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転移先がブラック過ぎたので帰ってきたらヌルゲーでした  作者: 他津哉
第六部『元勇者と七人のヒロイン達』
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第78話「毒すら喰らう英雄は、言いたい事も言えないそんなお年頃」


「その状態、だっ、だけど余計に、私が勝つわ。今のあなたはただの凡人。ただの……力の塊に……アタシの鎧がぁ……」


 なんて滑稽なんだろうか、恐怖で震えている。だけど実は俺も震えているんだ。この力を完全解放するのは本当に久しぶりだ。


「ガイド……奴の情報を全て曝き出せ」


「了解。英雄・快利。神々の視点(全部丸見え)を展開……事前の情報通り敵はエネルギー体です」


「それで?」


「捕まえて消滅させて下さい」


 一瞬で答えが来て理解する。だから後は行動すればいい。だから結界を地面に張る。そうしなければ地面が割れてしまうから。


「何なの、何なのよ……『悪意の鎧』は発動済み、アタシに攻撃は通らないって言ってるでしょおおおお」


「ああ。そうだな。行くぞ……」


 一瞬で肉薄してガツンと衝撃が来る。奴の言う通り悪意の鎧に正面から激突した。奴の鎧は完璧に発動して俺は正面から激突して弾かれていた。




「はっ、驚かせて……何か有るのかと思えば突撃しただけじゃない」


「いや。これでいい。もう、終わった」


 俺が言った瞬間、パリンと何かガラスが割れるような音が鳴り響き目の前のドラゴンの全身から紫色の体液が噴き出した。


「アッ、アガアアアアア。アアアアアアアアアア」


「ダメです。一撃とは行きませんでした」


「やはり精度が甘いか。壊せたのは悪意の鎧だけか」


 奴の悪意の鎧に激突した際に俺は神刀で斬り付けただけだ。先ほどまで俺の攻撃が効かなかった最大の理由、それは奴の生み出す強大な悪意に心で負けていたからだ。勘違いしないで欲しいのは奴の攻略法は最初から一つだけだったと言う点だ。


「バカな、あんた……私の、鎧は毒を持てば……持つほど」


「みたいだな。ガイドの試算で俺に恨みを持った人間は同じ学校だけで二百人弱、他にも色々込みで千人はいるらしいじゃないか」


 まず驚かされたのは悪意の認定の狡猾さだった。まさかエリ姉さんと一緒に登校していたり、ルリと弁当を食べさせ合ったり、ユリ姉さんとメイド服デートしただけで街中の悪意を集められる仕組みになっていたことだ。


「まさか、たったあれだけの事でここまでの悪意を集めるなんて……」


「いえ、それは妥当かと、問題はそれが一次感染で二次感染、三次感染つまりは人の噂話やネットの流言飛語まで無意識の悪意として取り込んでいたと言う点です」


 その結果、俺に恨みを持つ人間は倍々ゲームで増えて行き今は千人弱まで増えた。ガイドによると増幅させた悪意を数万倍にして自分の力として使用できると解析がされていた。


「なんでぇ、なんでよぉ~。あんたはもう勇者でも聖人でもないからアタシの鎧を無効化出来ない。どうして」


「答えは単純だ。そもそも俺は過去の戦いでお前の悪意の鎧を破っていない。ただ発動させなかっただけだ。偶然にもな」


 当たり前のことだ。完全に善なる勇者だった俺に対して奴は警戒し、そこに着目していた。なんせ能力そのものを封じられたのだから警戒するのも分かる。だから奴はこう考えたのだろう。


「この能力が発動したなら負けることは無いと、違うか?」


「…………ちっ」


 実際、精神的に追い込まれた俺も奴と同じ考えに至った。勇者だから勝てた、敵の能力が無効化されていたから勝てたと、一瞬自分を見失いそうになったが前提を間違えていた。


「そうです。元勇者は勇者だった時の自分よりも今の自分が弱体化したと考えた。そしてそれを英雄化で補おうとした」


「俺は聖人の勇者から凡人に退化した。お前は言ったな……だけど、凡人なら難しいことは考えるべきじゃなかったんだ」


 俺は眼前の毒液を噴き出している奴を見てニヤリと笑いながら二対の剣を構えた。


「な、なんなのよ……何なのよぉ~」


「能力系とかそう言う奴を叩く方法は古今東西、昔から決まっている……それは」


 そうなのだ俺は単純に雰囲気に飲まれただけだった。ある意味で感情が死んでた勇者時代と最近は少しイキリ陰キャしてる凡人の俺の違いは慎重さと視野の広さだった。だから冷静さを欠いて考えが固執して勝手にピンチになっていた。


「それは……?」


「レベルを上げて物理でぶん殴るだけってな!!」


 その考えが英雄化を使う最後のトリガーになった。そもそも無限の力を一定時間出せるんだから正面からぶん殴れば解決だ。現に悪意の鎧はアッサリ壊れた。


「そもそも、たった数千人の悪意くらいで英雄を、化け物を止められると思うなよ、ポイズンドラゴン」


 俺は斬り付けた神刀の効果を遠隔から発動させて奴の毒の体を半液体から固体に変化させた。そして近付くと聖剣で串刺しにして持ち上げる。


「アガ、ありえない。ありえないぃ~。どんな力なのよ」


「そりゃ英雄化のスキルは勇者よりも強いんだ。お前はこの力を勇者の本当の力か何かと勘違いしてたみたいだけど、これ別スキルなんだよ」


「なっ、なんですって……」


 戦う前にガイドに聞いていた予測は当たっていた。敵は英雄化を出さない俺が弱体化して使えないと思っているのではないかと、過去の勇者の状態が英雄化だと勘違いしている可能性が有ると進言されていた。


「どうせ勝手に勘違いしたのでしょう。あの世界でも英雄化のスキルは数度しか使ってませんからね。まさか派生スキルの別物とは考えなかった。違いますか」


 ガイドの発言にうめき声を上げた奴を見ると本当に勘違いしていたようだ。頭脳派みたいな動きをしていた癖に最後に詰めを誤ったな。


「これで終わりだ。ガイドこっちに!! 空の旅に少し付き合え!!」


 俺はガイドを横抱きにして結界を張った地面をトンと蹴り上げると奴を持ち上げたまま成層圏ギリギリまでジャンプする。


「わお、絶景だな。このお荷物が無ければ最高の景色だ」


 そう言って聖剣をグイっと深く突き刺すとポイズンがうめき声を上げた。


「地球が青いとは本当でした。では英雄・快利お願い致します」


 そして俺が聖剣に力を込めようとするとポイズンは命乞いを始めた。


「待って、待ちなさい。協力するわ。私もあの頭の悪そうな女の眷属になる。そして利用して裏であなたに協力してあげるわ。どう、悪くないでしょ!?」


「消えろ毒の竜、全ての悪意と一緒にな」


 そして俺は聖なる一撃(相手は死ぬ)を天に向かって放った。大気圏を越え宇宙を裂く白い光はポイズンドラゴンも悪意の鎧も全てを消滅させた。


「俺の初恋の人を利用する? その言葉を吐いた時点でお前は消える運命なんだよ」


 それだけ言うと俺は聖剣を使って転移魔術で地上に戻った。





「よし、到着っと……放すぞ」


「はい。非常に素晴らしい経験が出来ました。それと神刀と聖剣をお貸しください」


 そう言われガイドに聖剣と神刀を渡すと付着していたポイズンの毒を舐め始めた。止めようとしたが全部舐め取ってしまった。


「んっ、ちゅ、ふぅ……取り込み完了です。ポイズンドラゴンの力を頂きました」


 そして一瞬硬直すると髪の色が変化し始めたスカイブルーだった部分が少しだけ黒くなり、オレンジのメッシュの横に白いメッシュも追加された。


「大丈夫なのか? 今のでポイズンも取り込んで……ぐっ」


「もう、ですか……。今までは私も共にいたので効果を軽減させられましたが……」


 英雄化の反動が始まった。俺の意識が遠退いて身体中が熱く全身の血が沸騰するような感覚が駆け巡る。これが英雄化の代償で凄まじい衝動が俺を襲った。


「多分、ダメだ。だから異世界に」


「快利、大丈夫~」


 このタイミングでユリ姉さんがやって来るなんて……最悪だ。しかもよく見たら今日はニワカ陽キャ時代の服を着ている。まずいと俺は大声を出してその場を離れる。


「ユリ姉さん、離れてっ!! お願いだから……うっ」


「ちょっと、どうしたのよ。それとその子は誰」


 こういう時は空気を読んでユリ姉さんと思っていたらガイドが素早く間に入ってくれたが、ガイドの身長は150cmチョイしか無くてユリ姉さんと比較しても小さくて効果があまり無い。


「申し訳ありません由梨花様。我が英雄はスキルの反動を抑えるのに必死なのです」


「だからあんた誰よ。いきなり出て来て」


 二人の言い合いが始まったが今度こそ限界だ。俺は一瞬で魔法で全ての準備を整えるとガイドから聖剣と神刀を返してもらい逃げるように転移魔術の準備に入る。


「マズい。全てを拒絶する聖域(引きこもりの味方)は解いたし浄化魔法は全域に使ったから安全だ。後の説明は頼む。俺はもうユリ姉さん見てたら限界だ」


「英雄・快利、即応式万能箱どこでもボックスに可能なだけのブツをジャンル別に詰めておきました。お気に入りも完備済みです。どうか、ご武運を!!」


「お前はオカンか……だけど助かる。ちくしょおおおおおおお!!」


 そして俺はマリンやグラスに紹介した異世界へ避難した。もう限界で爆発寸前の中で最後の力を振り絞り俺は転移した。





「もしかして、あんた、快利のスマホなの?」


「正確には勇者の魔法の補助演算システムです」


 快利がいきなり転移魔術で消えてしまった。そして残されたのは白い無地のワンピースを着た少女一人だけ。どうやらあの小うるさいスマホのようだ。今さらスマホが美少女になった所で驚かない。こちとら竜使いの乙女なんだから。


「マスターお待ちください。その者は危険です」


「何でお前からフレイムとコバルト、それにポイズンの気配までするんだ」


 小型化したマリンとグラスが後ろからやって来て警戒する。他のドラゴンの気配がするとはどういう事だろうか。


「それは……」


「君は快利の魔法、無限書庫ウィキの補助システムそれが肉体を得た姿、そうだろう?」


「ケイ!! それにフラッシュも大丈夫なの」


 謎の少女の後ろからフラフラになって歩いて来たのは一人で突っ込んだ慧花と、いつの間にか消えていた私の眷属のフラッシュドラゴンだった。さらに結界が解けて絵梨花や他の女子もこっちに向かって来ていた。


「快利が治してくれたからね。しかもこの場の浄化や回復までしてくれたようだ。あれこそ英雄化の真の姿だ。久しぶりに見た」


「マリン姉さん、グラスも大丈夫だ。そいつは元勇者がガイドと呼称していたシステムだ。私は何度も話したし今回は私を収納し保護してくれた」


「フラッシュを守ってた? どう言うこと」


 フラッシュの言う事が本当なら目の前の頭の色がド派手で青地にオレンジと白のメッシュと中々センスが怪しい頭を持ったこの子は、快利と一心同体だった存在で味方という事になるが頭の理解がイマイチ追いつかない。


「それは私達も聞かせて頂きたいですわガイドさん」


「セリカ様、それにモニカ様……分かりました。ではご説明しますので場所を変えるのをご提案します」


 目の前の三色頭の提案に乗った私はその場の全員をマリンの背に乗せ、家に帰る事に同意した。魔力が残っているマリンに巨大化してもらい転移魔術で家まで戻った。





「まずは皆様、改めまして元勇者カイリの魔法補助システムその他の雑務一般を取り扱っておりました仮称『ガイド音声』です」


 家に戻ると皆がグッタリしている。特に今回直接戦闘をした慧花さんは相当疲れていて、ユリ姉ぇと眷属のドラゴン達もボロボロだった。

 逆に今回は結界でお留守番だった私や瑠理香、それに異世界組の二人は目の前の快利の魔法だった少女に説明を促す。その結果返って来たのが今の返事だった。


「ではガイド音声、いやガイド。快利はどこに行った?」


「そこのドラゴン達の現住場所の第二異世界です」


 第二異世界つまり快利のバイト先か、そんな所で何をしているのだろうか。なぜ快利は行ってしまったのか。


「私を見るなり顔真っ赤にして『放れろ』とか言い出して何だったの? あれは明らかに異常よ」


「そう、だね。直前に医療魔術をかけてもらったが、その時は異常は無かった」


 ユリ姉ぇや慧花さんもソファーで上半身だけ起こして疑問を投げかける。二人は近くで快利を見ていたし声も聞こえていたから私達より状況が分かるはずで、だからより深刻なのが伝わった。


「あの、ガイド音声さん。カイが心配なんです!! お願いします。私のこと嫌いなのは分かるけど、どうか教えて下さい」


「わたくしも、お教え下さいガイドさん」


 瑠理香とセリカもガイドに迫り、モニカも無言で彼女を見ると室内の六人の視線を受けた彼女は溜め息を付くと口を開いた。


「これは元勇者カイリから口止めされており、私の一存でお話は出来ません」


「それはどうしてもか」


 私が言うとガイドは、少し考えた後に私達の顔を一巡して確認すると少しだけ考え込むように目を閉じると再度口を開いた。


「勇者カイリの言葉をそのまま言わせて頂きます『後生だから、これがバレたら俺は……頼むからガイド、この通りだ』とのことです」


(ん? なんだ、思った以上に切羽詰まった感じでは無いのか)


「カイがそこまで、きっと大変なんだ。それで私達を巻き込まないように……」


 たぶん違う瑠理香、これはお姉ちゃんレーダー的に何かやましい事を隠しているに違いない。中学の頃に庭で稽古を付けていた時に私の胸に釘付けだった快利に、わざと谷間を見せた時のリアクションに似ている。


「う~ん、どちらかと言えば隠そうとしているのでは」


 モニカが呟くとと慧花さんもそれに同意したので私も発言する。


「私も同意見だ。快利は何かやましいことを隠している、違うか?」


「お話出来ません。ただ慧花様や由梨花様、それにモニカ様には魔術を使い追って来ないで欲しい。とんでもない事になるとも言ってました」


 今の三人は転移魔術を使える人員だな。つまり見られたくない何かが有ると言う事は確実で、これはいよいよ気になった。


「ふむ、私も快利が何か良からぬことを隠しているとは思うが、さすがにこれ以上は探るのもな……」


「で、でも慧花さん。カイが一人で苦しんでるなら助けたいです」


 慧花さんは考え込むが瑠理香は心配で仕方ないようだ。しかし両者とは全く違う疑問をユリ姉ぇが投げかけていた。


「ねえガイド、快利のさっきやってた英雄化ってやつ、あれは何? うちの子達が皆ビクビクしちゃってさ」


 見るとドラゴン達が震えていた。確かに凄まじい力であれだけ苦戦していたポイズンドラゴンをあっと言う間に倒していたから凶悪な力なのは理解出来た。


「スキル英雄化は、英雄の兆しというスキルから進化した元勇者カイリの現存する全てのスキルの中で最上位に位置するバフ&デバフスキルです」


「それは私も聞いた。だが一つ気になったのはデバフとは何だ? そこは快利から聞いたことが無い」


 慧花さんがユリ姉ぇの後を継いで話を続けた。しかしデバフとは何のことだろうかと思って隣の瑠理香に聞いたらゲーム用語らしく能力を下げる効果を指す意味の用語らしい。


「はい。正確にはデバフと言うよりも状態異常に近いです。その際に思考力が低下するので、それがデバフ扱いなのかと推察します」


 それを聞いた瞬間、慧花さんが何かに気付いたように目を見開いて質問を続けた。


「もう一ついいかな。その英雄化の状態異常の名前と効果を教えてくれ」


「はい。状態異常名『英雄色を好む』です。効果は思考力の極端な低下と異常な性欲の増加です」


 それを解説された瞬間、シーンと静まり返りその場の全員は全てを察した。


「な、なるほど。それで由梨花を遠ざけたのか快利は……」


「で、ですがガイドさん。質問なのですが、それを黙っているように快利に言われなかったんですの?」


「私が命じられたのは自分の今の状態を話すなと言う指示のみで、英雄化のスキルの説明をするなとは言われていません」


 セリカが顔を赤くして質問して効果時間も聞き出していた。効果は発動から半日とのことで、ある程度発散すれば短くなるとも説明された。

 さすが元はガイド音声でナビ的な役割の魔法なのか融通が利かないようだ。そのお陰でこれは千載一遇のチャンスだと私は理解してしまった。


「これはチャンスだね」


「今ならカイでも押せばワンチャン有るんじゃ……」


 そしてそれは私以外の五人も同じ思いだったようだ。私の誘惑ですら鋼の精神で耐え切ったが本性は女好きで脱童貞を夢見ているのはもう皆が知っている。


「モニカすぐに転移の準備を!!」


「それを止めるように私は命令を受けているのです。元勇者のソロ活動の邪魔はさせません!!」


 それを聞いて私は感心し同時に焦った。さすがは私の弟だ。誰にも迷惑をかけずに一人寂しく異世界でソロ活動をしようとしているようだが認めない。


「なにっ!? 快利め異世界でそんなもったいない……ではなく非生産的な事を!! 姉として許すわけにはいかない全力で止めにいくぞ」


 しかし、勇者スキルをほぼ全て移譲されているガイドに弱った状態の私達が勝てるはずもなく全員が鎮圧されてしまった。快利、お姉ちゃんは諦めないぞ。




 俺はあれから大体四時間後にこちらの世界に戻った。情けない話、俺はあのスキルが発動すると反動で凄まじく性欲が強くなり理性が失われてしまう。さらに神気を一時的に全て使い切ってしまうから勇者スキルもほぼ使えなくなる。今まではガイドが代わりに監視してくれていたが、今の俺じゃそれも出来ない。


「ま、今回はガイドに頼んでいたから大丈夫だったけど、これから英雄化を使う度に皆を襲いそうになるのが怖いんだよな」


 俺は部屋に転移で戻るとスッキリしたけど色々と罪悪感と残念な気持ちでガイドの持たせてくれた数々のおかず達を見る。


「ジャンル分けとか、正直助かった……ガイド」


 俺がしみじみと椅子に腰掛けて勉強机の上に今日のソロ活動で、ご使用したものを見ていると不意に背後から声をかけられた。


「あっ、私の水着の写真も有る。良かった~!! ちゃんと使ってくれたカイ?」


「は?」


 冷や汗って本当に出るんですね。表情が固まったまま背後を振り返ると満面の笑みのルリと複雑そうな顔の姉さん達、そしてすまし顔のモニカが俺の近くにやって来て耳元で言った。


「お気に入りにメイド写真集を入れるのは評価が高いですね。あと快利兄さん、新しい写真が欲しければリクエストはいつでも私に」


「へ?」


 オカシイ、どういう事だ。これは……これではまるで俺が異世界でやって来たことがバレてるみたいじゃないか。


「まさか夏のミスコンの水着写真を現像して持っていたとはな快利?」


「ほんとほんと、水着なんてあの時に久しぶりに着たんだから」


 やめて、止めてくれ。こんな辱め、見ると二人はニヤニヤしながら俺の頭を撫でて来た。もう許してくれ姉さん達。


「うっ」


「ま、まあ、今回は世界を救うためですし、多めに見ますわ。ただ私の写真少し少ないんじゃなくて? 欲しかったら言いなさい。モニカと一緒に撮りますから」


「ああ、そうだ快利。これは私が今の顔に戻した時に撮り直した写真で、店で使う用に撮ったのだが使用禁止にされたものでね。せっかくだし次回から使ってくれ」


 そして肩をポンポンと慰めてくれたのは異世界の二人でセリカは恥ずかしそうにしていて罪悪感が、逆に慧花のやつは分かってると言わんばかりに自分の写真を押し付けてきた。すっごいエロい顔した写真だった。


「なんで、バレてんだよぉ……ガイド」


「はい。英雄化の説明をしたら皆様にバレてしまいました。申し訳ありません」


「うがあああああああああああああ!!」


 英雄は辛いです。こんな状況じゃ何も言い返せない。皆を救ったのに色んな毒にも耐えたのに、最後の最後に辱めと言う名の最強の毒が俺を滅多打ちにして、この騒動は幕を閉じた。俺は泣いてもいいよね。

誤字報告などあれば是非とも報告をお願い致します。(感想ではなく誤字脱字報告でお願いします)


感想・ブクマ・評価などもお待ちしています。


この作品はカクヨムで先行して投稿しています。


下に他作品へのリンクが有りますのでよろしくお願いします。

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