4ー2
僕はそれからも修行を続けた。僕の選択が正しかったかわからない。一人で修行をするのではなく、転移者を探し出して結託すべきだったんじゃないかと。徐々に転移者は人を減らしている。この前の戦争でとうとう数が半分になってしまったのだ。冥福を祈る。
そして全て、やれることを成した僕は王城に呼ばれていた。
「現代の勇者、ユメシロよ。王国で最高の者たちを探し出した。この者たちと共に、魔王を倒してほしい」
「はい、必ずや」
紹介されたのはモンクである引き締まった身体をした女性、ティーナ。魔法の師匠の高弟で、見たまんま魔法使いという格好をしている少女キャサリン。そして第二王女であるラミューだった。
「王女殿下を私の旅に加えるのですか?」
「ああ。娘の頼みだ。そして娘はイズミャーユ教の熱心な教徒でな。国一番の回復魔法使いなのだ」
それから説明されて、結局ラミューも連れていくことに。女性ばかりのパーティーだな。でも王様がこんなことで嘘をつくわけがないし、本当に国一番の実力者なんだろう。
師匠たちは年でそこまで前線で活躍できず長旅も不可能。そして国を守るので、若者に魔王を倒して欲しいと願っての選抜だという。
「というわけで自己紹介をしようか。ユメシロ・カナタだ。ユメシロが苗字で、名前がカナタになる。珍しいけど、そういう風習で」
「じゃあ次あたしな!モンクのティーナ・ロウファン・ブルングルだ。国で一番の道場、ロウファンで皆伝を貰った天才とはあたしのことだ!見ての通り接近戦は任せてくれ。あたしに壊せないものはない!」
とても元気な、褐色肌の女性だった。パーティーでムードメーカーになってくれるような、太陽のような存在だろう。僕と一緒に前線を維持するから、必然的に肩を並べる回数が多そうだ。
「わ、私キャサリン・スピネルです。魔法が得意ですけど、それしかできないので……。接近戦とか無理です、はい」
「キャサリン。君はあの師匠の高弟なんだ。自信を持っていい」
「ユメシロさんにそう言われても、自信持てないよ……」
この中で一番小柄な少女、キャサリン。魔法の師匠の所に通っている際、何回か話したことがある。師匠も一番優秀な弟子だって褒めてたし。何度か魔法を見せてもらったからその実力は疑っていない。
「では。わたくし、ラミュー・エラ・キューズ・マンバラウスですわ。ユメシロ様と同行し、魔王を一緒に倒せる喜びを甘受しております」
「王女殿下に様と言われるのは申し訳ないというか……」
「これからは旅の仲間でしょう?皆様も、敬意は不要ですからね?」
「あー、姫さん?姫さんが敬語なのは……」
「これは癖のようなものですわ。今更抜けません」
ティーナが質問したが、肩をがっくりと落としていた。要求には答えようと思うけど、向こうは敬語でこっちは敬語じゃダメというのは難しい。
ラミューは王女らしく、気品のある人だ。真紅の髪が鮮やかだし、同じ色の瞳も綺麗だ。顔立ちも綺麗で回復魔法も国で一番というのは凄いなあ。
「えーっと、移動は徒歩を考えてるんだけどラミューとキャサリンは大丈夫?馬車だと目立って仕方がないから歩きが基本だって師匠に言われて」
「速度を私に合わせてくれれば、それで」
「バッチコイですわ!僧侶はただ祈り、学ぶだけではなれませんもの。相応の体力はあるつもりです」
となると、一番体力がないのはキャサリンかな。魔法使いはとにかく勉強と、あとは魔力のコントロールばかりやってる印象だ。師匠の教えを学んでいる時、他の弟子たちがそんな感じだったし。年齢的にも一番下っぽいから、気を付けないと。
ラミューは逆に安心した。僧侶って何故かモーニングスターをぶん回すイメージがある。……いや、実際にぶん回してたっけ。棍棒で殴ったり聖書で殴ったり。聖書のページを引き抜いて、相手に飛ばして魔法を行使する姿とかカッコ良かったんだけどなあ。
「戦い方は外で確認しようか。買う物とか準備いい?」
「ああ。いつでもいいぜ。準備できてなかったらノコノコと王城に来れねーよ」
「大丈夫。調合道具とかも持ってきてる」
「わたくしも大丈夫ですわ。すぐに出発いたしましょう」
「よし。じゃあ行こう。まず目指すのはグンナール火山。そこに魔王城へ繋がる何かがあると占い師の大婆様が助言を下さった。何があるかわからないけど、張り切って行こう」
それからの旅は騒がしくもあり、大変でもあり。
僕もそうだけど旅の常識がないから旅をするだけで大変だったり。ラミューは王族としての生活が多かったから、この世界の常識も結構抜けていて。
街に着いたら個人部屋をとろうと思ったけど、予算の関係で四人部屋をとったり、二人部屋をとったりして恥ずかしかったり。
襲ってくる魔物を倒してレベルアップを実感したり。こんな時勢だというのに、人間同士の衝突が起きて初めて人を殺して、嫌悪感で戻してしまったり。
途中でまた一人転移者が脱落してしまった。選んだ加護は「性転換」と「魔法力増加」という、やはり一つ加護を無駄にしているような人だった。いや、彼もきっと女性になりたかったのだろう。冥福を祈る。
しかしこれで、残りの転移者は四人しかおらず、僕以外の三人が魔王退治に真剣に当たってくれるかわからなくなった。他の国の情報も集めているけど、最近台頭し始めた勇者の名前なんて聞かない。おそらく女性二人がいるはずだけど、全く話を聞かないのは心配になる。異世界に来ることだけが目的だったら、もう望みは叶っている。
そうすると、魔王の脅威に晒されながらも動いてくれないかもしれない。たとえいつかは魔王に滅ぼされることになっても、それで良しとしてしまっているのかもしれない。
なら、なおさら頑張らないと。この世界の住民が僕は好きだ。魔王のような、人間に仇なす存在は許せない。
だから転移者で立ち上がるのは僕一人だとしても。僕は歩みを止めない。僕が必ず、魔王を倒してみせる。
次も20時に投稿します。
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