プロローグ
時は、西暦2025年9月4日・・・。この日、アジアの東の果てにある島国「日本国」を、数奇な天変地異が襲った。
微かな地震が日本全土を襲ったかと思えば、突如として人工衛星や諸外国との通信が全て絶たれたのだ。経済、通信は一夜にして史上最大の混乱を極め、国際便の飛行機を初めとする全ての交通機関が運休を余儀なくされた。困惑と不安、動揺に充ち満ちていた日本国民に対して、政府は2度目の玉音放送を敢行、一先ず大きな混乱を収める事に成功する。
そして政府は朝鮮半島に駐留中の米軍に物理的接触を計る為、佐世保より護衛艦を出航させた。だが、朝鮮半島がある筈の場所に陸地は無かった。その後も政府はカムチャツカ半島、グアム島、台湾、華南地方に向けて艦や航空機を派遣したものの、有る筈の陸地を見つけられなかった。
ここで政府はある可能性に思い至る。もしかして、我々は何処か別の世界に迷い込んでしまったのではないか・・・と。
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2025年9月11日 旧日本海上
天変地異から1週間後、1隻の護衛艦が洋上にて停泊している。艦長以下3,000名近い艦の乗組員たちは、数時間前に甲板のカタパルトから発進した艦上戦闘機からの報告を今か今かと待っていた。
『こちらジャック1、北西500km、まだ陸地は見えません』
「こちら『あかぎ』、了解。そのまま直進を続けよ」
本来なら「日本海」と呼ばれていたはずの海域から、北西方向へ飛び立った艦上戦闘機「F-35C」からの報告が「あかぎ」の戦闘指揮所に入って来る。海自と空自が共同で周辺海域の探査を続けること1週間、今日は本来なら沿海州とよばれる地域が存在していたはずの領域を探査していた。
「今日も駄目か・・・」
戦闘指揮所にてF-35Cからの報告を聞いていた、「あかぎ」艦長の安藤忠一等海佐/大佐は残念そうにつぶやく。今日も収穫無しか・・・皆がそう思っていたその時、突如として歓喜の色を見せるパイロットの声が聞こえて来たのだ。
『こちらジャック!、北西630km、陸地発見!』
「本当か!?」
安藤一佐はパイロットの言葉を歓喜の声で迎える。F-35Cから送られて来た待ちに待った報告に、他の乗員たちも喜びを隠せないでいた。
「文明はどうだ?存在するか!?」
『はい。沿岸に人の住む町が見えます!この島には文明が存在しています!』
パイロットの更なる報告に、乗組員たちは更に浮き足立つ。
「よくやった!すぐ帰還せよ!こちらも直ちに陸地発見を政府に報告する!」
『了解!』
指揮官から帰還命令を受けたF−35Cはそれから40分後、発進母艦である戦闘機搭載型護衛艦「あかぎ」の滑走路に降り立った。
その後、日本政府は哨戒機や戦闘機を用いて、この新発見の島の調査を秘密裏に開始した。