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転移先がブラック過ぎたので帰ってきたらヌルゲーでした  作者: 他津哉
第2部『元勇者の葛藤とアイドルの秘密』
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第29話「決戦の後は爆発オチとか言うパターンは良く無いと思うんだ」


 白・黒・瑠璃色の三色のオーラを纏って飛び上がった俺はこれで都合三度目の魔王の雷撃を弾き飛ばしていた。新スキルのお陰で神気と魔力も溢れてくるからスキルも魔法も魔術も使いたい放題で戦況は一気に俺に有利に傾いた。ちなみにルリは少し休憩してから俺の後ろで歌いたい放題な感じだった。あ、ウインクしたぞ!?今度は俺だけだな!!よしっ!!


「ふっ、もう終わりか? じゃあ一気に反撃開始と行きますか!?」


「力は同等、いや若干我より上か……しかしっ!! 我は負けん!! この時のために、貴様への復讐のために数万年を生きて来たのだっ!!」


 俺の聖剣と奴の大太刀が激しくぶつかる。俺の神気と魔力さらに深い青いオーラが輝いて奴の闇と雷の混じったオーラを大きく減衰させていた。さっきはこの拮抗の後に背後に回り込まれたり剣圧だけで吹き飛ばされていたりしたけど今は余裕で追いつける。


「そのふざけた面、ぶった斬ってやるぜ!!」


「貴様の七年後だぞ!! 分かっているのかっ!?」


「今度の七年後にはもっと俺はイケメンになってやるっ……よっ!!」


 聖剣を横薙ぎにして自身に時間魔法をかけて奴の背後に回る。そしてバットのスイングのように聖剣の腹の部分で魔王の背中を叩きつけ奴を地上に叩き落とす。だが、奴も同様に時間魔法を行使して地面との激突を避けて俺に破滅の雷を放つ。


「させるかっ!! 勇者なめんなっ!! 『歌姫の守護騎士ナイツ・オブ・ディーヴァ』セカンドスキル!!」


 またしても俺と同時にルリを狙った魔王に対して俺は新スキルの二つ目の効果を発動させる。この新スキルの特徴は今まで俺が使って来た他の勇者専用スキルと違って一つのスキルに三つもの効果が付属している事だった。一つは瑠璃色のオーラ、つまり俺へのバフ、そしてもう一つが魔王の雷撃を防いだ無色透明の防壁だった。


「っ!?」(な、何これ? カイの光の壁みたいなのとも違う……これって?)


「それがスキルの二つ目の効果、歌姫であるルリ、いやこの場合はRUKAの歌が有る限り音波の壁を作り出し護衛対象を自動で守る事が出来る!! これでお前の大好きな人質を取る作戦は出来ないな!! 魔王!!」


「くっ、バカな……まるでこの戦いのために用意されたような、有り得ない、認めるわけにはいかないっ!?」


 魔王の自信が少し揺らいだところで俺は更に畳みかけるように聖剣に炎の魔術を付与して突撃する。あの技を使うような態勢に入る。


「それが有り得るんだよっ!! 行くぞ!! 勇者式剣技!!」


「その術、その構え……貴様っ!! まさかっ!? まさかああああ!!」


 俺は飛び上がり火球を聖剣の先に集めて奴に叩きつけるとそれを魔王が火球を切り裂いて、互いの視線が交差……しなかった。俺は火球を叩きつけると同時に後方のルリの傍に戻っていたからだ。


「なっ!? 勇者はどこだっ!?」


 そして俺は魔王が上空に飛んで距離を取り、こちらを見失っている間に素早く即応式万能箱どこでもボックスから用意しておいたペットボトル飲料を取り出してルリに渡していた。


「あ、これ、いろ〇す。そろそろ喉が辛いと思って、はい」


「ありがと、っふぅ……ステージが吹き飛ばされちゃったから助かるよ~!! ありがと、カイ。結構きつかったんだ~!」


「中学ん時はよく飲んでたから用意しといたんだ……っと!! 話してる最中に邪魔すんなよ魔王~空気読んで空気!!」


 俺は上空からの魔王の電撃を斬り払いながら魔王の方に今さっき切り裂かれたものと同じ火球を五個連続で発射して、更に人間大の大きさの氷柱を生成し魔王に叩きつける。全て上級の魔法ばかりの連続攻撃、あの時は中級までしか使えずに苦戦していたから意趣返しの意味でガンガン使う。だって今は撃ち放題だからな。


「ぐっ!? 勇者の成長は早いと聞いていたが七年で上級魔法を使いこなしているとは……我ですら五年は習得に時間がかかったものを……」


「いや、俺が覚えたのは三年だぞ? お前倒して邪神と戦う前に覚える必要があってな、あいつら時空魔術とか卑怯な魔術ばっか使って来たから魔術以外も鍛える必要があってな!!」


「なんと、やはり恐ろしいな勇者よ!! この肉体を使って分かった事は貴様の底の知れない事よ!! だが今の成長途上の貴様になら!!」


 猛り狂う闇の稲妻(カオス・ライトニング)を放たれたので俺は聖剣で切り裂きながら防護魔法で自らを守り更にその防護魔法そのものに超強化魔法ドーピングを重ね掛けする。これくらいしないと凌げないのが魔王の最大の超級オリジナル魔法の防ぎ方だ。全てを拒絶する聖域(引きこもりの味方)なら単一で防げるが、それ以外だとこのようにしないと防ぐのは不可能だ。《《今の》》俺ならば。


「ルリ? 今から俺が奥の手出すから後ろの姉さん達のとこに走って二人から離れないように頼めるか?」


「え? カイ? それってどう言うこと?」


「あいつを一撃で倒すにはこれしか無いから。頼むよ」


「うん……分かった!! 頑張って、あと後ろで歌うから!!」


 そう言うとルリは後ろの姉さんたちが居る結界の近くに陣取った。それを確認すると俺は先ほどからうるさいガイドに向かって言う。


(ガイド!! 準備は!?)


『はい。『歌姫の守護騎士ナイツ・オブ・ディーヴァ』の発動と同時に、いつでも問題無く可能です……加護解除……実行可能です!! どうぞ!!』


「よし!! 勇者権限において対象者の加護を全て解除!! 我が元に戻れ!! 俺の全ての力よっ!!」


 その瞬間、後ろの姉達の結界、さらに今までこのステージに張られていた結界などが全て解除され、更にルリや姉達も一瞬輝くとその体から何か白いオーラが出て勇者である俺の元へ戻って来る。それは俺が与えていた加護の神気や魔力の塊だ。


「やっぱ一気に戻すのはキツイなぁ……だけど!! ルリの歌のお陰で行ける!!」


 髪の色も青く輝いていたものが更に発光して深い青から明るいライトブルーに変わり、瞳の色も同様の色に変化する。完全解放形態の完成だ。今は更に新スキルの効果で三つのオーラが俺を照らし出している。


「なっ、バカな……何なのだ。この膨大な魔力、神気……どうなっている……桁が違う……だと」


「お前が居なくなった後に俺の加護は更に強くなってさ、王様に無茶ブリされたんだよ。『王国民全てをお前のスキルで守れ』ってさ……無理だと思った。でも二年もすればさ、魔力量もそして神気も倍々ゲームみたいな感じで増えてさ……」


 そう、邪神と戦う前に何度も出されたお使いクエストと言う名のレベリング。魔王よりは弱いがそれでも伝説級のモンスターやそれに準ずる魔物、それらを倒して来たのは俺のスキルを全国民に付与するため。そして付与する度に俺の中の力は少しづつ分配されて減って行った。王国民のために加護を与える度に俺は弱体化して行った。


「な、何を言って……お前……っ!? ま、まさか……」


「そう、俺の今の魔力量は邪神討伐時と同じ、少しだけ強い状態で七年前の体になってる。だからスペックだけ見たら四年前の時と同じ……その時には王国民約三千万人弱、その全員に対して俺はスキルで加護をしていたよ」


 人口が三千万、大体モンゴル国と同じくらいの人口だ。それを支えるだけの力を今の俺は有していた。だけど俺はこの世界に帰って来た時に母さんとポロ、そして姉さん達とルリの五人に加護を与えた。その際に今の俺と《《同等の力》》を五人に渡していた。だからエリ姉さんは分子分解されそうになったし、ユリ姉さんやルリは四天王に襲われても俺と同等の防御力を発揮して攻撃を防げた。


「つまり、俺は力を六等分にしてその内の五等分を大事な人達に分けていた……だけどそれじゃ、お前は倒せない……だから、それを全部戻した!!」


「ならば……今の貴様は……」


「ああ、単純計算して六倍、さらに六倍の通常の状態で歌姫の守護騎士ナイツ・オブ・ディーヴァが発動している。このスキルは俺の素のステータスが上がる。つまり更に上昇する」


 そう言った瞬間に俺の力は更に勢い良く上がった。ルリが歌い始めたからだ。ルリが後ろに居れば発動するスキルだけど歌っていれば当然、より効果は上がる。


「は、ハハハハハ……では我は貴様の肉体を使ったのに、最初から負けていたと言うのか……くっ、ハハハハハ、なんとなんと滑稽な……我の数万年は……」


「そうでも無い。今の姉さんやルリは俺の加護も何も無いから丸裸だ。お前が攻撃すれば吹き飛ぶだろうさ」


「それをなぜ教える? あぁ……なるほど、それで青の歌い手を走らせたのか……あの女のスキルかっ!?」


 そう、今のルリの周囲には歌姫の守護騎士ナイツ・オブ・ディーヴァの第二の効果の防壁が有る。さっきまでは俺の補助が必要だったけど本来の勇者カイリに戻った状態の俺のスキルと言う扱いだから猛り狂う闇の稲妻(カオス・ライトニング)ですら退けてしまうだろう。


「さて、何か言う事は有るか? 魔王?」


「ふっ、我は魔王!! 魔王サー・モンロー!! 例え追い込まれようと最後まで生き足掻いてみせる!! ただでは死なんぞ勇者よっ!! 我の最大の、全ての魔力を持って貴様に一矢報いる!! 猛り狂う闇の稲妻(カオス・ライトニング)!!!」


 奴のおそらくは俺の七年後の肉体の残った全ての魔力と自らの生命力さえも削って最後にして最大の一撃が来る。今までの比較にはならない程の威力だ。それでも今の本当の勇者に戻った俺には遠く及ばない……だから。


「決着を着けよう……魔王サー・モンロー!! お前の執念に敬意を表し、俺の持てる最大の力で、そして新しい勇者の技でお前を倒す!!」


「簡単に出来ると思うなよっ!? うおおおおおおお!!」


「いいや!! 出来るさ!! 歌姫の守護騎士ナイツ・オブ・ディーヴァのサードスキル……行くぞ聖剣っ!! 響かせろっ!! 歌姫の調べの如く!!」


 俺の叫びに答えるように聖剣の刀身が白銀から深い青色(ラピスラズリ)に変わり同色のオーラで輝き出す。目の前には最大級の猛り狂う闇の稲妻(カオス・ライトニング)が迫る。だけど俺の心は落ち着いていた。後ろから聞こえる俺の歌姫の歌声と想いが俺の心を震わせる。だから絶対に負けない。


「勇者式剣技……受けろ、音速の一撃を!!」


 ラピスラズリ(深い青)に光る聖剣を正面から片腕で一閃すると最初、キィンと耳鳴りのような音が鳴るとそれだけで闇の雷は吹き飛ばされ、さらに俺は改めて両腕で瑠璃色の聖剣を振りかぶるように頭上に掲げ上空の魔王に目掛けて振り下ろす。距離は数十メートル有るが、そんな距離はものともしない。


「ふぅ……『魔断・瑠璃色の一閃』!! 行けえええええ!!」


「ぐぅっ、ううっ……クハハハハハ!! 今度は、マシな技で……良かったぞ、勇者よ!! 見事っ……見事だあああああああ!!」


「お前との因縁もこれで、お終いだ……今度こそ成仏しろ魔王サー・モンロー!!」


 極大の瑠璃色の斬撃が音速の刃となって一撃で魔王サー・モンローを捉え、真っ二つにし、そして消滅して行く。奴は断末魔の叫びを上げながらどこか満足気に滅んで行ったように見えた。自分と同じ顔をした人間を真っ二つにするのは少し気が引けたが、あれは未来であって過去の俺の残滓だ。


「だから……七年間ありがとう。そして、さようなら。勇者カイリだった者……お前との七年間、俺は忘れないからな……もう一人の俺……」

 




 そして俺は魔王と俺の元の肉体の消滅を確認すると聖剣を鞘にしまって三人のところに向かって歩き出した。近付いて行くと三人は何やら話し合っていて少し入り辛い雰囲気だった。


「それで私たちの体が一瞬光ったのね……待って、じゃあ今までの快利って六分の一の力で四天王とかと戦ってたの!?」


「カイがさっきの魔王に言ってた事がほんとなら、そうなりますね……って絵梨花先輩!?」


 見てるとエリ姉さんがルリに頭を下げていた。なんか最近はエリ姉さん謝ってばっかだな。


「瑠理香、済まない。助けに行こうとしたが恐怖で結界から出られなかった……」


「いえ、大丈夫ですよ何だかんだで助けてもらったんで……ね? カイ?」


「そうだよ。むしろ姉さんがあのタイミングで出て来たらルリと姉さん二人を同時に守らなきゃいけなかったから結界内で待機してくれてて助かったよ」


 そう言って三人を見て俺は即座に勇者の加護を思い出して加護の付与をガイドに指示した。これでまた俺の力は六分の一に戻る。昔は三千万分の一だった時代も有るからだいぶ力は残っている。だからそこまで気にはならない。


「あっ、光った。快利? これってまた私たちに?」


「ああ、ま、今回みたいなマズい事態は、もう二度と起きないだろうからね? さっさと戻すに限るよ」


 フラグじゃないから、これからは俺の人生は勇者の力でヌルゲーになるから!!これ以上の強敵なんてもう、絶対に出ないはずだから……たぶん。


「ありがと、カイ。あ、あのさ私……」


 そこで少し言い辛そうにしている黒髪のRUKAいやルリを見る。そう言えば色々と大変な事があったから忘れてたけどコイツ俺の推しのアイドルだったんだ。ま、怪しいとは思ってたんですよ!!本当だよ!!気付いたのは会場の諸注意のアナウンスの声聞いた時だったけど……。


「あぁ、そう言えばそうだった……ルリさ、もしかして今日話そうとしてたのって?」


「う、うん。ライブ終わったらアプリで連絡してさ、楽屋、来てもらおうと思ってたんだ……そこで全部謝るつもりだったんだ……あとこれ取るね?」


 そう言うと頭を弄り出すと黒のウィッグを取り外していつもの茶髪に戻った。やっぱこう見るとルリだなぁ……目の色と髪型でここまで別人になるんだな。


「こう見ると本当に瑠理香だな……いやしかし、この間会った時に見抜いたとは言え、その衣装を着ているとなおさらの事、アイドル本人と納得させられる」


「ああ、そうかエリ姉さんは俺の部屋のルリのポスター見てたからか、でも実はこの衣装少し違うんだよな~。下から見てて思ったんだけどスリットの部分とか作り違うし、あとルリ今日は見せパンの柄がいつもとちが――――「少し黙れ、キモオタ」


 ヒドイ、俺は一応ファン、さらに言えば消費者、お客様だよ。もっとファンサービスしてくれないかなぁ。と、思って見るけど凄いムスッとしているからどうしようとユリ姉さんを見るとため息をつかれる。


「はぁ、取り合えず快利は落ち着きなさい。瑠理香も気持ちは分かるけど……それよりも快利さ、あれ大丈夫なの?」


 そう言うとユリ姉さんは俺がドームの天井に明けた大穴を指差す。それは俺が魔王を真っ二つにした際に新技の余波で吹き飛ばした部分で、天井の三分の一を吹き飛ばしていた。


「あ~マズイっすね……これ、崩れるね……」


「うん? だが待て快利。お前なら修復とか出来るのでは無いか?」


「いやぁ……俺も今の戦闘で魔力すっからかんで、あと二回分くらいしか転移も出来ないんだよなぁ……」


 そうなのです。実は魔力は本当に無いんです。一応奥の手エリクシルがぶ飲みと言う方法も有るけど、あれは体への負荷がかなりかかる上に今の体では出来ればやりたくない。


「待って!? 待ってよカイ。つまり……このままじゃ」


「うん。ま、皆にスキルを戻したから大丈夫だと思うけど、そしたら人型にドームの一部が分子分解されるね……だから、取り合えずルリん家に逃げようと思うんだけど、どう?」


「うんっ!! てか、天井の一部ピキピキ言ってるし!! 早く!!」


「ああ、じゃあ……って三人を同時に運んだ事無いな。どうするか……」


 急いで転移するために聖剣を鞘から抜き、ワームホールを開けたまでは良かったけどそこから先が問題だった。今までは二人、単純に両手を掴んで移動していたが、今回は三人同時だ。俺は異種族じゃないから手は二本しかない。そして転移するには俺と体が物理的に接触している必要が有り、出る時まで物理接触したまま、握手などをした状態で抜けなければならない。と、考えている内に二人の姉が両腕をガッチリ掴んで最後はルリが俺の背中に負ぶさるように抱き着いて来た。


「カイ!! おんぶして!! これで準備OKだよ!! 絶対離さないから!?」


「ああ!! だが少し待ってくれ感触が全然伝わらない!! 今、鎧脱ぐから――」「いいから早くしてっ!! このエロオタ!!」


 鎧越しで何も感触が分からない……と、心で泣きながら俺のよこしまな目的は受け入れられる事は無く俺は三人と一緒に転移した。





 何とか転移でルリの家まで戻って来た俺たち四人はボロボロで俺は装備を全部しまっていて、ルリは着替えると言って私服に着替えて戻って来るとお茶を淹れてくれたので四人で座り込む。


「それで……何から話すのよ?」


「ルリと俺の話は……二人の方が良いよな?」


「う、うん。出来れば……それに先輩たちには私の正体話してるし……」


 そう言うと再び沈黙してしまう俺達だった。そこでルリが思いついたと言わんばかりに手をパンと叩いてテレビを付けると言った。


『現場では現在も懸命な救助作業が――――』


『お願いします~!! ルリ姉さんを助けて~!!』


「「「「あっ……」」」」


 テレビでは先ほどまで俺が魔王と戦っていたドームが倒壊し、さらに一部施設からは火の手が上がっている様子が映し出されていた。そう言えばスパークとかしてたな機材が、さらにテレビの画面にはAYAさんも加わってMIMIさんと一緒に懸命に訴えている。


『まだRUKAが!! それに中に数人、人が残ってるんですっ!!』


『同士快利がまだ中に!! いつもRUKAのパンチラを狙ってただけで悪い奴では無かっ――――ピッ』


 なんか同士が余計な事言ってるから素早くテレビの電源を切ると俺は最後の力を振り絞って勇者モードになって場の空気を変えるという手段に出るしか無かった。


「くっ……なんてこった!? みんなの為にと安易に転移し――――「カ~イ?」


「なんだルリ? この状況は一度現場に戻って――――「あの、さ……さすがに地下時代の時は覚悟してたけど、あんまりそう言うのは……ね? 立派な犯罪だよ?」


 いつものように『変態!』みたいなトーンで叩かれるかと思ったら真面目な顔でこっちを見て少し残念なものを見る目で見られている。二人の姉も少し頭を抱えているようで、この状況を乗り切るのは不可能と判断した。だから、俺の取る行動は一つしか無い!!そう、最終手段だ!!



「ごめんなさい……出来心しか有りませんでしたっ!!」



 見ろ!!これが勇者の土下座だ!!キチンと誠意を見せれば示談だって勝ち取ってみせるさっ!!勇者が盗撮で捕まる訳にはいかない。だから、いくらでも土下座してやる、異世界で何度もしてる内にフォームが馴染んだんだ!!


「あ~瑠理香、本当にうちの義弟おとうとがゴメン。ほんと、いや同性として若干引くけどさ……」


「快利、お姉ちゃんは悲しいぞ。パンツの一枚や二枚など私に言えば!!」


「絵梨花も落ち着いて、快利の事ですぐに暴走しない!!」


「そっか……RUKAのはダメだけどプライベートなら……」


「あんたもアイドルを忘れて妄想しないでっ!! 快利!! あんた今、ワンチャン有るかもとか思ったわね!? 反省しなさいっ!?」


 その後、意外にもユリ姉さんがその場を上手く抑えてくれて俺は一時間の正座の後に再びアイドル衣装に着替えたルリを現場に送ると言う事で落ち着いた。そして二人でライブ会場近くの林に転移した。これで本当に魔法も魔術も使えないけど仕方ない。帰りは駅まで歩いて電車だな。


「じゃ、カイ……私の話、今度こそ全部話すから、だからっ!! 明日は無理かもだけど連絡するから……その時は私の話、聞いて欲しいんだ」


「分かったよ。ウィッグとカラコンは大丈夫? ルリ、いやRUKA?」


「うん大丈夫だよ。じゃ、行って来るね!?」


「ああ、頑張れ!! 俺の歌姫さん?」


「う、うんっ!!」


 そう言ってルリは今度こそ振り向かずに歩いて行った。事前に他のメンバーと関係者には連絡しているのですぐに合流出来るようだけど、やはり心配で見守っていると林を出た所でAYAさんとMIMIさんに抱き着かれていた。これで俺の役目は終わり。全ての力を使い果たして完全回復はたぶん明日の昼くらいだろう。だからこの時この世界の、この時間軸に新たに転移して来た者が居たなんて気付けなかった。

誤字報告などあれば是非ともよろしくお願い致します。


ブクマ・評価・感想もお待ちしています。お気軽にどうぞ!!


この作品はカクヨムで先行連載中です。

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