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1ー1

幹部との話し合い。

 そういうわけでわたしの異世界生活が始まった。まずやったのはこの城と世界、そして魔物の把握だ。そのために言葉が通じる魔物を招集する。

 場所は最初に飛ばされてきた大広間──通称魔王の間ではなく、わたしが空いている部屋を改造した執務室だ。そこに三体の魔物が集まっていた。


 一体目は上位悪魔のフォルボロスさん。知力が高くて悪魔部隊の長らしい。そういう部隊編成もある程度は出来上がっているそうな。悪魔のイメージである先割れスプーンのようなもの、三叉鉾?とやらを持ってないのかって聞いたら、どうやら魔法とか使うタイプの魔物らしい。ファンタジーだけあって魔法も当然のようにあるらしい。

 全身紫の体表に黒の燕尾服のようなものを着ている。できる執事さんって感じ。顔は、イケメンなんだろうか?魔物のイケてる、イケてないはわからない。


 二体目は地獄の門番ハーデスさん。何と地獄というものは本当にあるようで、地上と地続きらしい。その地獄への扉の門番をやってくれているらしいんだけど、今は魔王軍の一員なのだとか。何でも地獄の門を開くかどうかは魔王の権限らしい。何のこっちゃ。閻魔大王とかいらっしゃらないのだろうか。

 ハーデスさんは頭が馬のような頭蓋骨。そう、骨。全身は違うらしいんだけど、手と頭は骨。手はちゃんと五本あるんだけど、頭は馬っぽい。肉は必要ないとか。


 三体目はドラゴンデビルという種族のドラっちさん。いきなり渾名っぽくなったな。でもドラゴン部隊という魔王軍最強の部隊を率いている部隊長さんらしい。めっちゃ威張ってた。ドラゴンって確かに強いらしいとは聞くけど、現実にはいなかったからわかんない。身体は西洋のドラゴンみたいでオレンジ色なんだけど、羽だけ悪魔っぽく紫。

 この三体の中で一番気安い。ま、お飾りの魔王だから仕方がないけど。


「集まってくれてありがとう。こんなわたしについて着てくれてありがとうね」


「何をおっしゃいます、アユ様。我らが王よ。王のために手下が働くのは当たり前のこと。その度に謝辞など申されては、あなた様の言葉が軽くなります」


「あー、うん。次から気をつけるよ。でも、感謝する時はちゃんと口にするからね?」


「はい。畏まりました」


 うーん。フォルボロスさんはこういう形式を気にする人なんだろうか。こんなクソザコナメクジのわたしが魔王で文句とかないのかな?君たちに謀反起こされたら死ぬか弱い存在なんだけど。

 なんちゃって社会人だったからこういう礼節がわかんない。魔王軍が何を気にしてるんだって話だけど。


「それで早速確認したいんだけど、魔王軍って今どれだけいるの?」


「はい。こちらをご覧ください」


 ハーデスさんから紙を手渡される。良かった、ちゃんと日本語になってるから読める。わたしのために資料用意してくれたとか、それだけで涙が出てきそうだ。わたし、誰かに何かやってもらったことなんてほぼないからなあ。

 でもここでお礼を言ったらまた話が止まっちゃう。難しいなあ。感謝してるのは本当なのに。


「まず魔王城には幹部が二十体。その幹部一体につき三個中隊がいます。ドラゴン部隊だけは異なりますが。ドラゴン部隊は一つしかないので、総勢五十八の中隊が。その総員数は千八百を超えます」


「千八百……?そんなにいるんですか?」


「いえいえ。こんなものではありませんよ。世界の方々には魔王麾下に入っていないはぐれも多数。麾下にも約八万。重要な地点には特殊な魔物も四十体以上。細かい数字は出きっていませんが、軍だけでも八万を超える、小国家分の数はいます」


 そうなんだ。いや、戦力とか数とか言われても戦争経験したことないし、ゲームもやったことないからわかんないんだけど。大きい街の住民丸々戦力だって考えると、かなり多い気がする。

 しかもそれはあくまで魔王軍にいる戦力とのこと。はぐれの魔物たちも結構いるみたい。

 そう考えていたら、ハーデスさんがまだ言うことがあるみたいで言葉を続けた。


「地獄の門を開けばまだまだ戦力は増やせますぞ。あまりオススメはできませぬが」


「まだ増やせるんですか?」


「ええ。地獄というのは死霊が集まる場所。そこでアンデッドと化した者も多いのです。そうなってしまえば魔物に変わりありませぬ。あとはマユ様がお力を使えば、配下になることでしょう」


「お力、かあ」


 わたしはそんな力を使った覚えはない。転移してきたら皆配下ですって傅いてるんだもん。これと言って何かやったわけでもないし、自分が向こうにいた時と何か変わったとも感じていなかった。

 立場だけはまるで変わっちゃったけど。


「数はそんなもんで。オレからは実質的な戦力の質についてだ。魔王城の外にいる連中はピンからキリまで。計算はしづらいが、平均を考えると大国の兵士三人と野良の魔物が一匹で釣り合うってところか。強者──いわゆる名前が有名な奴だと一対一が精々か。魔王様の言うテンイシャって奴の、天使の加護がどれだけのものかわからないからそこは不鮮明。それは魔王様もわからねえんだよな?」


「うん。不老になったりすっごく強い力を持ったりしてるみたい。最大二つだけど、わたしそういう力っていうのに詳しくないからどれだけ強いかわからないんだよね」


 ゲームとか漫画とかほとんど知らないし。わたしの知ってる魔法は皆を笑顔にするっていう子どもの魔法使いが使っていた魔法だけ。女児向けのアニメで見た魔法くらいしか知らないから、戦いで使われる魔法とやらは全然ピンと来ない。

 天使の加護による凄い力とやらも全く。凄いっていう言葉が曖昧すぎる。

 でも、ドラっちさんの話を聞く限り魔物ってかなり強そうなんだけど。バカなことをしなければ人間に質で勝ってるから、数では負けていても世界のバランスは取れていたのかな。


「聞いた感じ、魔物の皆って強くない?幹部の皆はもっと強いんでしょ?」


「そりゃあまあ。ここは魔王城ですし、魔物の中でも先鋭が集まってますから。幹部連中なんてやろうと思えば一体で小国を滅ぼせますぜ?オレたちドラゴン部隊なんて、部隊を引っ張れば大国でも吹き飛ばせますが」


 戦力過多じゃない?それで今まで人間と魔物のバランスが拮抗していたとは思えない。

 だからきっと、変化があったのはわたしのせいだ。わたしが魔王として就任して、組織として本格的に動こうとしたからこうなっている。今まで魔王城の戦力は積極的に動かなかったらしい。お互いの領分を守っていたわけだ。


 けどわたしが生きることを選択してしまったから。そして異世界の人間が来てしまったから。このバランスが崩れた。

 本当にあの天使どもめ。あいつらが余計なことをしなければ平和だった世界が。

 そんな平和が気に入らなくてこんなお遊びを始めたんだろうけど。


次も20時に投稿します。

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