夕空が脅す
あぁ、空が赤いねと
童子は誰に言うでもなく呟き
辺りを見れば暗くなりゆく景色に
先程迄友人だった大木を見た
あの大きい枝に身を委ねた記憶に
もう一度寄り縋るように
あどけない童子は木へ向かった
しかしそこには化け物がいたのだ
あぁ、可哀想な童子よ
すっかり暗くなった空の下
あの大木は真っ黒な化け物に見えただろ
大きい手を振りかざし
頭からかぶりついてくるような
童子は疑問に思うだろう
朝方はあんなに楽しく遊んだ友人が
恐ろしい姿に変わっていて
あの楽しかった記憶を否定しないよう
空を指さし童子は糾弾する
赤くて暗い空のせいだと
夕空は決して脅してなどいないのに
貴方の純真な、残酷な
初めての悪意