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消えた囚人

作者: 岸亜里沙
掲載日:2021/05/16


これは日本の脱獄史上、最も壮大な事件です。

昭和時代に起きた、幻の脱獄事件の顛末をお話しします。


1957年5月28日の深夜の事。

とある刑務所の独居房に収監されていた、小島平八(こじまへいはち)という囚人が姿を消したのです。


時刻は2:30。

看守の遠藤と山口が巡回時に、独居房で寝ている小島が、掛け布団にくるまって寝ているのを見つけ、声を掛けました。

「おい小島!規則違反だ!顔を出して寝ろ!」

遠藤は怒鳴りましたが、小島はくるまったまま、身動きひとつしません。

「貴様、いい根性だ!痛い目に合いたくなければ、さっさと顔を出せ!」

遠藤は更に声を荒げましたが、それでもなお、小島は動こうとしません。

「おい鍵を開けろ!」

遠藤は山口に命じ、鍵を開けさせると、ズカズカと独居房に入って行き、寝ている小島の掛け布団を引き剥がしました。

しかし看守の二人が見たのは思いもよらないものでした。

そこに小島の姿は無く、掛け布団の下には大量の土が盛ってあったのです。

更に土と敷き布団を退かすと、床から真下に伸びるトンネルが掘られていたのです。

「だ、脱獄だ!」


それから数十分後、刑務所からの通報により警察官と、目を真っ赤に充血させた刑務所長が駆けつけました。

「お前ら、職務怠慢だぞ!雁首揃えて何やってるんだ!囚人にこんなトンネルを掘られるとは、前代未聞だぞ!」

脱獄をされた怒りと、叩き起こされた怒りもあり、所長の北林は機嫌がかなり悪かったようです。

「申し訳ありません。しかし、前日にちょうどこの房に立ち入り検査をしましたが、この様なトンネルはありませんでした」

青ざめた顔で、遠藤が答えました。

「自分もこの目で確認しましたが、トンネルはなかったかと」

山口も同調して答えましたが、やはり顔は蒼白でした。

「そんな嘘が通じると思うのか?これだけのトンネル(もの)を掘られておきながら、貴様らは検査で見落としたのだ!恥を知れ!」

所長は更にヒートアップしてきました。


しかしちょうどその時、トンネル内を調査していた警官が戻ってきたのです。

「検分は終了しました。このトンネル、刑務所の塀の下を抜け、近くの雑木林まで続いていました」

「まさか?そうなると700mはあるという事か?」

所長も看守達も驚愕した。

小島は一体どうやってそこまで長いトンネルを掘ることが出来たのだろうか。

考えれば考えるほど謎だった。

そして警官は更に話しを続けました。

「しかもこのトンネル、穴を掘っている最中の落盤や落石を防ぐ為か、入口から出口までセメントらしき物で固められていました」

所長には思い当たる事があった。

「確かにここの地面は粘土質だ。それに、石灰石も農業訓練の為にストックされている物がある。それをくすね、簡易的なセメントを作ったのかもしれませんな」

「いいえ、それは違うでしょう」

警官はあっさり否定しました。

「どういう事だ?」

「このトンネルを検分して分かった事がもうひとつあります。実は独居房から雑木林に近づく程、トンネル内のセメントの風化が激しくなっていました」

所長は目を丸くして聞き返した。

「それは、つまり?」

「このトンネルは独居房から掘り進めたのではありません。雑木林から独居房に向かって掘られたのです。つまり外部の人間が、囚人を脱獄させる為に掘ったトンネルなのです。囚人がこれだけのトンネルを掘るのは至難の技ですが、外部の人間であれば簡単です。つまりこれは、綿密に計算された囚人の奪還計画だったのです」



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