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転移先がブラック過ぎたので帰ってきたらヌルゲーでした  作者: 他津哉
第八部『元勇者と願う未来への決意』
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第114話「結成、英雄パーティー!!」


「――――以上が現状で俺が知ってる黒龍の全てです、俺しか対峙したことが無いので曖昧な情報なんですけど……」


「君のスキル『聖なる一撃』と呼ばれるものしか通用せず他の攻撃は全て吸収され、逆に敵の攻撃は君のスキルで全て防げる、戦場は最低でも半径10キロは必要」


 俺の話を仁人さんがPCに入力していく、他の面々もそれぞれ話をしていて俺は仁人さんと那結果の三人で黒龍対策を話していた。


「勇者スキルのみが有効な敵で最初は動き回って厄介でしたが英雄化を使い、敵を地表に叩き落とした後は聖なる一撃の三連射で滅ぼしました」


 当時の俺は精神崩壊気味の社畜で記憶も朧気にしかない。そもそもブラッドを倒した後にさらに突然出現した黒龍を相手にした上に英雄化を使っていたせいで意識もだいぶ混濁していたので曖昧なのだ。


「だから俺の記憶よりも那結果の記録の方が確実です」


「だが実際に戦っていたのは君だ、実験は観測者も大事だが一番重要なのは被験者さ……さて、後は他に思い出せることはあるか?」


 その後も俺達は三人で対策会議を数時間はしていた。今さら気付いたが向こうは夜だろう。だがここで俺には有る疑問が頭を過ぎっていた。


「俺の家とか母さんの様子とかも気になるんですけど……」


「そっちは七海の分野だ、今は君のお姉さん達と話しているから聞きに行くといい、俺は那結果くん、そしてフラッシュくんと話をさせてもらいたいのだが?」


「分かりました、では二人は仁人さんと引き続き対策を頼む」


 その後も更に数時間以上、俺達の話は続き互いの情報交換も済んで最後に俺達は七海さんから有る物を渡されると今日は用意した場所で休むように言われた。もう完全に至れり尽くせりだ。




 翌朝、俺は用意された千堂グループの所有するホテルの一室で目を覚ます。昨日の事件の際に既に七海さんが用意してくれていた部屋はロイヤルスイートだった。


「まさか人生初の最高級のロイヤルスイートがこのタイミングとは……ソファーなのに俺の部屋のベッドより寝心地良かったんだが」


 そのまま起き上がり隣に繋がるドアをノックすると中からかしましい声がキャッキャッと聞こえた。昨晩は俺を含めて女性陣七名も全員が同じ部屋に宿泊したのだが部屋の中に部屋が有るという状態で俺の部屋五つ分のスペースとドアが間に有るから一緒の部屋という感覚が無かった。


「お~い、もういいか?」


「ああ快利、起きたの? ちょうどご飯作ってるから……あっ、那結果とセリカがまだ服着てないから少し待って~」


 ノックの後に返事が無いから外から呼びかけるとドア越しにユリ姉さんの返事が聞こえた。何か凄いことになってそうで勝手に妄想だって広がるさ俺だって健全な男の子なんだから。


「わ、分かったよ……じゃあ後少ししたら――――」


 妄想をかき立てられながら俺が引き返そうとすると中からドアが開かれて立っていたのはエリ姉さんだった。用意されていたガウンを着ていて胸の谷間がくっきり見えて、いつもながら大きいです。


「問題無い快利、セリカはシャワーに入ったし那結果は服を着せたから大丈夫だ」


 いやいや、ぜんぜん大丈夫じゃないと思うんですけどシャワーの音とか聞こえてますよ。おまけに那結果は見た感じTシャツしか着てないんですけど。


「大丈夫です安心して下さい快利、異様に短いショートパンツが用意されていたので履いていますよ」


「いや、そんなドヤ顔で言われても……てか姉さん達も、もう少しキチンとした格好しなよ、ラフ過ぎるよ服装が!!」


 ここは女子高じゃないんだぞ分かっているのだろうか。姉さん達も少し前まで人前で肌出すのすらトラウマだったくせに堂々とガウンとか着込んじゃって胸こぼれそうなんだ、目のやり場に困るんだよ。


「カイ? どうしたの?」


「ああルリ、皆の恰好が……ってお前もか!! それ俺のシャツじゃないか!?」


「あっ、うん……カイがお風呂場で脱いでたの借りちゃった」


 昨日はホテルに到着した後は全員、疲れ切って眠ったのだが俺は汗やら自分の血やらで汚れていたのでシャワーだけは浴びていた。そして風呂から出ると俺のシャツとジーンズは無くなっていた。


「借りちゃったって臭くないか? それに血だって付いてるし」


「ううん、カイの匂いがするから熟睡出来たけど?」


「そ、そうか……」


 ちなみに昨晩は服が無いのに気付いて即応式万能箱どこでもボックスに入れておいたジャージとスウェットを着て寝た。じゃあ俺のジーンズはどこに行ったのかと探した結果、犯人はユリ姉さんだった。


「ユリ姉さんまで……」


「いや、こ、これは……慧花が狙ってたから守るために仕方なくよ!!」


 いや、そんなに顔真っ赤に否定しなくても大丈夫だから……ま、ちょうどいいから二人は後で呼び出しておこう術後の処理も有るからね。


「じゃあルリとユリ姉さんも後で服返してね、それと家が吹き飛んだから七海さんが情報統制してくれてる間に何とかする必要が有るんだ」


「快利なら家くらい直せるでしょ? 家を転移しようとしてるんだし」


 その通りなんだけど肝心なことがユリ姉さんは分かってない……俺が目配せすると那結果は頷いていたから異世界組は分かっているようだ。


「直すだけなら簡単だけど昨日、爆発した家がいきなり次の日に完全修復されてたら普通に変でしょ」


「あっ、それもそうね……」


「ちなみに由梨花、昨日の時点なら認識阻害や記憶消去の魔法も使えたが一日経って広がってしまったから情報封鎖も()()()()不可能だ」


 慧花がフライパンで目玉焼きを焼きながら答えていた。そういえば普通に一人暮らしで料理出来るんだよなと感心していたらウインクされた。


「その辺りもセリカと慧花が話してたんだろ?」


「そうですわ快利!! 実は報告が!!」


 慧花に確認しようとしたら後ろから声が聞こえて振り返って見たセリカの姿は全裸だった。成長したなセリカ……そのサイズなら充分だ。


「「快利!!」」


「はい!!」


 姉さん達に怒鳴られ問答無用で目を閉じて回れ右する。俺は悪くないよな、目の前に全裸の女の子が勝手に出て来ただけだよな。こうやって冤罪は作られるんだと妙に社会派元勇者の思考で必死に頭をぶんぶんと振った。


「あら、わたくしとした事が……モニカ、ドレスを」


「はい、ただいま参ります、由梨花姉さんサラダの用意だけお願い致します」


「分かったわ、じゃあ瑠理香と那結果で快利を見張っておいて」


 それだけ言うとユリ姉さんはモニカと交代で朝食の用意を引き継いで隣の慧花と話をしながら準備を進めていく。


「それでセリカの報告って?」


「はい、昨日の内に七海さんとお話していたのですが千堂グループが、とある土地を用意したので転居先をそこに決めてはどうかと話をもらいました」


 しかも話を聞くと既に親父たちの許可は取ったそうだ。しかし、そんな話は那結果も初耳だったらしく親父達に連絡を取ってもらっている。そして結果はすぐに出た。


「本当のようです、スマホに送った住所に来るようにとの事です」




 俺達は朝食後に郊外の住宅地に来ていた。ぞろぞろと八人で歩いているから目立ち過ぎる。先頭にはなぜかルリが立って先導してくれて迷わず来れたのは助かったのだが……。ちなみに俺も近くまで来て場所に覚えが有った。


「高校にも歩いて通える距離で閑静な住宅街と……」


「みんな~、こっちよ~!!」


「「母さん!!」」


 俺達が到着すると売地となっている場所の真ん中に夕子母さん達がいた。思わず声を出して駆け寄る姉さん達を見ながら俺は予想通りの二人が居るのも確認した。


「母さん、パパ!!」


「瑠理香、電話で話したけど顔が見れて良かったわ」


「本当だよ瑠理香……」


 その二人とはルリのご両親だった。昨日の事件から家に帰れてないから当然の反応だ。そして二組の親子を見ながら俺が売地を見ていると後ろから足音が聞こえた。振り返ると工藤先生と奥さんの梨香さんがいて驚いた。


「さて、皆揃ったようだな」


「その前に……良いっすか? 何でここなんですか?」


 母さんや先生を含めた大人たちを見ると苦笑している人しか居ない。どうやら仕組まれたようだ。仕組んだのは誰なのかは後で聞こう。


「カイ、ここ絶対に良い土地だよ立地も最高だよ!!」


「そうだねルリ……詳しいな」


「だってそこ私の家だもん!!」


 ルリが指差す先に有るのは俺がいつも送り届けている風美家で気付かなかったがルリの家の裏手はずっと売地だったのだ。忘れそうになるがルリの家は芸能一家で結構良いとこに家が有る。セキュリティ面でもかなり優秀で近所の人もそれなりの立場の人が多い場所、つまり高級住宅街だ。


「そんなとこに家、建てるの?」


「大丈夫だよ、うちの近所ってほとんど人居ないんだよ、ね? お母さん」


「そうね、スキャンダル逃れのためと記者がいてもすぐ分かるようにって意味でね、両隣もどっかの企業の社長の別宅と、残りは空き家よ」


 なるほど、つまり近所にいるのはルリの家族だけってことになるから色んな意味で安心なのか。


「快くん、それにも秘密が有るのよ空き家の半分は千堂グループの持ち家で、いざという時のセーフハウスだそうよ、この土地も遊ばせてたらしいの、凄いわね~」


 なぜかエマさんと俺の会話に割り込んで来る夕子母さん相変わらずエマさんとは仲が悪いようだ。そこら辺はいい加減にして欲しいけど今は新居の話だ。


「夕子義母さん、親父は?」


「昇一さんは今は関連企業との会合中なの、源二叔父様からの呼び出しでね」


 爺ちゃんの弟つまり俺にとっては大叔父さんに親父は呼び出されたらしい。千堂グループとの調整らしく二人で朝から動いてるそうだ。そして工藤夫妻は千堂サイドからのエージェントとして来たとのことだ。


「梨香、この間は助かったわ」


「エマさんも、お久しぶりです綾華も変わりましたね、あなたに託して正解でした」


「そうかしら? 私もそろそろ現場から降りたいんだけどね?」


 梨香さんとエマさんの話の中心は綾華さんの話だった。元マネと現マネの話とかファンとしては気になります。


「すいません、今は……」


「聞いてるわ、お腹の子が落ち着いた時にまた話しましょう……待ってるから」


 何か色々と有ったのは聞いてたけど複雑みたいだな大人の世界も大変みたいだ。そして俺と那結果そして慧花とモニカで準備を開始した。セリカとユリ姉さんには周囲の警戒を工藤先生たちと一緒にお願いした。さあ引っ越し開始だ。




「じゃあやるぞ、那結果と俺が家を作るからモニカと慧花は結界を頼む、簡易なもので大丈夫だ!!」


「了解したよ快利、モニカ!!」


「はい、中級の人払いの結界で行きます!!」


 まずは慧花とモニカに周囲から俺達が見えないようにする妨害結界を張ってもらい周囲から見えなくしてもらう。続いて俺がルリの家を含めた周囲に全てを拒絶する聖域を展開することで完全に外界と周囲を隔絶すると準備完了だ。


「快利、では私は家の残骸をこちらに転送します!」


「ああ、修復したら中の物を全部運び出して即応式万能箱どこでもボックスに入れて行くから皆も手伝ってくれ!!」


 那結果がイベドに吹き飛ばされた家の残骸をこの場に全て転送し俺が家を一度完璧に復元する。そこからが大変で家の中の物を全て俺の時空魔法の即応式万能箱に突っ込んでもらう作業を開始する。


「重い物は慧花とモニカに言って軽量化の魔術や縮小の魔法をかけてもらうから二人に頼んでくれ」


 そして数時間で必要な家具を入れると那結果に復元した家を分解魔法で壊してもらい元の場所に再転送する。ちなみに向こうの家の跡地には秋山警備保障の人間と信矢さんに待機してもらっている。これも昨日の内に七海さんと詰めていた計画だ。


「そうそう快くん、ポロなんだけど逃げ出しちゃって怪我して今は動物病院にいるから後で診てあげて欲しいのよ」


「あっ、そういえば……あいつの事すっかり忘れてた」


 夕子義母さんに言われて思い出したのは我が家の愛犬ポロ、最近は姉さん達が飼い主に戻って俺の所にエサをたかりに来なくなったから存在を忘れてた。てか、家が吹き飛ぶ魔力爆発の中を生きてたのか……ただの犬なのに。


「そういえばイベドに襲われる前に瑠理香たちと庭で遊んでたのよね」


「じゃあ結界に巻き込まれないで外に居たのか……」


 運が良い我が家の愛犬は後で迎えに行く事にして、その後は俺と那結果が再現魔法と複写魔術をを使って事前にリサーチした家を完全にコピーして微調整していく。間取りなどを義母さん達に聞いていると作業が終わる頃には昼を過ぎていた。


「しかし凄いな……たった数時間で家が建つのか」


「この規模の魔法と魔術を行使出来るのは王国広しと言えども快利兄さんだけです」


 感心して家の周囲を見ていた工藤先生にモニカが自慢するのを見て少しくすぐったくなったが本番はここからだ。


「じゃあ皆、第二段階だ、部屋を決めたらどんどん荷物取り出すから俺は二階で、一階は那結果がいるから出す荷物を言ってくれ」


 さらに数時間後、昼もすっかり過ぎて夕方頃に何とか家の整理は終わった。俺達だけではなく信矢さんや一緒に来た奥さんの狭霧さん、他にも親父の部下の人達も手伝ってくれて無事に引っ越し作業は完了した。


「何だか慌ただしくなったけど終わりかな?」


「一階の方は終わりました快利」


 二十名近くの人間で作業したとはいえ今回の家は大きかった。そもそも今までの家は元々は三人家族で住む少し広い一軒家だったのに対して今回は部屋数も多いし土地も広いから家自体が二倍弱の大きさで豪邸と言っても差し支えない広さだ。


「お疲れ那結果、お前の部屋だが何も無いけど良いのか?」


「問題有りません、そもそも私はあなたと同じで即応式万能箱に荷物を入れているので、ただベッドは欲しいですね」


「分かった、じゃあ義母さんに言って注文してもらおう」


 新居の構造に困惑しながら下に降りると親父の部下達は既にいなかった。俺達が上の階を片付けている内に帰ったそうだ。そして残ったのが工藤先生や信矢さん夫妻とルリの両親たちで、しかもこれから親父が七海さん達を連れて来るらしい。


「何であの二人が?」


「私も詳しく聞いてないけど、英雄パーティー結成式だそうよ」


 夕子義母さんから話を聞いたユリ姉さんの言葉を聞いてさらに困惑した俺は那結果と顔を見合わせていた。




「それで何で俺が中心ぽい結成式で料理作ってんの?」


「まあまあ、良いじゃない快利くんは料理できてエライよ~、シンなんて簡単なのも作れないんだから~」


 ちなみに料理担当はなぜか俺とユリ姉さん、そして信矢さんの奥さんの狭霧さんだった。しかも料理の手際がかなり良くてパッと見は出来なさそうと思っていた数分前の俺をぶん殴りたい。


「そうなんですか? 何でも出来そうなイメージだったんですけど」


「確かに、あれこそオールラウンダーって感じで天才大学生って感じで同じ学生としては引け目感じますよ」


 ユリ姉さんが半分自虐的に言いながら同じ大学生という意味では慧花もだと思い出す。その慧花はモニカ達と追加の出来合いの物をスーパーに買い出しに行っている。ルリの行きつけらしく荷物持ちにエリ姉さんも付いて行ってしまった。


「う~ん、確かにシンは何でもできる私のカッコいい旦那様だけど自分では絶対に天才とか言わないよ、自分は秀才型の器用貧乏だって言うと思うよ?」


「え? あんなに何でも出来る万能型が?」


「そうですよ、ハイスぺ過ぎですよね? そもそも狭霧さんだって信矢さんと同じ大学で私とはレベルが……」


 その後も三人で話をしているとユリ姉さんと俺には色々と恐ろしい情報が伝えられハイスぺの人達の話は分からないという結論に達した。あの人が器用貧乏なら一般人は全員が無能になるだろとツッコミを入れたくなる。


「さて、オードブルとサラダと……煮物?」


「うん、シンがこれ好きだし私もバイト先でよく作ってるから」


 なるほど、ちなみにこの煮物は狭霧さんの料理の師匠に教えてもらって完成させた味付けらしい。そんな話をして新居のリビングという名の食堂のような場所の長机、よく金持ちが食事している時のあのテーブルには大人たちが集結していた。


「来ましたね勇者、いえ英雄……今日は親睦会と会議を兼ねた結成式、いえ堅苦しいのでパーティー……英雄の宴、言わば英雄パーティーを始めたいと思います」


「パーティーってそっちの意味かよ!!」


 七海さんの言葉に俺は思ずツッコミを入れていた。思っていたパーティーと違う。

誤字報告などあれば是非とも報告をお願い致します。(感想ではなく誤字脱字報告でお願いします)


感想・ブクマ・評価などもお待ちしています。


この作品はカクヨムで先行して投稿しています。


下に他作品へのリンクが有りますのでよろしくお願いします。

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