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最後の恋は神さまとでしたR  作者: 明智 颯茄
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もっと自由に羽ばたけ/5

「何〜?」

「前さ学校で、担当生徒の父親じゃないんだけど、俺とそっくりの男に声をかけたわけ」


 今いい雰囲気で、両想いになったばかりだというのに、このミラクル風雲児はもう別の男の話をし始めた。


「焉貴の恋愛話〜?」


 孔明は間延びして聞き返したが、その男が誰だかわかって、そっちに気を取られた。


「っていうか、その人って、ディーバ ラスティン サンディルガーのこと?」

「よく当てたね」

「本名は明智 蓮。彼と焉貴よく似てるって、テレビで初めて見た時思った」

「そう。全然関係ないのに、他人の空似ってやつね」


 焉貴の結婚指輪をした手が、孔明の頬へ伸びてゆく。孔明はその手をつかまず、携帯電話を瞬間移動で呼び寄せた。


「今、人気急上昇中のR&Bのアーティストだよ。フィーチャリングして、あっという間に売れた。ボクじゃなくても大抵の人は知ってる」


 音楽再生メディアをプレイにすると、グルーブ感のある曲に、奥行きがあり少し低めの声が人を惹きつけるように流れ出した。


「そう、じゃあ、話早いね」


 まだ十年も生きていない、あの銀髪で鋭利なスミレ色の瞳を持つ男が、成功への階段を登っている姿を、焉貴は嬉しいとかではないが、心地よかった。


「そいつと最初にフルーツパーラーに行った時、こう言われちゃったんだよね」

「どう?」


 今流れている低い声が、もっと無邪気に弾んでいた。吹き出して笑い、ツボにはまって止まらなくなった男だった。


「他の誰といるよりも、お前といると楽しい。こんなことは初めてだ――って」

「それって、告白〜?」


 携帯電話の中で、鋭利なスミレ色の瞳で人々を釘付けにすることを、売りにしているディーバを、孔明は違った角度から眺めた。


「そう思うでしょ? 俺のこと愛しちゃってるよね?」

「ん〜、でも彼、結婚してたよね? 光秀さんの娘さんと」


 愛する男も自分も結婚していて子供がいようが、ミラクル風雲児は悩まないのだ。聖水のようなピュアな心で大切に愛を育むのだ。しかし、思いも寄らない人物が関係していて、あぐねいているのだ。


「そう。パパのこと知ってんの?」

「うん。昔何度か会って話したことがあるからね」


 初めて行ったパーティー会場で出会った黒髪の男。陛下の分身の一人。孔明や焉貴とは違って、保守的な人物。光秀の元で複数婚が成立する――。


 感情は抜きにして、ないとは言えなかった。光秀は厳しいところはあるが、人の心を誰よりも尊重する思慮深く慈愛のある人物だ。


 今も流れてくるR&Bに耳を傾け、焉貴は孔明の膝の上で秋空を見上げる。


「そう。あいつ、そんなに有名になったんだ」

「知らなかったんだ」


 おまけの倫礼に会った日を最後に、焉貴と蓮はすれ違って、連絡だけをするような間柄となっていた。


「仕事が忙しいっていうのは聞いてたけど、会ってないからね。でもさ、結婚は難しいかもね」


 恋する軍師は進軍できると踏んでいたが、意外なところで行手を阻まれた。音楽再生メディアを一時停止にした。急に静かになったあたりで、ススキがサラサラと風に揺れる。


「どうして? 出会ったら失恋もしないし、永遠に続いていくんだから、蓮の奥さんも子供も焉貴を好きになる――この可能性が大きいよね?」

「それは、神界だけの話ね」

「どういうこと?」


 孔明がまだ知らない、別動隊が潜んでいたのだ。焉貴はおまけの倫礼を久しぶりに思い出した。


「そいつ、配偶者がもうひとりいんの」

「そんな結婚してる人いたんだ」


 ハーレムをしている男は世の中にひとりだけで、誰か他の人がすればニュースになってもおかしくないほど、神界には起こらないことだった。


「正確には、もうひとりはこの世界の人間じゃないの」

「霊界か地球ってことだよね? ボクとキミには霊感がないんだから」

「そう、地球にいんの。そいつには、永遠の法則は通じないよね?」

「そう……かもしれないね」


 人によっては、肉体の欲望を満たすためならば、心の底から愛していると自身に言い聞かせて、不倫や不貞を働く地上だ。


 そこで生きている女が、永遠の愛に出会える可能性は限りなくゼロに近い。しかも、神の領域へ上がるのは、生きている間はどうやってもない。肉体を持った神は存在しないからだ。


 恋する軍師は別の作戦を練ろうとすると、焉貴がマダラ模様の声で先陣を切った。


「しかもさ、魂が入ってないの」


 ひとりとして数えていいのか違うのか、今まででありえない存在が、おまけの倫礼だった。


「どういうこと?」

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