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2−1

 うっそうと茂る森の中を、トートとルボが協会に向かって歩いていました。

 今度は迷わないように、トートが一歩前を歩いています。

「さて、あの死体の始末も済んだことですし、さっさと協会に報告しますか」

 ルボが言いました。

 あの後、おばあさんの死体はトートとルボが家のそばに埋めました。

 村人などが死んだ場合、この地域では土葬するのが一般的です。死体を燃やすのは、死者への侮辱と取られるからです。しかし、既に「人」ではない外れ「物」の死体などは、一般人に見つかってはいけないこともあり、燃やすのが規則になっています。

 けれどもトートとルボは、おばあさんが煮詰めていた紫の液体が床を腐らせたことを思い出し、燃やす代わりにその液体を振り掛けました。

 もしかしたらその様子がトートには刺激的だったのかもしれません。

 トートの返答はありません。

「結局、ライリーの前でおばあさんが死んでしまったことを気に病んでいるのですか? あれは不可抗力ですよ。それとも、おばあさんの死体のほうでしょうか」

 ルボが慰めの言葉をかけると、トートは足を止めて振り返りました。

「ルボさん」

「なんですか?」

「ずっと気になってたんですけど、さっきの男の人、外れ物とは面識が無いって言ってましたよね?」

「……ええ」

 いきなりの質問に困惑しながらも、ルボは答えました。

「でも、戸籍の上では彼らは親子なんですよ」

「どうしてそんなことを知っているのですか?」

 トートの目は確信に満ちていましたが、ルボはあえて問いかけました。

「覚えているんです」

「外れ物の対象である、あの老婆についての資料は僕も貰いましたが、そこにはそんなこと書いていませんでしたよ。ましてや、君は僕の資料より情報量は圧倒的に少なかったはずでしょう?」

「違うんです。覚えているんですよ、今まで見たものを全部」

「……それが君の能力ですか?」

「はい。――十年ぐらい前に、森向こうの村に住んでいたことがあるんです。そのときに、協会の名簿を見せてもらいました。そこには確かにあのおばあさんと狩人は親子だと書いてありました」

 それを聞いてルボは、いきなり歩き出します。

「時間が惜しい。歩きながら話しましょう」

 トートは慌てて、ルボよりも一歩前を歩き始めました。二人は足を速めます。その状態のままで、トートは言いました。

「思えばいろいろと変なんですよ。ライリーちゃんが、あんなにも早く眠りから覚めておばあさんの家に来れたこととか、今日に限ってタイミングよくライリーちゃんのお父さんが現れたこととか。あの森を人々が通ることはほとんど無いっていうのに」

 それを聞いてルボは、顎に手を当てて、思い出すように言いました。

「そういえば、確かにおかしいですね。そういえばライリーは、母親に頼み事をされたのに、母親は死んでいるだなんて変なことも言っていましたし……」

「でしょう?」

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