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1-7 でかいあいつが現れた

 

 やばい。なんだこれ。


 背中から踏みつぶされ、僕はうつぶせに倒れた。肩から足の先にかけて上に何かが乗っかっている。お、重い。肺とお腹が圧迫されて息が苦しい…!なんだこれ!


「メ、めう………!」


 力の入らない腹に頑張って空気を吹き込み、かろうじて助けを呼ぶ。メルはこちらを振り返ると、「え!」と声を上げた。


「なにコレ………こんなのメル見たことない……」


 なんだよ、何に襲われたんだよ?体勢を変えることはおろか、頭もうまく上げられずメルの顔も見られない。早く、続報を早くと祈る気持ちでメルの足元を見つめる。


 ………


 おい!驚くのはいいから教えてって!肺が潰れる……!

 焦る僕をよそに少し間が開いたあと、メルはぼそっと呟いた。


「………こんなに巨大なスライム、いるんだ……」


 でかいスライム!あいつか!

 

 覚えている。このダンジョンだけに出るちょっとおかしなやつだ。懐かしい、始めて見た時めっちゃびびったな。ラルクの身長の倍ぐらいの高さと、それと同じくらいの横幅。でっぷりと太ったかわいいやつ。あいつに乗っかられてんのか。そりゃ重いわけだ!


「このでかスライム!ラルクの身体に触らないで!!!ルミエールクーポワール!」


 ようやく動き出したメルが魔法を飛ばす。シュパンッ、と魔法が飛ぶ音が聞こえた。やったか?

 が、背中はちっとも軽くならない。ぐにぐにと僕の首元まで押しつぶし始めている。


「え、強い……!」


 その後も何度も魔法を飛ばすも、びくともしない。


「効かない……魔法がダメなら武器で!」


 メルの足が近づき、軽やかに飛び回った。メルの近接武器は短剣だ。これで切りかかってるのだろう、土ぼこりが舞う。が、やっぱりびくともしない。


「どうして……強すぎる、弱点とか何かないのかな……」


 不安げなメルの声。

 弱点……なんだっけなんだっけ……


 確かあったはずだ。普通のスライムは魔法にも近接にも弱い。だけどこいつは防御値が高くて全然効かないんだ。でも確か、有効な倒し方が1個あったはず……ええとええと……

 息がどんどんできなくなるのに焦りながら、思考を巡らす。


 そうだ!思い出した!


 僕は、圧迫された肺に鞭を打って息をたっぷり吸い込んだ。胸が潰れて苦しいが、なんとか絞り出す。


「……メル!炎だ!炎の魔法!」


 無理に大声を出したせいでカハッと咳がもれる。

 首元のぐにぐにした触感がついに頭まで覆った。顔が地面に押し付けられる。ぐへえ!

 口の中に砂が入り、頬も摩擦でざりざりとこすれる。声が出せない。ついでに耳もふさがれたのか、音も聞こえなくなった。


 肌に当たる、冷たくてぶにぶにしたゼリーのような感触。音もなく、息もできない。水の中にいるみたいだ。く……息が苦しい……!

 頼むメル、今の言葉が届いててくれ……!


 祈るような気持ちで待つ。

 すると、急にふっと肺が軽くなった。少しずつ音が聞こえてくる。スライムが蒸発する、シュウウという音が小さく耳に届いた。


 どうやら、助かったようだ。

 軽くなった背中に安心して、ふうう、と肺にゆったりと息を送り込む。危ねえ、窒息するかと思った。


「ゲホッ、良かった……ありがとう、メル」


 するとメルは僕の前にかがみ、ちょっと驚いた様子で僕を見た。


「すごい、よく分かったね……」

「まあ、神の使いだし。こんなもんよ」


 軽く死にかけたけど。


「へー。ちょっとはやるじゃん」


 そういうと、メルは立ち上がってすっと歩き出した。

 あれ?今僕、メルに褒められたんじゃない?


「なに?ようやく神の使いだって信じる気になった?」

「うーん、ヘタレだしまだ微妙だけど、まあちょっとは助かったよ。早くエクスカリバー探して上に戻ろう」


 スタスタと歩いていくメル。超ドライだわ。やべえ置いてかれる。

 慌てて立ち上がりメルの背中を追った。まあでも、ちょっとは役に立っただろ。よし。

 僕はホクホクして、メルの隣に並び歩き出した。




 暗い道をひたすらまっすぐ進む。途中から少しずつ上り坂になってきた。このままちょっとずつ上に戻りたいところだ。

 道なりに進む。結構な距離を歩いて不安になってきた頃、背の低いトンネルが現れた。1人ずつかがんでようやく通れるようなサイズだ。


「どうしよう。くぐる?」

「ちょっと怖いけど……他に頼りは無いし、ちょっとずつ上り坂だし。このまま行ってみよう!」


 僕を先頭に穴に入った。暗い足元に気をつけながら、壁に手を置いて少しずつ進んで行く。すると、トンネルの先から少しずつ光が差してきた。

 よし、幸先がいい!暗いのはやっぱり怖いからな、ちょっと安心した。


 奥まで行き着き、穴を出る。


 広場のように開けたそこは、辺り一面キラキラと輝いていた。


 ホタルのような光る何かがふよふよと飛び、その光を、あちこちにむき出しに生えている鉱物が反射している。

 ピチャン、という水の音に目を向けると、右手に川が流れていた。


「よし!なんかすごいとこに出たぞ!」

「やった……あ!あれ!」


 メルが指さした先。

 そこには、僕らがずっと探してきた剣、エクスカリバーがキラリと光って横たわっていた。


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