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2−3

「だから、覚えていると言っているんですよ」

 トートは語気を強めて言いました。

「いいですか? ちゃんと確認してくださいね」

 そう言った後トートは、ルボたちには分からない言葉を喋り始めました。それは抑揚がほとんど無く、脳に直接響くような、心臓を誰かに握られているような、気分の悪くなる発音でした。

 トートが言葉を紡げは紡ぐほど、本を見ている狩人の顔色は青くなっていきました。

 その様子を見たトートは、最後に小さく、今までとは少し違う言葉で二、三語呟くと、一度大きく手を打ち合わせ、呪文を中断しました。

「どうです? 合っていましたか?」

 肩を竦めるトートに、狩人は言い捨てました。

「このっ、外れ物!」

 トートの目つきが鋭くなります。

「俺のことをいくら外れ物と言おうが構いませんがね。それよりも、自分の親を見捨てて、自分の娘を使ってこんなことしてるあんたのほうが、よっぽど化け物だよ。どうせ、娘を実験台に差し出す代わりに、この子を術に耐えられる身体にしてくれ、とでも言ったんだろ」

 トートの口調は本来のものに戻っていました。狩人に歩み寄るローポの爪先が、円に触れました。

「ちょ、この円を消したら結界が……」

 狩人が今まで以上に慌て始めました。地面に書いてある模様が崩れると、狩人を守っている結界が壊れ、狩人がこの世から消えてしまうのです。しかし、円から出ることの出来ない狩人には、成す術がありません。

「そんなこと知るか」

 トートは爪先を捻り、円の一部を消しました。

「うわあ!」

 狩人は頭を抱えてしゃがみ込みます。

「何をやっているのですか?」

 そこにライリーを連れたルボがやってきました。ルボはライリーと手を繋いでいます。

 ルボはトートが狩人と話している間、ライリーを円の中から無事に連れ出していたのでした。トートに言われた手順にしたがって模様を消していったのです。

「……え?」

 狩人は何も起こらないことに疑問を抱き、つぶっていた目を開けて、トートたちを見上げました。

「どうして、何も起こらないんだ。術の反動が来るはずだろう?」

 呆然と呟く狩人の腕を、トートが掴み、そのまま引き上げました。

「術を中断するのにもちゃんとした手順があるんだよ。そんなことも知らずに術を使うな」

「まあまあ。トート君、落ち着いてください」

 今にも噛み付きそうな勢いのトートに、ルボが声をかけました。そして、安堵している狩人にも言葉をかけます。

「あなたもそこでじっとしていてください。逃げたらどうなるか……分かりますよね?」

 狩人はルボの鋭い視線に射抜かれて、呆然と立ちすくみました。

 ルボは、今度はライリーのそばにしゃがみ、目線を合わせて言います。

「ライリーちゃん、あの後君の家に行かせてもらったけど、おかあさんは血を吐いて倒れていたんだ。残念ながらもう死んじゃっていたけど――」

「残念なんかじゃないよ」

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