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最後の恋は神さまとでしたR  作者: 明智 颯茄
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思い出すたび増えてゆく/2

 夫婦八人プラスおまけで、平和な日常を過ごす。おまけの倫礼は夫四人をモデルにした小説を書き始めていた。頭に浮かんでくるシーンをパチパチを素早くパソコンに打ち込んでは、少しずつ仕上がってゆく。ある時、彼女はあることが気になって打ち込む手を止めた。


「はあ、誰か思いつくたびに結婚する……」


 あんなに忘れていたのに、最近どうかしてるのかと思うほど、思い出す神の名前。そして今日も、倫礼はやってしまった。頭を抱えて悲鳴を上げる。


「いや〜〜! 別の人思いついちゃった」

「誰だ? 言え」


 リアクションがないから、そばにいないのかと思っていたが、蓮は守護神の仕事をきちんとしていた。倫礼は往生際よくなくごねる。


「え〜〜っ! 言いたくな――」

「いいから言え」


 神からピシャリと言われ、おまけは観念した。


「月主命さん。そんな人いたよね?」

「月主……?」


 蓮は口の中でつぶやいて、あのマゼンダ色の髪を持つ男を思い返した。一緒にいると楽しいと思っていた。面白いことを言うと思っていた。だが、そこにどんな感情があるのかずっとわからなかったが、今わかった。


「まさか、こんな偶然があるわけない」


 おまけの倫礼は訝しげな顔をする。出来レース並みに思い出しては、結婚してがもう二度も続いている。しかし、さすがにもう次はないだろうと思っていたが、蓮が急に立ち上がり、ドアへと向かって歩き出した。


「あれ? 蓮、どこかに出かけるの?」

「ん」


 意思表示のない返事を返してきただけで、瞬間移動でいなくなった。焉貴の時がそうだった。好きだと気づいていなくて、今頃やっと気づいたのだ。ということは……。


「まさか、好きだったとか?」

「そうかもしれませんよ」


 パソコンの上に突っ伏して、倫礼は座っていながらも精一杯じたばた暴れ出した。

 

「いや〜、月主命さんと結婚するなんて思ってなかった」


 ルナスマジックは遠目で見ているから面白いのであって、当事者になったら大変なことだ。おまけは忘れていた。コウからお前は気絶しないと言われていた意味が、結婚するからという未来だったと。


「光さんは月主命さんを知ってますか?」


 同じ運命に光命もあるのかと思って聞いた。光命は紺の髪を横へ揺らした。


「いいえ、知りませんよ」


 複数婚でも、最初は二人きりの恋愛から始まるのだ。だから、おまけの倫礼のように他の配偶者も知らない人と結婚することが起きているのだった。


「でも、蓮が好きだったら、結婚してあげたいですよね」

「えぇ、愛する人の気持ちには答えて差し上げたいです」

「ですよね」


 自分の気持ちよりもまずは、愛する配偶者の気持ちが優先。明智家はそんな人の集まりだった。


「あ、そうだ。焉貴さん!」

「何?」


 守護神と人間とは強く結びついている。呼べばすぐそばにくる。焉貴はぱっと姿を現して、マダラ模様の声で聞き返した。


「月命さんって知ってますか?」

「知ってるよ」


 倫礼は嫌な予感を覚えつつ、


「あーあ、好きでした?」


「ちょちょちょっ!」いつも皇帝みたいに堂々としている焉貴が、珍しく慌て出した。「今、蓮が出かけて行ったのって、プロポーズしに行ったの?」


 出かけるところを見かけたらしい。あのノーリアクションの夫のことは、妻に聞かれてもわかりかねるが、


「何も言いませんでしたけど、たぶんそうです」

「マジで、俺、あいつと結婚すんの?」


 焉貴はため息をつきながら、両膝に手をついた。


「あれ? 焉貴さんは好きじゃなかったんですか?」


 世の中うまく行っているようで、そうではないのだ。焉貴は首を横に振る。


「俺は違うよ。ただの同僚。話合うとは思ってたけど、恋愛対象じゃなかったからね」


 仕事仲間と言えるかも微妙な距離で、受け持ちのクラスが違うのだから、チームも組んでいない。本当にただの同僚。廊下で顔を合わせるくらいだった。


 妻は自分と焉貴のことをかせねてみる。


「と言うことは、恋愛の修業をすることになるのかもしれませんよ」

「って言うか、蓮のやつ、何人好きになってんの?」


 いくらミラクル風雲児でも、誰彼好きになるわけじゃない。それなのに、あのミュージシャンはぽんぽん結婚している。すかすがしい限りだ。


「恋多き男……。次で結婚するの四人目ですけど、そのうち三人に蓮はプロポーズしましたからね」


 夫が何人好きになろうといいのだ。真実の愛で好きになっているのだから。ただ恋心に気づかないで好きになっていることが問題な気がするのだ。


「あいつ、気が多いじゃない?」

「惚れやすいんじゃないんですか?」

「そうね」


 明智分家の結婚騒動はこうやって続いてゆくかのように見えていた。

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