイニングで子供達とテレビを見ている妻――陽和師ひおしに話を切り出した。


「貴から、その、策略がされて、バイセクシャルの複数婚を迫られているんだが……」

「やっときたの」


 カラになったビールの缶を振って見せて、妻はおかわりを要求した。独健はそれを持っていきながら、不思議そうな顔をする。


「やっとって?」

「あら、気づいてなかったの?」


 陽和師は少しあきれた。おかわりのビールを独健は差し出す。


「気づくって何をだ?」

「私たち妻が仲良く飲んでたのは、将来結婚して毎晩飲みたいわねって話をしてたのよ。出会ってすぐからね」

「そういう仲のいいだったのか」


 テーマパークに行ってから、妻たちだけで行動することがよくあった。お茶に行ってくる。コンサートを見に行ってくる。あれはそういう意味だったのだ。旦那たちが子供を寝かしつけている間、妻たちはドンチャンしていて、それは結婚してからもしたいという夢を語っていたのだ。


 陽和師はビールを一口煽ると、


「私は賛成よ。もっと早いかと思ってた」

「子供たちにも――」


 独健は途中でさえぎられた。


「私が前々から言ってたわよ。白くんたちと兄弟になるの楽しみって言ってるわよね〜?」

「言ってる! 言ってる!」


 子供たちはぴょんぴょんとその場でジャンプし始めた。


「そうか。喜んでるってことか」


 独健はひとまずほっとした。自分の家族は賛成なのだ。


「あなたはどうするの?」


 気軽な身分ではない。親戚もいる。一人でそうですかとは決められないのだ、独健は。


「父さんと母さんはたくさんの人に立つ人たちだから、二人の意見は絶対だ」

「聞きにいくのね?」

「そうだ。ちょっと行ってくる」


 少し離れたところにある、実家まで瞬間移動で消え去った。


    *


 両親に何とか話を切り出した独健だったが、父――広域天は鬼の形相だった。


「男と男が結婚!?」


 何かあると憤慨している姿を、明引呼と貴増参が昔見ているほど、怒ると収集がつかなくなる父だった。独健はそれでも辛抱強く説得にしようとした。


「父さん、これにはわけがあって」


 広域天は首を横へ何度も振る。


「ダメだ、ダメだ。男と結婚するなど、認め――」

「いいんじゃないかしら?」


 隣でさっきから黙っていた弁財天が落ち着き払った態度で言い放った。


「母さん……」


 広域天の怒りはどこかへさっていき、風向きが急に変わった。恩富隊の社長は言葉を続ける。


「うちに所属してるアーティスト二人がしているのだから、反対する理由などどこにもないと思うけど、違うかしら?」

「いい。問題ない」


 父の態度の豹変ぶりに、独健は吹き出した。


「ぶっ! さっきと言ってること全然違うが、母さんには尻に引かれっぱなしだな」


 何だかんだと仲のいい両親だ。独健はこの家の息子でよかったと思った。きちんと話せば聞き入れてもらえるのだから。

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