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それからわたしたちは世界を駆け巡った──飛び回った?うん、ドラっちさんアッシーにしちゃってごめんね。ちゃんと一週間に一回は休息日作ったから恨まないでね。
そんなわたしたちはどんな感じだったかというと。
『精霊の加護を得ました。水中で息ができます』
『大地の加護を得ました。魔力の塊たるマナを視認できます』
『世界の加護を得ました。自身を除くステータスの確認ができます』
『動物の加護を得ました。動物の言語を理解できます』
『世界の加護を得ました。武器や道具の詳細を把握できます』
「えーっと、世界樹の枝?うわ、これ魔力の塊なんだ。ってことは魔力を失ったら全快できるってこと?」
「魔法職にはありがたいですな。オレらには関係ないんですが」
「魔法が使えないから?」
「いえ、絶対量が多いんですよ。この前言った一週間ずっとブレスを出し続けたって、三分の一も魔力使わないですからね」
ドラゴンという種族の化け物具合を把握したり。それは最強の種族って言われる。空も飛べて身体も魔物の中で随一の硬さで攻撃力も強くて魔力もほぼ無尽蔵。森を簡単に燃やし尽くすブレスを三週間くらいずっと吐き続けられて、空腹にもならない。
空の王者というより、世界の覇者だった。
「変な鎧。緑ですよ?グリーンスケイルメイル……。リザードマンの鱗で作ってあるんですって。ブレスに少しなら耐性ありだそうですよ」
「性能確認してみます?」
「ドラっちさんのブレスなら一瞬でしょう。リザードマンはドラゴンの亜種なんだから、真のドラゴンには敵わないですって」
使えるんだか使えないんだかな、奇抜な鎧を見つけたり。
「アンデットキラー。短剣ですね。リーチ短くないですか?」
「短剣って言われたそんなもんかと」
「これ、魔王城で使われても、攻撃届く前に遠距離から潰せますよね?」
「それ言ったら剣でも槍でも変わらないですぜ」
アンデッド特攻だったみたいだけど、特殊な攻撃ができるわけでもなく。人間の移動速度じゃ確実な一撃は与えられそうにない武器は何のためにあるのかと思いながら。
「無限の矢筒。矢が魔力で産み出せるんですって」
「蚊ほどのダメージしか与えられないもんを魔力使ってまで産む必要あります?魔法使ったほうが良くないですか?」
「魔法は詠唱が必要だから、状況によりけり?あとは荷物を少なくできるとかですかね」
「ああ。人間はちっこいから、持てる物も限界があるんですね」
やっぱり魔物を相手にするには些か不釣り合いな物を結構過酷なダンジョンで見つけたり。
『No.2の青年が死亡しました。選んだ加護は「物質創造」と「錬金術」です。死因は商売敵による暗殺です。残りは七人です』
「また転移者が死にましたよ。錬金術ってマイナーな魔法なんですか?」
「そもそも錬金術ってなんですかい?」
「あー、この世界にないものだったのかな?」
ファルボロスさんに確認をとってみて、錬金術なんてものがないことを知って。物質創造がどれくらい便利なのか聞いたところ、有から有も便利だが、無から有はとんでもなく便利なのだとか。ただしクンティスに聞いたところ物質創造には結構な額のお金が必要で、だからその二つをセットで加護にしたんだとか。
加護にも色々制約があるらしい。命関係は無理って言ってたもんね。
『精霊の加護を得ました。状態異常にかからなくなります』
『天空の加護を得ました。精神異常にかからなくなります』
「状態異常と精神異常の違いって何?」
「状態異常は毒とか睡眠とか麻痺とかですねえ。精神異常はマインドコントロールとか、インキュバスが見せる夢とかが効かなくなるんだと思います。身体か心かの違いじゃないっすか?」
「へー」
というわけで心身ともに健康になったようで。
「え?マンイーター?人間特攻武器?怖っ」
「そんなもんも入ってるんですねー。人間が人間倒すための武器とか、世も末ですぜ」
なんかまともな刀身をしていない刀を見つけたり。刀身に目がついてるんだけど。キモい。
しかも人間を斬るたびに切れ味上昇とかいう副産物がついてる。これ魔王城で封印したほうがいいんじゃ?存在が人間を戦争に導きそう。
『魔族の加護を得ました。魔力を消費することで全身にバリアーを張ることができます』
「宝箱から魔族の加護なんぞ出てくるなー!」
『魔族の加護を得ました。魔力を消費することで魔法の威力が上昇します』
「魔法が使えない!」
『魔族の加護を得ました。魔力を消費することで移動速度が上昇します』
「天丼!」
『魔族の加護を得ました。使い魔を呼び出せるようになりました』
「あ、それは嬉しい」
全く。魔力もない、魔法も使えない。そんなわたしに魔力を消費して〜なんて無駄すぎる。でも、魔力が凄い転移者に取られなかっただけマシだろうか。ファンタジー世界だし、魔法に憧れる人は九人もいたら一人くらいいそう。
それにわたしが魔物っていう仲間がいるように、この世界の仲間を連れてやってくる可能性もある。うん、一人で何でもかんでもやるよりは仲間を探そうとする人もいるだろう。そんな中に魔法使いとかいそう。
魔王軍の支部──ほとんど洞窟だったり、小さな砦だったり──にも顔を出して、負けそうになったら場所を放棄して逃げて欲しいと伝える。レベルアップという概念があるようで、魔物や人を倒すのではなく、殺すことでレベルが上がるらしい。なら相手を強くしないために、倒されてもいいけど殺されるのは禁止とお願いしておいた。
あと、同族・同所属だと得られる経験値が低いらしく、レベルアップが少ないらしい。うーん、この裏切り防止の世界のルール。ありがたいけど、人間の自滅はあまり狙えないなあ。
模擬戦とかは経験にはなるけど、レベルが上がらないから肉体的成長はないけど、技術とかはつけられるらしい。逆にレベルだけ高くても技術が追いついていないと面倒なだけなのだとか。わたしは技術もなく身体能力もクソザコだから、正真正銘の最弱だ。
そんなわけで、回るべきところはほとんど回った。あと三箇所くらいで巡業も終わり。
人間にも転移者にも会わないけど、ドラゴンが群れで飛んでたら近付こうとしないか。ドラゴンが強いっていうのは世界のルールみたいだし。快適な旅は続く。
次も20時に投稿します。
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