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2−3

 翌朝。ロウル君たちの案内で火口へ。外から見ると休火山なんだけど、火口に入るとまあ、マグマが煮えたぎっていた。それと近付いた場所の中央に大きな魔法陣が。これが魔王城の結界。そのための魔法陣。

 すっごく大きい。人間はおろか、ドラっちさんもすっぽり入りそうなほど大きな魔法陣だ。隠せないじゃん。

 魔法陣に描かれてる文字読めるかなーと思ったけど、読めなかった。これは翻訳してくれないらしい。残念。

 奥のマグマが振動する。火山活動じゃないっぽい。だってマグマから、大きな巨人が現れたんだから。

 全身が鉱石のようなものでできていながら、その鉱石の周りを炎とマグマが覆っている。溶岩魔神さんだ。その体質から、この火山から離れられない魔王軍の幹部。動けない代わりにこの魔法陣を守ってくれる守護者。


「……魔王。それにドラっちか」


「初めまして、溶岩魔神さん。魔王のアユです」


「よっ、久しぶり」


 ドラっちさんは知り合いらしい。幹部でも会ったことのない存在がいるって言ってたけど、それで良いんだろうか。ちゃんと組織化できてる?地方を蔑ろにしてると、後で痛い目に合うんだから。


「して、魔王よ。何か用だろうか。この通り、我は動けないのだが」


「それは教えていただいております。それが理由でこの場所の守護をしてくださっていることも」


「では、なんのために?」


「え?ただご挨拶に来ただけですが。同じ魔王軍ですし」


 お仕事お疲れ様と、視察に。結界を見るのも初めてだったから見てみたかった。

 あと、溶岩魔神さんも確認したかった。一度も会わずに幹部がやられるなんて嫌だし。この魔物はわたしが見殺しにしてしまうかもしれないのだから。せめてどんな魔物だったか、知っておきたかった。

 幹部じゃなければ良いとかじゃなくて。わたしはどういう存在の上に立っているのか知っておきたくて。


「これは、異なことを。魔王であるのならば、城で踏ん反り返っていればいいものを」


「やることがいっぱいあるので。ただ上に立っているだけの存在になりたくないんですよ。現場把握もしたいですし」


「……ふむ。変わった魔王だ」


「そうですか?じゃあ、溶岩魔神さんにお願いです。殺されそうになったら、死んだフリでもして生き残ってください。あなたは人間に殺されて良い存在じゃありません」


 そう言うと、溶岩魔神さんの顔のようなものが若干強張った。もしかしたら水が弱点で、水の魔法とか剣とかで倒されちゃうかもしれないけど、死なないでほしい。それはわたしのワガママだ。

 結局わたしは、わたしのせいで誰かに死んで欲しくないだけ。殺すのはできるだけ転移者と、転移者に協力する相手だけにしたい。命を受け取る覚悟がないだけの臆病者だ。だから無様でも生き残ってほしい。

 武人のような性格の魔物には怒られるかもしれないけど、わたしが巻き込んだ戦いだ。わたしの生存競争に巻き込んだ。なら、彼らがそんな道楽に付き合う理由はない。

 ないんだけど、彼らは魔王という肩書きに従ってしまう。なら、こっちも権力を笠にしてお願いするだけだ。


「死は許さないと?」


「はい。たとえ相手が崇高な相手でも。あなたが認めた相手だとしても。死は許しません。なにせ魔王軍ですから。わたしが魔王になったのなら、わたしが良いと言うまで、誰が相手であろうと死は許しません。ただし、負けるのは良いですよ。極端な話、その魔法陣だって無理に守らなくて結構です。わたしが直々に、魔王城でその相手を迎えるだけですから」


「ふむ……。変わり者かと思ったが、実に魔王らしい。暇つぶしに魔王軍に参加したが、これほど面白い存在に会えたのなら釣り合いが取れる」


「面白いですか?」


「ああ。色々と混じっている。その上で魔物の頂点に立つとは。──あなたになら、忠義を尽くそう。我はあなたのお願いを、あなたが命尽きるまで守ろう」


 混じってる?それにわたしにさっきまで忠義抱いてなかったってことだよね?ドラっちさんたちとは違うなあ。これが魔王城直属の部下じゃないってことだろうか。

 気になることもあるけど、溶岩魔神さんは裏切らないっぽいし良いか。ついでにバッグから通信機と映像機の魔装具を取り出す。


「溶岩魔神さんってこの魔装具使えます?溶かしちゃったりしません?」


「無理だな。完全に溶かす。だがそこに置いてくれ。直属の部下にやらせる」


 呼び出された小悪魔のインプが魔装具の使い方をドラゴンに教わる。これで連絡ができる。報連相って大事だよね。

 この魔装具、ぶっちゃけ仕組みが簡単で携帯電話みたいなものだ。登録された連絡先としか繋がらないけど。魔王城と繋がれば十分か聞いたけど、文句はないらしい。

 溶岩魔神さん自身が使えるわけじゃないから、上司に渡された物を受け取っただけかも。使わなくても良いけどさ。


 それからロウル君たちとも話し合い、ロウル君の部隊はここから撤収することを決めて魔王城に来ることにしたらしい。あの宝箱守ってたんだから、それもそうか。守る物がなくなっちゃったんだから仕方がない。

 ロウル君たちには自力で魔王城に向かってもらい、わたしたちは定番のお空を漫遊しながら次の目的地へ。

 途中でファルボロスさんとも通信をしてみたけど、特に問題はないらしい。空の上でも使えるって凄いな、この魔装具。











「ククッ。魔神たる我が人間と精霊と魔物の混ざり物に従うとは……。ああ、では神としてその歪さを見守ろう」


次も20時に投稿します。

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