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第12話「やめて!勇者のくせにあんたも私に『ざまぁ』する気なんでしょ!?」

 部屋に二人で戻って来るとまず最初にした事は玄関に靴を置きに行く事だった。今度からいつもの箱に外に突然転移しても大丈夫な用意とか入れておこうかと考えていたら、玄関が開いてエリ姉さんが帰って来たので久しぶりに三人が揃った。


 俺とユリ姉さんを見ると一瞬驚いた顔をした後に『ただいま』と言われた。それを二人でぎこちなく『おかえり』と言っていると後ろから母さんが来て皆でリビングに戻る。


 あれ? これはもしかして俺のハードモード人生がついに終わるのだろうか……やっぱ勇者になってこっちに帰って来てからはサクサクだな……。


「でも料理は俺の仕事なのは変わらないのね……」


「じゃあ快くん!! お母さんが手伝って――「やっぱこれからは男の料理の時代だよなぁああああ!! 料理するの超楽しいいいいい!!」


「あんた、実は結構苦労してたのね……知らなかったわ」


 エリ姉さんは部活の汗を流すとか言って一番風呂と言ってシャワーに行ってしまった。母さんにはポロのブラッシングをお願いしてキッチンからご退場願ったので今ここには俺とユリ姉さんしか居ないから前から疑問に思っていた事を聞いてみた。


「ん? 何よ?」


「いや、ユリ姉さんって昔は一緒に料理とか作ってたから料理できるよね?」


「まあね。調理実習とか普通に作ってたし……でも今はもうやってないから正直分からないかな?」


 じゃあ手伝ってくれないかな~?とか思ったけど、そんな事は無かった。でも向こうで魔王相手に戦うよりかは楽だし、そもそもこの家ならば暗殺に怯えなくても良いし、それに姉さん達とも少し関係改善出来たし、良いこと尽くめじゃないか。


 そもそも一七歳の普通の高校生が異世界の戦争やらに巻き込まれていた今までの状況がおかしかったんだ。そう、こっちが正しい俺の世界だと元勇者は今度こそ思い直すと時空魔術を使って一瞬で鮭のムニエルを四人前を焼き上げた。



 久しぶりに四人一緒に食べた夕ご飯はすごい美味しかった。エリ姉さんは先週ユリ姉さんのサークルが無かった時には四人で食べたと言ったけど、俺にとっては七年ぶりで、今更ながらその事に気付いて泣いてしまった。


 母さんはオロオロしててポロは足元に寄って来て、俺のムニエルを下から狙っていた。ご飯ちゃんとあげてるのになぁ……皮だけあげようか考えたけど犬には悪いと思って止めておいた。


 エリ姉さんは男子たるものいきなり泣くとは根性が無いからだと言い、明日は朝から鍛錬とその後にデートを一緒にしようと言われたので、そこは丁重にお断りした。


 ユリ姉さんだけは、そんな俺を見て少し考えた後に何かに気付いたのか先にご飯を食べ終わると部屋に引き上げて行った。そして部屋に戻るとスマホに通知が来ていた。


「姉さん? 大丈夫なの?」


「うん。入っていいよ」


 ユリ姉さんからのスマホの通知で俺は部屋に呼ばれていた。姉さんが中学に進学してから一度も入った事の無い部屋だった。


 エリ姉さんの部屋と違って甘い香りと本の香りが混じった独特な匂いがした。でもそれは嫌な匂いじゃなくてどこか落ち着く、ユリ姉さんの匂いと同じような気がした。


「えと……別に報酬なら明日でも良いんだけど? 姉さんも色々と気持ちの整理とか有るんじゃないの?」


「ううん。今日しなくちゃいけない気がしたの。だから話すよ。後あんたがさっき急に泣き出した事も聞きたいし……」


「あ、それは……まぁ。少しホームシックになったと言いますか……アハハ」


 転移する前にはエリ姉さんと母さんしか居なくて、俺はいつも叱られたりするからエリ姉さんから逃げ回っていたし、料理も嫌々やっていた。


 頼りにならない母さんにも文句を言いたかった。おまけに学校では風美軍団にイジメられていたし、ユリ姉さんにはクズだのアホだの言われていた。やっぱ当時の俺にはハードモードだよな。


「その、何があったの? あんたの飛ばされた世界では……」


「うん。まあ普通だよ……異世界飛ばされてお前は勇者だ~って言われて戦っただけだよ……うん、それだけ……」


 だから向こうの世界に行った時は必要な人間と言われて喜んだ。それも三日で覚めたんだけどね、例の地獄の鬼ごっこを三ヶ月やっていく間に徐々にこっちの世界の事を忘れてたまに思い出す程度になっていた。


 さらにいくつもの死闘を繰り広げて四天王を全て倒し、最初の魔王と戦う頃にはこっちの世界の事なんて忘れていた。偶然にも思い出したのはRUKAさんの曲を聞いた時くらいだったと思う。


「その……話したくないの?」


「いや、少し話すと長くなるからさ、それ話してる内にうやむやにする気なんじゃないの? 姉さん、それには引っかからないよ~?」


 はい、話したくありません。とは言えないから話はごまかして行く、それに姉さんの方の話が気になるのも事実だ。そうに決まっている。


「ふぅ……ま、約束だしね。じゃあ快利、あんたが小学校の時に『私があんたを家でイジメてて、それを私が絵梨花のせいにして喜んでいる』って言うウソの噂を流してたのよね? 友達に中学の時に教えられたの」


「へ? な、何のこと? むしろあの頃はエリ姉さんの方が怖かったからユリ姉さんの方に懐いてたと思うんだけど?」


「そう、よね……私も男が怖かったけど、快利はまだ小さかったし男として見て無かった。ただ少しエッチな子としては見てたけど嫌悪感は持ってなかったよ」


 それは、やはりパンツの事が原因なのかと聞いたら苦笑しながら『今はそこまで気にしてない』と言ってくれたので驚いた。


 もし俺に非が有るとしたらそっちだと思っていた。でも、小学校の時の噂、そんなのは覚えが無いとハッキリ言える。そう言うとユリ姉さんから意外な答えが返ってきた。


「でしょうね……今日の快利を見て分かった。本当に私のこと助けようとしてたからね……驚いたけど嬉しかった」


「えっと……信じてくれて嬉しいけど、そもそも俺が小学生の時なのに何で中学で噂になってんの? あと俺が進学した時とか噂なんて無かったけど……?」


 そう言った瞬間に後ろのドアがバタンと開かれた。立っていたのはエリ姉さんだった。なんか仁王立ちしてる。


「それは私が話そう、ユリ姉ぇ……まさか未だにあの噂を信じていたのか……クズとかアホとかはてっきり快利に対するあだ名的なものと思っていたのだが……」


「絵梨花……ちょっと、私の部屋勝手に入らないでよ……」


「いや、この部屋から快利のニオ……気配がしたからな、つい入ってしまったのは謝罪する。でも今の話、やはり二人に黙っていた私の責任だな」


 そして勝手に居座るとなぜか俺とユリ姉さんの間に入って来るエリ姉さん、それとわざとらしく俺の腕に胸を当てるの止めて下さい。


 嬉しくてそれどころじゃ……なんかユリ姉さんが凄いジト目で見て来るし……なんで居心地が悪いんでしょうか?


「それで……エリ姉さん。どう言う事なの?」


「ああ、その前に快利。お前は美村瑠実香(るみか)と言う女子を覚えているか?」


「えっ? いや……そんな人覚えてない……てか誰?」


 誰よそれって思ったらユリ姉さんの方が反応していた。姉さん達の共通の知人って事なのかな?目で続きを促すとエリ姉さんは頷いて続けてくれた。


「ああ、お前に一方的に好意を抱いていたが、お前に告白する前に勝手に自滅したバカな女の名前だ」


「「えええええええええっ!!」」


 なぜか俺とユリ姉さんが一緒に叫んでいた。下からポロがキャンキャン吠えていて母さんが「少し静かにしなさ~い」と間延びした声が聞こえてきたので、返事をした後にユリ姉さんがエリ姉さんの開けっ放しにしていたドアを閉じた。そりゃ開けっぱだとマズイよね。


「瑠実香が……快利を? なんで……じゃあ、まさかっ!?」


「えっ!? お、俺の事が好きで告白してくれて、デートとかデートとか他にも色々してくれそうな女子が居たって本当なのっ!? エリ姉さん!?」


「お、落ち着け二人とも、特に快利、そんなにカノジョが欲しかったのか?」


 三人共既にバラバラだったのだが絵梨花はこう言う時は冷静だった。由梨花は何かに気付いたのか顔を青くして快利は自分のモテ期(願望)があったかも知れない事実に驚いていた。


「順を追って話そう、まずはその美村瑠実香なのだがその様子では会った事すら怪しいな……ユリ姉ぇと同じクラスだったんだけど覚えて無いのか?」


「うん。全然。どんな人だったの? ユリ姉さん?」


「うん……クラスの中心みたいな子で髪は伸ばしてたかな背中まで、後はメガネ掛けてた子で……家にも二回くらい来てたんだけど……」


 ダメだやはり聞いても思い出せない。話を聞くと陽キャっぽいんだけど……取り合えずエリ姉さんに先を促すと、エリ姉さんは少し困った顔をした後に続けた。


「私も中学に進学してすぐだった。快利が、ユリ姉ぇにイジメられていると言われ更に私はその被害者だと。だが私はすぐにそれを否定したし、そもそも私が常日頃から快利をしつけていたのを同学年の人間は知っていたからな。だからそれを間違えたのだろうと言って上の学年の一部の女子の間にしか噂は広まらなかった」


「うん。絵梨花が否定したから私も一緒に否定したんだよね。今度は犯人探しが始まったの……そしたら自作自演。つまり快利が私たち特に絵梨花に嫌がらせでウソの噂を流したって事になってたの……私たち姉妹は被害者で……その……連れ子の私たちを快利が追い出そうとしてるって話に変わってたの」


「えぇ……だってその頃はもう俺って完全にエリ姉さんに教育されてたじゃん。それに俺はまだ中学にすら行ってなかったのに……」


 どうやら俺に相当な恨みがあったようだ。その噂を流した人間は……。でもその後の話を聞いていると更に驚いた。


「その……噂の出所って瑠実香だったんでしょ? 私、最後まで分からなかったんだけどさ……絵梨花? どうなの?」


「うん。その通り。私は今度はターゲットが快利に向かったと気付いた。だから色々と調べたんだ。そして私は快利を――」


「そうだった、私は、その噂を毎日聞かされてさ……『かわいそう』とか『ヒドイ義弟だね?』とか色々言われて同情されて、いつの間にか私は快利を――」


 二人は同時に言葉を切っていた。一人はキリッとした決意の瞳を、もう一人は明らかに動揺して顔を逸らしながらそれぞれ言った。



「信じて、噂の出所を探して犯人を追い詰めた」

「疑って、家で罵倒してた……」



「そして快利が入学する前に私は美村瑠実香を調べて自白させた。やたら快利に執着していたから調べたらすぐにボロが出てな。ちょうど奴は中三に上がる時に転校したのよ。親の転勤が偶然重なったらしい。運の良い奴だ」


 更にエリ姉さんの話は続き美村瑠実香の自白によると俺を孤立させた状態で中学に入学させ、ユリ姉さんに全部の罪を被せて俺に取り入ろうとしていたらしい。怖過ぎんだろ何が目的なんだよ……そうか俺が目的か。そう言って俺はユリ姉さんを見た。


「うっ、そのぉ……」


「つまり姉さんは今の今まで俺を信じて無かったんだ? ふ~ん? へ~?」


「待て快利、確かにユリ姉ぇはヘタレで流されやすいんだが、二人の耳に入れないよう動いた私にも一定の責が……」


 エリ姉さんがユリ姉さんを庇ってるけど、それは良くないなぁ……だってこれ結局のところユリ姉さんが俺を信じて話してくれればいい話だったんだよね?


「エリ姉さん、少し良いかな?」


「なんだ? 快利いきなり手をにぎっ――「刹那の子守歌(すぐにおやすみ)……ゴメン。エリ姉さん……俺、ユリ姉さんと二人でゆっくり話したいんだ」





 快利は昨日と同様に絵梨花を気絶させると彼女をお姫様抱っこしたまま振り返ると無言のままの由梨花に『少し待ってて』とだけ言って絵梨花の部屋に入り彼女をベッドに寝かせて布団をかけた。


「最後まで信じて、それと守ってくれてありがとう。エリ姉さん。やっぱ俺は見えてなかったんだな……さて、じゃあ戻るかな」


 絵梨花の部屋を出ると元勇者の顔は能面のようになっていた。そして快利は由梨花の部屋に戻った。その音にビクッとして由梨花は何をしていたかを見ると部屋の隅っこで正座で文庫本を十冊くらい積んでパラパラめくっていた。


「結界魔法『全てを拒絶せし聖域(引きこもりの味方)』発動。さてと……ユリ姉さん? 二人でお話しよっか?」


「ひっ!! い、今、何したの? か、快利……」


「これは『全てを拒絶する聖域(引きこもりの味方)』って言う結界魔法の最上級だよ。この部屋の音、振動、全ての異変は外に漏れないよ? さっきビルで使ったのより二段階上の魔法だよ?」


 そう言ってニヤリと笑う。しかし目だけは笑っていない。この時点で由梨花の顔は真っ青になっているのだが当然だ。この顔をした時の快利は毒殺令嬢や爆殺メイドそれに他の問題を起こした王侯貴族をオシオキする時と同じ顔だからだ。


 つまり今の彼の顔は少しSッ気の有る顔になっている。彼は王国の民を常に守り戦い抜いた勇者の鑑であり、民に情け深く慈愛に満ち溢れた勇者でもあった。しかし、自分に敵対した者に対しては徹底した対処を行う王国の守り手。今の彼の顔はまさにそれだった。


「そうなんだ……凄いね……うっ……」


「ま、良いや。話して欲しいって言ったのは俺なんだし、姉さんは正直に話してくれた……あとは何か話してない事ある?」


「えっと……そのぉ……覚えて、無いかなぁ……あはは」


 覚えて無いとは実によい言い訳だ。政治家もかつて『記憶にございません』と言葉を変えただけで同じ意味の言葉を使い答弁をしのぎ切った歴史と伝統の有る言い訳の言葉だ。今度使ってみる事をお勧めしよう。


「そうだ、姉さん俺が使った尋問術って覚えてる? 向こうで拷問官の人に教えてもらったんだけどさ」


「ひっ……あれは、もう、いやぁ……お願い……」


「実はあれ一番軽くてね、言葉だけだったでしょ? 器具とか魔法での自白とか他にも薬とか色々あるんだよ?」


 俺は効果有りと見ていたらユリ姉さんは今度こそ正座を崩して震え出した。また泣きそうになっている。じゃあ、そろそろ軽く一言オシオキして終わりにしてあげようかなぁ……と、思っていたら姉さんが蚊の鳴くような声を出した。


「や、やっぱり……快利……あんたもするつもりなのね……くっ……」


「やっぱり? 何のこと? さすがに魔法とか器具はつかわな――」


「やめて! 勇者のくせにあんたも私に『ざまぁ』する気なんでしょ!? な〇う系小説みたいに!! な〇う系小説みたいにっ!! 私が悪かったわよぉ……。こんなの謝っても今更もう遅い系と信じてくれなかった系まで……今の私って完全に役満じゃない!!」


 何の話ですか? なろ〇系小説? ざまぁ? てか勇者とか関係有るのだろうか? ついに大泣きし始めたユリ姉さんを見て結界を張っておいて良かったなぁ……とか思っていたら、まだ姉さんの主張は続いていた。


「ひっく……しかも、快利……あんた追放された系もちょっと入ってるみたいだから意地悪だった姉なんて絶対に『ざまぁ』対象じゃない!! 絵梨花が対象から外れたなら私しか居ないじゃない!! 勇者は『ざまぁ』される側でいなさいよ!!」


「えっ、えぇ……ユリ姉さん取り合えず落ち着いて。ね? ゆっくり最初から話してくれない? さすがに意味分かんないから……」


 そう言うとユリ姉さんは積まれて置いてあった文庫本十冊を俺に渡して来た。


 それはやたら綺麗なアニメ調の絵で描かれたイケメンと美少女が表紙の本で『勇者や皆に捨てられたけど俺は最強チートで真のヒロインと大逆転します』『誰一人信じてくれなかったけど唯一信じてくれた妹と周りの奴らを見返します』『幼馴染って『ざまぁ』されるしか価値ないよね?』『もう遅いと言われたけど本当に遅いのはおまえらだった件』な、何ですかこれ?


「これは私が最近読んでる『ざまぁ』系よ……気付いたら私が『ざまぁ』されそうになってたからコイツらの行動見て回避出来ないか探してたのよ!!」


「えっとラノベ? なんだよね? 俺の読んでるのと少し違う?」


「ひっく、あんたの部屋チラっと見たけどアレ全部アニメ化作品でしょ? どうせアニメ化してから読み始めたんでしょ?」


 俺は基本ゲーオタだった。一人で時間を潰すにはそれしか無かったから自然とそうなった。ゲーム以外だとアニメを見てたりして、面白かったものは原作の漫画や小説、ラノベを買ったりしていた。


「そうだけど……何か文句あんの?」


「ひっ!? べっ、別に『けっ!!ニワカかよ』とか『私は初版の頃から知ってるけど』とか『この作者の作品は書籍化前から知ってるからレベルが違う』とか全然思ってないわよっ!!」


 う~ん、このダメ姉……中学から交流無かったけど色々と拗らせてるみたい。しかも中々にうるさい……てか姉さんって……。


「ラノベオタクだったの?」


「うっ……オタクとか……ただ好きなだけで、色々集めて気付けば読み漁っていただけよ!! べっ、別に店舗別特典とか集めてないんだからねっ!!」


「うわぁ……そっか、姉さんって隠れオタだったんだ」


 少し泣き止んだ姉さんに話を聞いていくと高校時代はそう言う付き合いの友達五人とラノベや漫画それにアニメとかの話をよくしていて教室では陰キャの筆頭格だったらしい。しかし仲間はみんな共学の大学へ行ってしまい大学ではボッチに戻ったと言う話だった。


「なんか、姉さんも大変だったんだね……」


「おまけに明後日からは大学で完全にボッチが確定なのよ!! もう人生詰みなのよ!! 好きにしたら良いじゃない!! 『ざまぁ』でも何でもしなさいよっ!!」


 いや、別に『ざまぁ』とかしないよ……てかパラパラとめくって読んでいたけど随分と都合の良い話だなぁ……この作品、頭悪過ぎない?


 てか姉さんを反省させようとはしたけど、この小説みたいに家から追い出したり奴隷に落とすとか……貴族が奴隷落ちってどんだけ過酷か分かって書いてんのかな?


 こんな事例よほど重罪な人間だけだったからな。てか俺の転移先の王様の場合は、その場で処刑だったから無かったのも有るのか。


「う~ん……俺には分からん境地だなぁ……」


 それにどんなに酷くても家族を追放するとか……そりゃ姉さんは俺を信じてくれなかったし、いいとこ無かったけど、俺を殺そうとはしなかった。極端なんだよな、そもそも小説ってフィクションなんだから真に受けないで欲しいよ姉さんもさ。


「もう泣き止んだ? 姉さん、大体分かったけどこんな程度じゃ俺はこの『ざまぁ』とかしないから、ね?」


「嘘よ……私が本当に? って言ったら二つ目の条件出して上げて落とした後に『許すわけねえだろっ!?』 ざまぁって言うんでしょ!!」


 なんかもう完全にラノベ脳? になってるな……姉さんが心配だ。それにこれって罪悪感から来る自己防衛って奴だよな?


 なんか向こうの魔法医師に聞いた事ある。とにかく謝りたいって心境になるって言うやつだと聞いた覚えがあった。


「う~ん……あっ!! そ・う・だ!! 良いこと思いついた!! じゃあユリ姉さん? 明日、日曜だし俺に付き合って奴隷になってくれる?」


「ふぇ? ど、奴隷? 首輪?」


 お? やっぱ反応した。とにかく姉さんは『ざまぁ』されたって事実が欲しそうだから、ここは俺なりの『ざまぁ』をすれば良いのかと思っていたら当たりみたいだ。だ・か・ら……明日はユリ姉さんとデートだ!!

誤字報告などあれば是非ともよろしくお願い致します。


ブクマ・評価なども有ればお待ちしています。


この作品はカクヨム様で先行して投稿しています。

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