第51話「血は水よりも濃いとか都市伝説じゃなかったのかよ」
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◇
今日は午後からの重役出勤をするようにと母さんに言われて親父は座布団の上に正座させられていた。フローリングは痛いと言って譲歩してもらったらしい。
「あの、母さん? 今回はむしろ親父は黙認してくれるし協力までしてくれたし悪い事は無かったと……」
「違うのよ快くん。さすがに今の快くんを見たら昇一さん……いいえ、今日は昔のように呼ぶけど昇兄ぃの性根を叩き直さないといけない気がしたの」
「い、いや夕子、子供達も見てるし、な?」
いつの間にか二階から降りて来たエリ姉さんとセリカも席に着いてなぜか一人だけ正座させられている親父を不思議そうに見ている。
「あの、カイリ? お義父様とお義母様はどうされたのかしら?」
「俺にもさっぱり……それに親父の呼び方が、その……」
「う、うむ……。その、母さんと義父さんは昔からの知り合いなのか?」
セリカとエリ姉さんも気になったのか会話に入って来た。モニカも用意が終わったようでこちらを見ている。そして代表してユリ姉さんが再度二人に尋ねた。
「絵梨花の言った事、私も気になるかな……教えてくれない?」
「そうね。私と昇一さん、昇兄ぃは幼馴染なの、小さい頃はいつも面倒を見て貰ってたのよ……昔から何でも器用にこなす人で、おじさま、えっと……快くんのお爺様の英輔様も、よく褒められていたわ」
「へぇ初耳だ。親父がねぇ……」
二人は幼馴染だったのか……衝撃的過ぎる出来事に俺とエリ姉さん達も含めた五人は驚いていた。そもそも俺も姉さん達も二人の馴れ初めは聞いた事が無かった。
「それでも、英輔様も後はおばさま、いえ、お義母様も私も当時から手を焼いていたのが昇兄ぃの趣味だったの……」
「趣味?」
「ええ、とある歌手の追っかけ……今で言うならアイドルオタクに近くて……そこで昇兄ぃは親衛隊長、これも今で言うところのファンクラブのまとめ役ね。そう言う事をしていたの」
ん? どっかで聞いた事が有る話だな……俺の背中からドバっと汗が出て来た。気のせい気のせい、それに俺はFC会員なだけで会長じゃない……ん? そう言えば最近、特別なVIPファンになったような気が……。
「え? じゃあ母さん、快利がドルオタなのは義父さんのせいってこと?」
「別にそうじゃないわ、ただ血は争えないわねって意味よ~」
つまり母さんがイライラしてたのは親父の趣味と俺の趣味が似ていたからなのか? それでもいくつか腑に落ち無い気がするけど、そして油断していた俺に特大の爆弾が落とされた。
「昇兄ぃが、むか~し追っかけしていたのは当時少ぉ~しだけ有名になったスウェーデン人の女性歌手なのよ~、名前がエマ=リンドフォーシュって言う金髪がそれは美しい女の人でね~? 確か歌手名はEMAだったかな~?」
え? どこかで聞いた事が有るぞ、その話……そう、確か夏休みの序盤で俺が異世界に無理やり戻された旅行の時に確か聞いた覚えが有る。確か南美ちゃんが言っていたのは……。
『そして最後に我が事務所のマネージャーにして元歌手、EMA名義で出したシングルは二枚!! どちらも微妙だった風美エマさん!!』
――――こんな感じだったはずだ。待てよ……じゃあ親父が追っかけをしていた女性歌手って、そう言う事なのか!?
「ルリのお母さんのエマさんの追っかけやってたのかよ!! 親父!!」
「うっ、ま、まあ……大学卒業までは……な。ちょうどエマちゃんも引退して裏方に回っちまったから俺も引退したんだ」
「そして~快くんは、娘さんの瑠理香ちゃんにお熱なのよね~?」
お熱って……ま、まあ確かに気になってるけど、それは純粋にファンとしてって昔は言えたんだけど、今は良く分からない。
「確かに快利の散財の八割は瑠理香関連のグッズ代に消えていたな。本人があれだけ近くに居るのだからタダで貰えば良いのにな?」
「はっ? それは無いよエリ姉さん、あれは俺がRUKAを応援したって言う貢献度的な意味でのグッズ購入だから意味が違う!!」
「なるほどな、確かに貢献度としてのグッズ購入か、俺も頑張ってCDを少ない小遣いから購入したな、少しでも届くようにって……」
そう言って床に正座させられている親父は、まるでかけがえの無い青春の日々を思い出すように呟いていた。
「親父っ……そうだよな!! 少しでも貢献したい!! それがファン心理だよなっ!?」
「分かるのか? 分かってくれるのか!? 快利!!」
「ああ、今まで俺、親父の事あんま好きじゃなかったけど……今は共感できるような気がする!!」
気付けば俺たちは握手して互いに肩を叩き合っていた。俺は生まれて初めて親父に共感していた。親子の絆はここに有りまぁす!!
「と、言うわけよ。つまり親子二代で同じ血筋のアイドルに心酔するのが昇一さんと快くん親子なのよ~」
「何と言うか……血は争えないのね……」
ユリ姉さんも戻って来て席に着くとなぜか俺まで親父の横で正座していた。だって俺の座ってた席にユリ姉さんが座ったから俺の席が無くなったんだ。それと俺だけフローリングなんだが?
「元勇者なんだから大丈夫だろう?」
「ええ、マイマスターは……快利兄さんは大丈夫なのだとは思いますけど?」
エリ姉さんが凄い冷たい目で見て来る一方でモニカは少しだけ同情気味に俺を見て来た。
「あぁ、それは違うぞモニカ。快利の部屋は瑠理香のグッズだらけだ。月の小遣いの大半は彼女のライブ用BDや各種グッズに費やしているんだ……」
「あぁ、勇者の部屋のあの光る棒やら細長いタオルやらはそう言う事でしたのね? それになぜか瑠理香さんのポスターが三つも有るから不思議でしたの」
「え? あれが瑠理香って分かったのセリカ?」
ユリ姉さんが不思議そうに言うと当然だと答えたセリカを見て俺は一瞬だけ不思議に思いながらすぐに思い出していた。
「当然ですわ。私の家系は鑑定スキルが有りますので見たら本名が見えました。キチンと風美瑠理香と出ましたわ」
そうだった鑑定スキル使えたんだセリカは、そもそも俺の鑑定スキルはセリカの父上から譲られた、いや違う、奪ったものだから……。
「快くん? お小遣いの無駄遣いはダメよ~?」
「無駄じゃないから……母さんのお願いでも……俺は中学の頃の孤独な俺を支えてくれたのは間違いなくRUKAだったんだ!!」
「「うっ……」」
見ると姉二人にダメージが入っていた。さらに母さんも明後日の方を向いていて義妹になった二人は不思議そうな顔をするばかりで親父だけは頷いていた。
「分かるぞ!! 思春期の孤独を埋めてくれたアイドル。そして一緒に応援した仲間たちとの友情!! 俺もチケット確保やダフ屋との戦い、列の徹夜整理や隊則を教えたりしてな!!」
「ああ、徹夜はしちゃダメだけど他は同意だ。チケットは今は身分証提示だけどね? 早く免許欲しいよ俺も……」
二人で正座したまま今昔、列の並び方やマナーの違いを話していると母さんが盛大にため息を付いていた。
「この病気は治らなそうね~」
「でも趣味だから……あっ、そうか、だから母さんってエマさんにあんなに」
「ま、そこが夕子の可愛いとこなんだけど……はい、すいません。これ以上は何も言いません。本当にすいませんでした~」
親父の土下座のフォームどっかで見た事あるな……どこだろうか?
「「勇者式土下座!!」」
異世界組が声をハモらせて言う。確かに言われてみれば俺の土下座フォームに良く似てた。向こうの世界の人間て土下座をあんまりしなかったから新鮮だったらしい。俺は左手、右手と手を付き相手を見て一回会釈をしてゆっくりと頭を地面に擦り付ける。これをスピーディーにやるのが勇者式土下座だ。
「これも血脈なのか……恐るべし秋山の血だな……」
「ま、母さんもそれくらいでね? それと言うほど怒ってないでしょ? むしろジェラシー?」
そう言うと母さんもプイっと顔を背けてしまった。あ~、これはまさか……犬も食わないあれですか? まさか俺の両親イチャ付いてるだけなんですか? は? 爆発しろよ!!
「悪かったよ夕子、な? 今度、地元のお前の好きなケーキ屋のモンブラン買って来るから、な?」
「それだけですか~? 私は安い女ですね~♪」
ああ、これマジでそうなんだ。うわぁ……親がイチャイチャしてるの見ると、こう……複雑だな。うん。そう思って姉さん達を見ると既に食事を始めていた。
「あのぉ、快利兄さんも、ご飯食べません? お義父様たちは何か色々と始まったみたいなので……」
視界の端でイチャイチャし始めた両親を横目に俺たち五人は黙々とご飯を食べ続けていた。仕方無いのでテレビを見ると俺が爆破したビルの周囲で社長が何か喚いている様子が見れた。
『事故などありえない、これは陰謀です!! 政府の罠だ!! 表現のじ――――』
『現場からは以上です。週刊晴雨の義和久野 陽太社長の第一声でした。これは政府の陰謀なのでしょうか?』
ちなみにネット、特にSNS上では賛否両論となっていたが意外にも今回の件は好感触に受け取られていた。まず死者がゼロな事、次に被害に遭ったのが週刊晴雨のビルのみで、何より人の不幸で飯を食ってる連中に罰が当たったという論調が強かった。
『しかしですね、死傷者がゼロなのはおかしくないですか?』
『そうですね。むしろ自作自演の可能性も――――』
などと穿った見方のコメンテーターまで出る始末だ。よく考えたらそっちの方が納得できる状態だった。なぜかビル内に人はおらず、なぜか死傷者はゼロ、しかもビルは老朽化していた。これだけ並べられたら、まさか異世界の勇者が介入したと考えるよりも会社が保険金狙いでビルを……な~んて事を考える人が出ても不思議では無いだろう。ちなみにテレビに出ていたコメンテーターは親父の知り合いらしい。
「良い感じで世論誘導されてんね~!!」
「ま、世の中は陰謀論が好きだから……まさか元勇者が介入して好きな女の子を守ろうとしたなんて思う訳ないでしょ?」
「こちらはそうですが、私達の世界なら確実にバレますのよ? だって勇者は私達や他の多くの人を助ける度に光ってましたので」
人が発光するのが基本みたいな事は言わないで欲しい。大体が勇者スキルを使うと白く光るか黒く光るかだから仕方ないのだ。最後にもう一度テレビを見ると崩落した後のビルに消防隊と警察の人間が入って行きなぜか無事な書類を見つけて大騒動になっていると言う臨時ニュースが追加されていた。
「PCは全部潰した。紙もね……ただ、俺もミスをするんだ。二重帳簿をたまたま燃やし損ねて放置しちまう事も有るんだよ?」
「快利、これもお前が……それに……」
「ふっ、俺の、じゃなくて……俺たちの大事なアイドルに手ぇ出したらどうなるか思い知らせたんだよ。マスゴミさんにね?」
エリ姉さんが俺の横顔を見て固まっているようだ。少しクールな笑みを浮かべ過ぎたのかも知れない。エリ姉さんはまだトラウマが治って無いからな。
「快利、頬っぺにご飯粒が付いてて少し可愛いドヤ顔だったぞ?」
「~~~~っ!!」
キメ顔で言ったらエリ姉さんに米粒を取られて目の前でパクっとされてしまった。不覚にもエリ姉さんなのに可愛いと思うのと同時に羞恥の感情が俺を支配した。そして食卓は談笑に包まれた。キメ顔だったのに……恥ずかし過ぎる……。
「ほら不貞腐れないの。でも今回はカッコ良かったよ? 頑張ったわね快利?」
そう言ってユリ姉さんが最近お決まりのように頭を撫で撫でしてくる。恥ずかしいけど仕方ない。今日はこれくらいで勘弁してやろうと俺は満更でも無い感じでご飯をかき込んで「おかわり」と言った。
◇
「はぁ、最悪。マリエ……本当にろくでも無い事してくれたわね」
「どうしたんですか? ママ?」
ここはクラブ『ダイアモンド』快利が異世界に飛ばしたホステスが勤めていた某夜の街の高級クラブだ。このクラブのママ、つまりオーナーは頭を抱えていた。売り上げ二位のホステスが客の個人情報を怪しげな記者に売り、挙句の果てに行方不明になってしまったのだ。
「本当にKプロ……じゃなくて今はF/Rか、いいお付き合いしてたのにね……」
もちろん快利の仕業なのだが件のホステスがクズなために店の信用が落ちたのは事実で、顧客側は殊更に店を悪くは言わなかったのだけが幸いだった。だがそれでも接待にも個人的にも使われなくなってしまったのは大きい。
「さっきの電話で四件目よ……風美社長が使わないのに取引先のうちが使わうわけにはいかないですって。そりゃそうね。信用が売りの、この業界でこの失態……そこら辺の顔と若さだけのキャバとはわけが違うのよ……本当に、やってくれたわ」
「マリエさん連絡付かないんですよね?」
売り上げ一位とチーママの二人が心配そうに声をかけて来る。二人にも改めて引き締めるように注意しながら思わず現状を吐露していた。
「そうなのよ。ま、この業界いきなり消える子なんてザラじゃないからね。悪い人と繋がりもあったみたいだし」
そう言うとテレビに流れるニュースに顔をしかめる。それは正にマリエと繋がりの有ったと言う記者が勤めていた雑誌社のビルで火事で炎上後に大爆発してしまったらしい。そもそも歴史のある会社だったのでビルの老朽化も重なったらしいが、とても偶然とは思えなかった。
「まさか……ね。偶然よね?」
「どうかしたのですか? ママ?」
すると店内には店の売り上げ三位、今はマリエが異世界へと行ったので今日からは二位になった女性がいた。
「あら早いわね? ケイちゃん。今日はお昼の仕事は良いのかしら?」
「はい、お弁当屋さんは今日はお休みです。なので私もゴタゴタしてそうなので早めに参りましたわ」
ケイちゃんと呼ばれたホステスにしては余りにも質素な恰好、水色のワンピースにナチュラルメイクの女性が所作も丁寧に答えていた。しかしそれでも魅力的に見えてしまうのは彼女が金髪碧眼だからなのだろう。先々月から色々と訳有りで体験入店をさせたら才能を発揮し、瞬く間に店の売り上げ三位になってしまった。
「そう、助かるわ。そうだ、ケイちゃん、あなた居なくなったマリエの代わりに今日からNo.2よ」
「マリエさんが? それは……不謹慎ですが私にとってはチャンスです。来月からはシフトが減ってしまいますので」
「ああ、そう言えば大学の九月入学試験が受かったのよね?」
「はい。なのですぐに売り上げ二位は陥落してしまいますわ」
そしてNo.1の子達と談笑しながら控室に行く若きホープを見ながら、出来れば大学になど行かないで店に居て欲しいと思ってしまうママだった。入店して来た時から不思議な子だったが先月に整形をしてからさらに驚いてしまった。まるでどこぞの国のお姫様のような容姿になったからだ。元は黒髪のメガネで笑顔が可愛い子だったのだが一気に美女にチェンジしたからだ。とにかく店を立て直し彼女たちを守らなくてはとダイアモンドのママは奮起していた。
「それに、この事件……たぶん彼の仕業だな、いえ、ですわね……案外早く会えそうですわ……」
誰も気付かなかったがテレビのニュースを見ていた彼女は普段の上品な笑いとは全く違う獲物を見つけたような蠱惑的な笑みに変わった事に気付いた者は居なかった。
◇
週刊文潮のデスクは焦っていた。昨晩の爆破事件は人為的なもので自分達は被害者だと社長自ら陣頭に立ったタイミングで、まるで狙い澄ましたかのように警察が経理部の跡地付近から見つけた二重帳簿のせいで同情的な世論が傾いたからだ。
「はめられた!! チキショーめ!! 普段はめてる俺らがはめられた!! 有り得ないんだよ!!」
「デスク、マジで政府なんじゃないですか~? サツのタイミング良過ぎでしょ?」
「警察庁と警視庁には社長のコネで事前に連絡が来るはずなんだよっ!! 新人は黙ってろ!!」
今は貸し倉庫に拠点を移し社運の掛かったこの状況、常に政府や様々な組織とは敵対や協調をして来たがこんな奇襲のような事は初めてだ。それこそ彼は若い頃にはヤクザにも体当たり取材をしてスクープをもぎ取った事も有り、今でこそ芸能デスクだが、昔は社会部記者として最前線で特ダネを狙っていた。
「その俺の勘が告げてんだよ。それより何か情報は!?」
「今SNS見てま~す。やっべぇ、オタクや暇な主婦とか学生にボロクソに叩かれてますよ。『日頃の行いが~』とか、ほざいてますよ」
若手記者が見ているのはスマホとPCでSNSの『呟いタッター』や『インスタブック』で自分達への批判的な意見だった。日頃の彼らの行いから言われて当然なのでそこは理解しているのかそれ以上は文句は言わなかった。
「はぁ、ま~たインターネッツか、足で取材してこい、そんなんじゃ特ダネは取れん」
「はいはい。そりゃそうと足で特ダネを取って来る深見さんどうしたんすかね? 今日はまだ来てないんすか?」
そこで新人は思い出したように快利に異世界へと放置され行方不明になった深見の話題となった。だがデスクは特に気にした様子は無かった。
「さあな、あいつは俺らと違ってフリーランスだからな。社員辞めたと思ったらフラっと特ダネ持って来るからな。今回はとっておきのネタが有るとか言ってたし、それの取材だろうよ」
それもそうですねと言ってその話題は終わり、今は本社を爆破した犯人を捜そうと躍起になっていたデスクの前にジーンズにくたびれたTシャツを着崩したちょい悪親父風の男が近付いて来た。
「よぉ~すっ!! 川本キャップ~!!」
「あ? 俺はデスクだ!! 何年前の話を……ん? お前は加藤か……どうした?」
「いやいや本社爆破された古巣の様子見に来たんすよ。あと何か仕事ねえか?」
頭をぼりぼりと搔きながら長髪気味の髪を弄りながらニヤニヤしながらも目はギラ付いていた彼は紛れもなく飢えたハイエナのようだった。
「ああ、ちょうど深見が居ないからお前で良いか。俺らをはめた野郎を見つけて晒し上げたい、頼めるか? 『平成のゴミ聞屋』よ?」
「ああ、出所して一発目の大仕事だ。俺もそろそろ真っ当に仕事もしねえといけねえからなぁ!!」
こうして望まずとも元勇者の周りはさらに面倒な事態になって行く。その頃、元勇者はどうなっていたかと言うと……。
◇
「カイ!! 二人きりのお勉強会、我慢出来ずに来ちゃ……った……って、何で、なんで!! あんた達がカイと一緒に居るのよっ!?」
俺は新学期から必要になるであろう高校の準備をセリカとモニカとしていた。そして今日は母さんと親父も居たので手続きも一緒にやろうと思っていたら母さんが家を訪ねて来たルリを家に入れてしまったのだ。
「ルリ、落ち着いて話を――――」
「カイを異世界になんて絶対に行かせないんだからっ!!」
抱き着いて離れなくなったルリを落ち着かせ納得してもらうのに一時間もかかった。もう夏休みも一週間を切った、そんな夏の日にルリの汗と制汗剤が、すげえ良い匂いするとか考えながら俺は夏休みの宿題の存在を完全に忘れていた。
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