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戦場の死神


 テントの屋根に激しい雨の音が打ち付ける。


 入り口から1人、また1人と血を流した兵士達が工場のベルトコンベアーのように次々と運び込まれてくる。


 戦場では1人の兵士の命など弾丸と同じくらいの価値に成り下がる。


 殺してくれという声が絶え間なくこの狭い空間を埋め尽くす。


 そして今自分の前にもまた、死を望む兵士が1人。


 「頼む、殺してくれ。もうあの地獄には行きたくない。行くくらいなら死んだほうが楽だ」


 腹部から大量の出血。


 両手を躊躇なく腹部で押しつけ、簡易魔法で回復を図る。


 兵士はもがいて何かを言っている。


 だが、耳に入ってこないように別のことを考える。


 気付いたら、その兵士は再び戦場へと赴いていた。


 無限と続くこの作業。


 ふと気づくと、兵士たちはこちらを今にも殺したいという殺意を向けて睨んでいた。


 一度死を体験した者にもう一度その恐怖を味合わせている。

 

 これは果たしてその者を治しているのか?


 疑問は徐々に確信へと変わった。


 

 我が国イスタニア王国と隣国アークボルト王国との戦争は終わった。


 実際には鎮静化された。


 一度焼けた野原はいつまでも燃え続けない。


 芝がなくなれば自然に火はなくなる。


 しかし、そこはいつでも環境は備わっている。


 あとは着火剤さえあれば簡単に火はつく。


 今の状態は一時的なものであり、いずれ必ずこの惨状は繰り返す。


 イスタニア歴582年、一時、戦争は治まった。


 同年、俺は地上から1000メートルの牢獄へと監禁されることとなった。


 罪状は国王殺し。


 懲役5000年。


 両手、両足は鎖で繋がれ、脱走は完全に不可能。


 ありとあらゆる罰を受けた。


 斬首刑、ギロチン処刑、数えたらキリがない。


 だが、生きてしまった。


 牢の前には必ず2人ずつ監視が24時間ついている。


 唯一の楽しみは朝晩二回出るパンと水のみ。


 そして、100年という歳月が経った。


 見慣れた看守は勿論のこと、死んでいった。


 


「こいつ、知ってるか?百年間、この牢に入っているらしいぜ?」


「嘘をつけ、なら何故歳をとっていない?」


「それはわからないが、100年前の戦争の際、国王を殺したのはコイツらしい。」


 看守達はいつも俺のことをこう話す。


 だが、信じているものはほぼいない。


 いつの日か俺はこう呼ばれるようになった。


      ブラック・シーカー

 


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