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変化  作者: 祝いの子
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I found myselve in love with you.


今日も相変わらず、日々何一つ変わらない教室の隅にいつも通りの私はいた、はずだった。声がする。ふと顔を上げると良美がいた。落ち着いた声で「おはよう」と言った。彼女は笑った。今まで話したこともないその子におはようといわれ間抜けな顔をしていたに違いない。何も言い返せないまま微妙な空気から逃れるように便所に向かった。恥ずかしかった。おはようの一言も返せない自分がとても恥ずかしかった。



 教室に戻るとチャイムが鳴り一時間目が始まった。先生が板書を促したのち、黒板にいろいろと書き出した。私は筆箱からシャープペンシルを取り出し。ノートと黒板と交互に目を移し授業を堪能していた。板書を誤った。消しゴムを取り出そうと手探りで筆箱の中をガチャガチャと荒らす。ない。この静寂な空気を乱したような気がして、シャーペンについた小さな消しゴムで消す。きれいな白色が黒く変色していく。ある程度板書がひと段落し、机の周りをきょろきょろと探す。見つからない。今日一日は小さな消しゴムと過ごさなくなったことを覚悟した。板書の間違えを減らすように努めた。そうこうしている間に一時間目が終わった。休憩時間になり、消しゴムを探す。きょろきょろきょろきょろと。結局見つからず一日小さい消しゴムで切り抜けることを再認識した。



 次の時間の用意をしようと気が変わり周りを見渡すと教室の戸締りを頼まれた。教室を出る最後の一人になってしまった。私は急いでカバンから体操服を取り出し更衣室へと歩き出す。少しすると同じ方向に進む女の子を見つける。良美だ。朝のおはようの仕返しにおはようといった。彼女は笑い「もう二時間目だよ」といった私は恥ずかしくなり早歩きで逃げるように更衣室へ向かっていく。その背中は小さかったのだろう、振り返れば口を隠し目じりの下がったやつがいるのだ。この苛立ちを運動音痴の私が体育で収めようとしたのだから相当応えたのだろう。とてもちっぽっけな男である



 何一つ苛立ちを解決できないまま体育を終え、片道2分程度の移動を急ぐ。いる。またあいつがいる。意識していることが悟られないようにとなりを涼しい顔で抜いていく。

「おーい」

やつの声がする。私じゃないと思いそのまま行くと今度は隣にいた。

「君の机の近くで消しゴム見つけたんだけどさ、一時間目消しゴムなかったんじゃない?」

こいつだったのかという感情と、拾ってくれてたのかという、相反する感情がぶつかり合う。

「なかった」

ひねり出したたかが四文字の言葉だ。笑顔になった良美がいる。ありがとうも言えずに見つめてしまった。

「なによ~」

怪訝な感情が笑顔に混じっていき目をそらした。

「ごめん」

恥じらいを持ちつつ出した言葉だ。私はこれが恋だということになんとなく気づいた。

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