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2ー7

 いやあ、最近順調だねえ。エルフの国で想定外の出来事はあったけど、なんかわたしが精霊の加護を得てるからかわかんないけど、魔王だって正体言ったのに同盟組んでくれたし。エルフのお偉いさんと交渉っぽいことをしようとしても、「あなた様に誓います」みたいなことばっかり言われるし。

 いやいや、何が琴線に触れたのか知らないけど、絶対それ勘違いだから。わたしただのクソザコ元日本人だから。結局二回目の会合でも魔王軍が提示した条件をほぼほぼ無条件で頷いてくれた。それでいいのか、エルフの国。


 変な加護いっぱいもらったけど、使えそうな奴ないじゃん。色んな人のステータスが見えるくらい?

 そのステータスって言っても、細かい数字が見えるわけじゃなくて。筋力がAとか、スピードがSとか、そういう大雑把なランクが見えるだけ。だから同じアルファベットだとどっちが強いかわかんないんだよね。とりあえず最低値がFで最高値がS、準最高値がAだということは分かった。

 筋力とか魔力とかもわかるけど、内政とか書類仕事とか、トラップ作成とかそういういわゆる戦闘以外の能力もランク付けされていることに気付いて。若干の部署移動を行ったりもした。けど全員のステータスを見れたわけでもないので、一日の半分ぐらいの仕事は魔物との面接だったりする。


 他の人にはステータスが見えないらしい。あ、レベルも見えるけど、あんまり頼りにならないというか。レベル高いのは純粋にどれだけ相手を倒してきたかっていう、キルスコアのようなものでめっちゃステータス高いのにレベルが低い幹部とかもいた。

 んで、ドラゴン部隊はレベルが狂ってた。どんだけ倒したのかわかんないけど、ファルボロスさんが82なのに、ドラゴン部隊は三桁が基本。ドラっちさんに至っては四桁行ってた。ステータスもバカみたいに高かったけど、初手でドラっちさんを人間の国に送ればそれだけで転移者全員消し飛ばせたと思う。

 まあ、人間殺しすぎたら世界のバランス崩れるみたいだから、わたしはできないんだけど。転移者を殺しつつ、生物のバランスを取るなんて大変だなあ。


 そんな考え事をしながらも今日の魔物との面接も終わる。書式を決めておいて、そこで読み取った情報を書いていくだけだから簡単なんだけど、とにかく数が多い。わたしと話せるのが嬉しいのか、面接ついでに環境とか仕事の状況とか、他の魔物との交流を聞いたりするから長くなっちゃうんだけど。

 魔王軍全部を面接するのは無理だね。だからできるだけ幹部の方で目星をつけて面接の数を絞ってもらってる。でも面接をやってみたら魔物の私生活とか見えてくるし、意外な向き不向きが見つかって面白い。種族だけで得意なこととか別れるのは人間を見てたからわかるけど。スポーツ選手と科学者は得意分野とかまるっきり被ってないし。

 仕事は他にもあったけど、今日はもうオフ。魔王城のトラップの視察もしたし、人間の情勢も確認したし、結構仕事したでしょ。というわけで最近の癒しである存在へ手を伸ばす。


「クロー。癒して〜」


「ウナー(しょうがないな〜)」


 机の上で寝っ転がってたわたしの護衛兼使い魔の黒猫、クロだ。見た目まんま丸っとした黒猫なのに、案外優秀というか、テレポートという瞬間移動の魔法を覚えた、逃げるのにうってつけの魔物だ。魔物要素見当たらないけど。尻尾とか体毛とか色とか普通だし。

 クロのステータスは見えないんだよね。まあ、最弱だろう。今わたしの腕の中で好き勝手されてお腹を見せてるような子だし。いやー、モフモフだしかなり懐いてくれてるし、言うことなし。

 ペットって飼って見たかったけど、余裕もお金もなかったし。仕事に行ってる間に死んじゃってたらどうしようって思って買う勇気がなかった。今はそんなこと一切気にしなくていいから思う存分甘やかす。癒される。

 アニマルセラピーって本当にあったんだなあ。愛い奴め。


「セラさん、ミューズ。終わった?」


「もう少しですので、クロ様とお待ちください」


「はーい」


 この部屋には二人、エルフの女性がいる。エルフの国からわたしに仕えるために出向してきた子たちだ。今ではわたしの秘書まがいのことをやってくれている。さっきまでの面接の紙を纏めてくれている。助かるー。全部わたしがやってたら涙目になってたし、魔物は基本戦ったり魔装具を開発したりやることが多いからね。

 こんな雑用任せるわけにはいかなかった。

 セラさんはめっちゃスタイルの良い綺麗なお姉さん。ボンキュッボンッ!という言葉が似合いすぎる、青髪青目のエルフ。見た目はわたしよりちょっと年上かなって思うくらいだけど、エルフって何百年って生きるらしいから実年齢は聞かないことにしている。地雷かもしれないし。お姉さんで良いんだよ。


 ミューズはもうね、年下にしか見えない。十代前半から半ばくらい。幼いって言っても良いけど、エルフの長老がめっちゃ推薦してきたからわたしの側で働いてもらっている。年相応の体つきをしている。フッ、勝ったな。いや、バランスはすごく良いし、腰とか脚とかめっちゃ細くて羨ましいけど。

 ミューズは薄緑色の髪と瞳をしている。結構エルフって髪とか目とかカラフルなんだよね。ただの人間はそこまでカラフルな色をしてないんだけど、エルフは色鮮やか。ミューズの年齢を知らないけど、呼び捨てにしちゃってる。子どもにしか見えないんだよね。実年齢は地雷かも以下略。

 クロと戯れていると、二人の整理が終わったみたい。


「よし。じゃあお風呂一緒に行こうか」


「一緒に、ですか?」


「同じ女なんだし、裸の付き合いも大事だよ。魔王軍ってどうしても女性というか、メスが少ないからね。同性は大事だよー」


 ちゅうこって三人と一匹で大浴場に向かう。ファルボロスさんには今日の仕事が終わりだと伝えて、魔王城の地下へ。

 なんで魔王城には大浴場なんてものがあるのかって?そりゃあインキュバスさんとサキュバスさんたちの美容のためだよ。彼らが美しくなかったら誘惑とかできないからね。

 大浴場に向かっていたサキュバスのグーニャさんも合流して一緒に入ることになる。背中に悪魔の羽、お尻からはクローバーのような先端がついた尻尾がついてること以外は人間にしか見えない悪魔。いやでもそのスタイルからしてボオン!キュ、ボオン!というセラさんをも遥かに超えるスタイルを見ちゃったら人間じゃないかもって思う。


 詳しい仕事内容は聞いてないけど、彼女たちも諜報部隊に分類されるんだとか。諜報部隊も結構情報を色々集めてくれるからありがたい。

 最初セラさんもミューズも、サキュバスの皆さんもわたしと一緒のお風呂とか恐れ多いとか言ってたけど、バカ広いお風呂に一人っていうのは嫌なんだよ。寂しい。

 ゆっくり肩までお風呂に浸かるんだから、楽しく過ごしたいじゃない?


次も20時に投稿します。

感想などお待ちしております。

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