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第14話「帰ってきた元勇者は、やっとヌルゲーを実感する」



 午後からはユリ姉さんの希望でゲームセンターに行く事になった。仁王立ちで鼻息を荒くしたメイドが入店すると若干周りがザワザワしたが、すぐに興味を無くしたのかそれぞれの筐体に戻って行く客たち。ちなみに姉さんがゲーセン内では魔法を使わなくて良いと言ったので認識阻害の魔法は使っていない。


「まずは……これよ!!」


 入ってすぐに見つけたそれはクレーンゲーム、ぬいぐるみやらフィギュアやら高価な物の中ではゲーム機なども入っていたりするアレだった。


 ここには、ぬいぐるみ系とお菓子系しか無いようだ。そもそも陰キャでボッチだった俺はゲーセンは初だ。一方で姉さんは慣れた様子で……。


「ご主人様!! 取り合えずここは任せたわ!!」


「姉さんさぁ……」


 と言っても魔法や魔術禁止だよなぁ……仕方ないので五〇〇円を入れて六回やってみたが……その結果。


「無理だろこれ……」


「よくネットで動画見たりするけど、引っ掛けるんじゃなくて押したりズラしたりするらしいんだけど……やっぱ無理かぁ……」


「上手い人は上手いらしいけど……初心者の俺には無理だよ」


 仕方ないので別な場所に行くとレーシングゲームにカードゲーム、それにシューティングと色々有るがどれもしっくり来ない。さらに上の階に行くと煙臭くて姉さんがNGだった。


 急いでさらに上の階に行くと、少し前に流行った艦船擬人化のゲームやアイドルの音ゲーなどを中心にキャラゲーのコーナーがあった。ブラブラして遊べるものを探していたら、それは奥にヒッソリとあった。


「あ、エアホッケーだ……」


「ん? ああ。昔なんかテレビ番組でやってたよね……」


「うん、小さい頃よく絵梨花と見てたなぁ……月曜日は平和だったから……」


 平和?よく分からないけど姉さんが興味有りそうだし聞いたら少し恥ずかしそうにしながら姉さんはやりたいと言ったので、さっそくプレー開始してみたのだが……。


「勇者なら手加減しなさいよぉ……」


「えぇ……俺だって初めてだよ?」


「石〇ゃんはホッケー上手だったのね……」


 スコアは10-2、10-1と二回戦やったからか喉が渇いたので俺は自販機で飲み物を二人分買って来る。ついでにトイレも済ませて戻ると……。


「う~ん。これは、お約束だなぁ……」


「快利ぃ~」


 忘れていたがユリ姉さんは陰キャでラノベオタと言うより二次元オタ? で今はメイドのコスプレなんてしているけど美人だ。


 頭の色も金髪に近い明るい茶髪にしているけど残念美人だ。こんなとこ(ゲーセン)なんて来たら高確率でナンパに遭うなんて分かってたじゃん。


「うぇ~い!! カレシ君みってるぅ~? 今から大事なメイド服のカノジョ相手に調子乗ってるみたいだから――ぎゃああああああ!!」


「う~ん。死にたいのかな? 俺の姉さんで今はメイドに何してくれてんの?」


 取り合えず時間魔法で高速で移動してナンパの人に軽く拳を一発。最近俺はやっと気付いたんだけど、スキルや魔法を直接人に撃つのはマズかった。


 スパークとかバーンとかは一般人相手に使用すること自体がアウトだった。あとは姉さんを一人にするのはやはり危険だったと気付いた。《《最悪の保険》》は、かけて有るから問題は……ん? なんか姉さんと二人組のナンパの片割れの人が固まってる。


「あ、快利、違うのこの人たちは……」


「――俺たちがホッケー……教えて……あげようと……したのに……ガクッ……」


「うぇ~い、会長おおおおおおお!!!」


 あ、これは……いいタイプの陽キャの人達だった? いけないと思って近寄って回復魔法を使う。ついでに服に触れながら医療魔術も使って体の細かい傷とかも治してあげた。なんかすいません。


「えっと快利、この人たちなんだけど……」


「うぇ~い。俺は『エアホッケー推進して委員会』の会長、根戸良ねとら獅子れおでぇ~」


「同じくぅ~……副会長のぉ、視退みびき良男よしおだっ!! よっろしくぅ~!!」


 どうしてだろうか……そこはかとなく残念な感じのするこの二人は、名前から漂う残念なオーラとは対照的に二人は、そこそこの陽キャの大学生でエアホッケーを愛する二人組だそうだ。


 俺が一方的に姉さんをエアホッケーでボコってたのを見て、ぜひ姉さんにホッケーを教えて俺をギャフンと言わせたくなったらしい。


「だからさぁ、カレシじゃなくて、弟くん。俺たちペアと君たち姉弟ペアで戦わないかい? うぇ~い!!」


「せっかくだし良いんじゃない? どうする姉さん?」


「やるっ!! せっかくだから快利をギャフンと言わせたい!!」


 姉さん?聞いてた? 俺とペアなんだけど……。その後、日が暮れるまで付き合ってくれた陽キャの二人と別れると、すっかりホッケーにハマってしまった姉さんはまた来週も俺と来ると宣言したので来週も姉さんに付き合う事が確定してしまった。


「ふぅ、来週は勝てそうね!! 快利!!」


「だと良いけどね~。あの二人強かったね。俺も二回しか勝てなかったよ」


 そう、スキルや魔法に魔術なんて一切使わなくても、そもそも俺の身体能力はかなり高い。来る時のバフの魔法のおかげだ。


 ちなみにあれは一度使うと永遠に効果が続くタイプの魔法で、解ける方法は術者の死亡なので俺が死なない限りバフは解けない。


 そのバフ付きの俺が負けたんだから凄いテクニックと練習をしているのだと分かった。そして帰り際に入り口付近のクレーンゲームのコーナーに寄ってみると……。


「あ、落ちる寸前だ……」


「やろうっ!! 快利!! 今の私なら行けそうな気がする!!」


 姉さんは、さっき俺が狙っていた某タレたパンダの少し大きいぬいぐるみを狙っているようだ、俺も六回やって少しズラしていたけどあの後も挑戦者が出たようで動いていた。あと一押しで行けそうな感じはする。そしてユリ姉さんは五百円を入れた。


「よしっ!!行ける!!」

「まだまだいける!!」

「行けるはずだよ!」

「行けるはず……」


 そう言って四回目の挑戦が終わっていた。あと二回、そして今、五回目の挑戦も終わっていた。ラスト一回、俺の方も思わず力が入る。


「お願いっ!!」


 クレーンがゆっくり動く、位置は完璧そしてパンダの胴体を掴んだけど、アームが弱過ぎて落ちそうになる。だから思わず使ってしまった。


 魔術『性質変化メタモルフォーゼ』、その名の通り物を性質を変えてしまう魔術だ。今回はクレーンゲーム機に触れて、狙いはアームの強さにして変化させてしまった。その結果ガッチリと挟まれたパンダが落ちて来た。


「あ……取れた、けど……これって……」


「やった……凄い!! 凄いよ姉さん!!」


「うん……やったよ!! 人生初ゲットよっ!!」(ありがと、快利)


 何とかバレずに済んだ。姉さんが単純で良かった……落ちて来たパンダを姉さんが回収している間にもう一度筐体を触ってアームの力も戻しておいた。


 取り合えずこれで一安心だな……。俺達はそのまま荷物と戦利品のパンダを抱えてゲーセンを出て家の前まで帰って来た。


「ね? 快利?」


「な~に? 姉さん?」


「今日はありがと。ほんとは私の罰だったのにあんまり罰っぽく無くて……むしろ楽しんじゃって、ちゃんと『ご奉仕』出来てたかな? ご主人様?」


 そう言えばそう言う名目で、デートしてたんだ。俺も楽しかったし姉さんも楽しんでくれてたから良いと思ってた。


「出来てたんじゃないかな? 俺は楽しかったよ? だからさ……もう良いんだよ姉さん? 昨日さんざん泣かせたし、謝ってくれたんだから……」


「それは……ダメだよ。五年近くもあんたに酷い事言ってて、信じてあげなくて、おまけに昨日は助けてもらって、そんな都合の良い事……出来るわけ……」


「じゃあ……俺の『ざまぁ』決めたよ。姉さん、俺とちゃんと姉弟きょうだいになってよ。初めて会った時も、それに今日まで一度もなれなかった姉弟にさ。姉弟ならこんな失敗談も貸し借りも良く有るんでしょ? エリ姉さんとは色々有るんじゃないの?」


 俺が二人に泣かされた時とか母さんに言いつけて叱ってもらった時とかに、たまに二人の失敗談を聞いた事があった。二人で色々隠し事もしたりしてたらしい。


「それは、色々貸し借り有るけど……でも、それじゃ……私だけ得してる」


「ならもう一つ、明日から俺の朝ごはんの用意とか手伝ってくれない? 姉さん実は料理そこそこ出来るでしょ? 思い出したんだけど小さい頃まだ家事やってた時に作ってくれたカレー、あれ結構好きだったんだ」


 まだ小学生の頃、子供だから料理のレパートリーは少なかった。だからカレーと言う日が続いた時が多々あったんだ。その時に三人の中で姉さんの作ってくれたのが一番美味しかった。


「本当にそれで良いの? 私すぐ調子に乗るし色々ダメなとこ有るよ? 絵梨花や快利と違って頭もそこまで良くないし、また迷惑かけるかも知れない……」


「良いよ。それくらいドンと来い。だって俺は……チートの元勇者だよ? 七年前とは違うんだよ?」


「そっか、あんたと会ったのってもう七年も前だっけ……?」


 ヤバイ。つい七年前とか言っちまった……厳密には八年前なんだけど……気付いてないのか……?ま、過去改変してこっちに戻ったとかはいつか話せば良いか。一応ユリ姉さんだけが俺の能力知って……あ、もう一人教えちゃった人が居たんだ。


「ああ、大体それくらい、だ・か・ら!! た~まに胸が揺れてんのチラ見しても良いでしょ? ユリ姉さん?」


「あんたねぇ……そんなのいつもでしょ? 部屋の前で見てくる癖に。分かった、良いわよ!! 明日から朝の用意手伝う。それと今夜はカレー作ってあげる。だから野菜とか切るの手伝ってくれる? 快利?」


「うん。分かったよユリ姉さん。今から楽しみだ!!」


 家の前でそんな話をしてるから結局エリ姉さんに見つかって二人で家に入ってすぐに晩ご飯の用意を始めた。


 ユリ姉さんが久しぶりに作ったカレーは少し甘かったけど懐かしい味がした。こっちに戻ってからの初カレーは凄い美味しかった。





 そして俺は今、部屋のベッドで横になっていた。この土日で色々あったけど僅か数日で快適な環境になった俺の人生。


 幼少期から高校二年までは家と学校でヒドイ日々を過ごしていたら異世界に転移させられて今度はそこで七年間地獄を見た。そして今は七年前に戻って青春を謳歌しようとまずは家庭内の問題を解決した。


「姉さん達とは何だかんだで仲良くなれたし、学校でのイジメは大人しくなった。風美は相変わらず不穏だけど俺の力さえあれば何も出来ないだろうし……これはいよいよ俺の人生ヌルゲー時代が来たのでは? 後は《《念願のカノジョ》》が出来ればなぁ……」


 こんな感じで調子に乗る元勇者だが彼は肝心な事を忘れていた。そもそもこの元勇者はそこそこ出来る人間で頭の回転は戦場においては凄まじい速さなのだが、それ以外の平和な世の中では鈍い、朴念仁、フラグをへし折るなど、違う意味での主人公属性を発揮してしまうのだ。


 ちなみに今の一言で両隣の部屋の姉二人が即座に壁に耳を当てて盗み聞きしていたなんて事には一切気付いていない。家族を信用しているので全ての勇者系のスキルが家の者には発動しないのがかえって仇となっていた。

 

「あ、そう言えば……忘れてた……」


 そこで思い出したのは昨日出会った憧れのアイドルで今も部屋にポスターを張って崇拝しているアイドルRUKAの事だった。


 昨日、夜に連絡すると言われていたことを今、思い出したのだ。急いでアプリのチェックすると通知を切っていたせいで気付かなかったが凄い量の通知が入っていた。


1日前【今日はありがとうございました。本当に助かったよ】

1日前【既読付いてないかな?連絡待ってます】

1日前【忙しいんですか?連絡が欲しいです】

23時間前【少し遅くなっても連絡待ってます】

22時間前【明日はオフだからいつでも連絡下さい】

21時間前【少し眠れないから連絡しました】


 これは通知のほんの一部で、それから一時間ごとに五通づつ通知が入っていた。そして今、俺が確認したので相手側に既読が付いたのだろう……。すぐに通知が来た。


十秒前【今、見たよね!?見てるよね?】

三秒前【既読無視じゃないよね?】

たった今【既読付いて無いから無視されて無いと思ってたけど良かった~】


 これは……推しに心配されてる。すぐに返信せねば……。


【お返事遅れましたRUKAさん。実は先ほどまで家族と出かけていてアプリのチェックをしていませんでした。通知も切っててすいません】


たった今【気にしないで、それより通話モードにしても良い?話したいな】


【僕で良ければぜひとも!!】


 そしてそれを送った瞬間に着信が来たので俺はすぐに通話ボタンを押して彼女の声を聞いた。


『もしもし、えっと秋山くん?』


『はいっ!! お、お久しぶりっす!! RUKAさん!!』


『久しぶりって、まだ昨日振りだよ? そうだ。昨日はありがと、本当に助かったよ。全部あなたのおかげよ。ありがと』


 推しにこんな事言われたら全財産をライブ申し込み券付きCDに出すチョロい元勇者が居るって聞きましたけど、どこに居ますか? はい、ここに居ます!! 今なら世界も救える!!とか、一人で脳内でお祭り騒ぎの快利だが、この後の一言でさらに狂喜乱舞する事になる。


『その、さ。私は学業とアイドル業を一緒にしてるんだけど、学生の知り合いが意外と少ないんだ……だから時間が合ったらで良いんだけどお礼とお話とかさせてくれないかな?』


『え? いやいや別にお礼だなんてそんなそんな!! 全然大した事じゃないですって!! RUKAさんのためならワームホールの一つや二つ余裕で開けますよ!!』


『あはは……それは嬉しいけど、私もお礼がしたいんだ。それと今のあなたに凄い興味も有るの。だから、会ってくれないかな?』


『はい、喜んで!! はい、では明後日に神社で15時半に!! はいっ!! ぜひ!! お待ちしています!!』


 その後、一〇分ほど喋っているとユリ姉さんから壁ドンをされたので泣く泣く電話を切ると夢見心地だった。そして部屋のポスターを見る。


 この美少女とさっきまで話していたんだ……。神社でまた会えるんだな。よっし!!明日も朝が早いし、寝ようと思ったらスマホに通知が来ていたRUKAさんだった。


【おやすみ。楽しみにしてるね? デート】

【はい、おやすみなさい】


 デート!! デートですよ!! ある意味今日ユリ姉さんと初デートしといて良かった。向こうはアイドルだしきっとデート慣れしているはずだ。少しでも経験値を積んでいて正解だった。


 それにしても転移前ならRUKAさんとデート出来るなんて考えられなかった……戻って来て本当に良かったぁ……。





 翌日、起きて下の階に行くと既にユリ姉さんが待機していた。メイド服で……。え?何でまたその格好してるの?


「今日は二限からだからね。それにこれが一番ピッタリ体に馴染むから部屋着にしたのよ?エプロンも付いてるし水場の仕事には持って来いでしょ?」


「確かに……じゃあ姉さんはまたサラダの用意と、お米はすぐに炊けるから……。今日は残りのカレーだよね? 母さん用に軽めのメニューとか用意しておく?」


「あ、それと絵梨花もたぶん昨日は白米とか言ってたしカレー以外の方が喜ぶわよ? カレーは私と快利で食べよ?」


 そしてユリ姉さんの言う通り準備すると完璧だった。意外と周りを見ていて実は働けば出来る子だったんだなユリ姉さん。


 そして先に俺はご飯を食べ終わるとすぐに弁当の用意を始める。土日は一緒に食べるけど平日は大体このパターンだ。だから、こっちに戻って来た時にエリ姉さんキレてたんだね。


「おはよう、快利!! 私は納豆ごはんを所望する!!」


 エリ姉さんが元気よく入って来て席に着くと、後ろから少し寝坊した母さんが続いて入って来た。少し眠そうにしている。


「はいはい。出しといたから自分で混ぜてね~。ご飯は炊けてるから今用意するよ」


「快利。卵焼きそろそろ作って、私がご飯とかはやっておくから!!」


 言うとユリ姉さんがエリ姉さんのご飯をよそいながら弁当箱のご飯も詰めてくれた。さり気無く自分の弁当箱のご飯を多くしてる。そして素早く用意して準備を終えるとエリ姉さんは登校の時間になった。


「快利!! なんか一昨日からユリ姉ぇとばかり仲が良さそうだから今日からは私と一緒に登校しようっ!!」


 えぇ……姉さんと一緒に登校なんてしたら面倒な奴らに睨まれるから嫌なんだよなぁ……って、待ってエリ姉さん今なんて言いました?


「今日……から? って言った?」


「ああ、今日《《から》》だ!! さあ行くぞ!!」


「ふふっ、こうなったら聞かないわよ? 絵梨花って……良いんじゃない? あと一年くらいなんだし一緒に登校してあげれば?」


 でもなぁ……そりゃエリ姉さんと一緒に登校はそこまで嫌じゃないけど、少し照れ臭いって言うか、色々緊張もするって言うか……そう思ってユリ姉さんの方をジト目で見てたらユリ姉さんが近づいて耳元でボソッと言った。


(今度、部屋でなら青い方とピンクの方のメイド服も着てあげるから頑張ってね?)


「ユリ姉さん、ごめん……俺は……行くよっ!! 高校でも魔王城でも邪神の神殿でもっ!! 姉さんのメイド服のために!!」


「なにやら不穏な単語が聞こえたから道すがら色々と聞かせてもらおうか……快利」


 そんな事言われたりしたら絶対に素直に言わないけどね?だからここは打つ手は一手しかない……。


「ここから……ここから、出て行くうううううう!!! じゃ、ユリ姉さん、母さん、いってきま~す!!」


「こらっ!! 快利、待つんだっ!! お前の好きなコスプレ衣装についてキチンと私に聞かせるんだ!! メイドか!? そんなにメイド服が良いのかっ!?」


「「行ってらっしゃ~い」」


 二人に見送られて俺は少しだけ走ると、すぐにスピードを落としてわざとエリ姉さんに捕まる、昔は掴まれたら体に関節キメられて痛かったけど今はビクともしない。


 むしろ少しじゃれ合いながら行くと姉さんの柔らかい部分が当たって逆に良い思いが出来るくらいだ。美人な姉二人とは何だかんだで仲良くなれたし、何なら少し好かれたまで有るし、憧れのアイドルとは明後日にデートの約束。


(今、正に世界は俺を中心に回ってる我が世の春だ!! もうすぐ夏だけど……)


 これはもう俺は人生勝ち組なのではないだろうか?絶対そうだ!!そうに違いない!!だからこれからは俺の時代だっ!!


 な~んて思っている勇者だったが、同じ電車内で虎視眈々と自分を狙っている人間が居るとはこの時は全然気付いていなかった。なぜなら今コイツは浮かれているからだ。

誤字報告などあれば是非ともよろしくお願い致します。


ブクマ・評価なども有ればお待ちしています。


この作品はカクヨム様で先行して投稿しています。

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