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地縛霊は役に立つ  作者: 古新野まーち
4/7

妹と山田肇

肇には妹がいる。純という似ても似つかないがどこか似ているタヌキとアライグマのような差のある妹である。

「おにいちゃん」と発音に漢字が含まれている様子の一切ない純の言葉が、肇は大好きだった。その愛はもしかすれば、自分がどうあがいても勝ち目のない鈴音さんへの劣等感の裏返しなのかもしれないという危機感を抱いていた。

「おにいちゃん、きいてる?」

「ごめん、ボーッとしてた」

「もうっ」と肇の背中をバシンと叩いて、彼女はスマホを見てくれと言った。

純のスマホに映し出された写真を肇はのぞきこんだ。

コンビニだった。最寄りではいが近所のコンビニで駐車場が広いためトラックドライバーの出入りが多いのが特徴らしい。夜になるとヤンキーがたむろしているので肇はあまり立ち寄らない。肇はヤンキーになる同年代の思考回路を全くシュミレートできないため、彼らがどうして暴力や暴言や法律を破って煙草やアルコールに手をだして自分より弱そうな者たちから金品を奪うのか分からない。つまり、肇はヤンキーが怖いのだ。

「で、どうしたのそれが?」

「ほんとに何も聞いてないんだ」と純は驚き呆れた。

「ここに、おばけがいるねんって」

彼女の小さな指が写真を拡大した。そこには確かに人の手に見えなくもない何かが映っている。

「クラスでコンビニの地縛霊って話題になってるねんな」

コンビニの地縛霊とはなんとも拍子抜けするネーミングだがまぁ小学校低学年にしては頑張った方かと、肇は批評した。思い返せば、小学校の図書館には大学の図書館と違って怪談の本が充実していた。

「でさ、おにいちゃん。うちに変わって撮影してきて?」

「え、いやだ」

「バカ! ヘタレ!」

純は舌を出してから、鈴音さんに頼むもんとリビングから出ていった。湯上がりの母と入れ違いになり、状況が分かっていない母は、「ほいでケンカの原因は?」ととんちんかんなことを聞いた。



真っ黒の革ジャンは闇によく溶けた。叔父からのお下がりで袖の糸がほつけているところを除けば、彼のお気に入りの一着だ。

「でさ、おにいちゃん、たぶん地縛霊が怖いからって純の話を無視するんだよ。ひどいよね」

「そうだね、肇くんはもっと純ちゃんと私に優しくするべきよねぇ」と鈴音さんは後ろを振り返って口元を緩ませた。肇が尾行をしていることに気がついているらしい。

――なんで分かったんだ?

距離は十分にとっている。目立たない服も着ている。人混みもそれなり。帰宅途中のサラリーマンたちを挟んで彼女たちを尾行している。それでも鈴音さんは肇がいることに気がついた。

コンビニはすぐにたどり着いた。ハイビームで走行する車が彼女たちを照らした。あやうく純に気がつかれるかもしれないほどの距離にまで接近していた。

「ここ、ここ」と純に手をひかれる鈴音さんは辺りをぐるりと見渡した。そして「私にはおばけ見えないなぁ」と純に言った。「うちもみえない」と純は残念そうに言ってから写真を撮った。鈴音さんも写真を撮っていた。

コンビニから店長らしき人物が出てきて、写真は他のお客様のご迷惑になるから辞めてくれと注意していた。もう何度も同じ事を言っているのだろう、その人の顔は疲れが色濃く出ていた。

二人が帰路についたので、肇も帰ることにしたが、鈴音さんからラインで写真が送られてきた。

そこには、頭を割られている女の姿が映っていた。

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