忠臣の乱心
1月12日 アルティーア帝国 首都クステファイ 軍事局
軍事局大臣であるシトス=スフィーノイドの執務室に、海軍長のクラウゼ=サイロイドと陸軍長のセッタ=パラクリンが入室していた。彼らは背筋を伸ばしながら、上司であるシトスの第一声を待つ。
「・・・分かっているとは思うが、セーレン、そしてニホンへ派遣する艦隊について・・・皇帝陛下の御意志により総兵力を派遣することになった」
シトスが口を開く。彼が述べたのは、先程の“玉座の間”での出来事についてであった。次の失敗は一族の死を以て償うという脅しと共に、出撃可能な全ての兵力をセーレン王国へ差し向ける様、皇帝から命令が下されたのである。
「総兵力での出撃となると、龍や陸軍兵士の移動を考え、最短でも1ヶ月ほどの延期を要しますが・・・」
陸軍長のセッタは、総兵力を出撃させる場合の懸念を示す。出せる兵を全て出すとなれば、当然それなりの時間は掛かるだろう。
「かまわぬ。どうせ敵は逃げはしない」
「・・・」
シトスの命令を受けたクラウゼとセッタの2人は、一礼した後に大臣室を退出した。斯くして、「首都警備隊」「国境警備隊」「属領の治安維持軍」などを除き、軍事局に属するほぼ全ての兵力がニホン侵攻のために徴用されることとなる。
〜〜〜〜〜
1月20日 セーレン島 セーレン王国
帝国軍による支配から脱出したセーレン王国は、復興のために新たなスタートを切っていた。
セーレン亡命政府は再び祖国に足を付けたことで「臨時政府」とその名を変え、帝国軍とセーレン王国軍の激戦の為に、激しい損傷を負っていた首都セレニアに代わる暫定的な首都として、比較的損傷の少ないシオンにその本拠を設置した。
また、アルティーア帝国軍の後始末も順調に行われており、シオン市内では奇襲攻撃の際に基地から逃げ出した残兵たちが、米海兵隊員により順次拘束されている。また国内に散らばり、各地パルチザンの鎮圧任務についていた残存の帝国軍は、最大の本拠地を失うことで鎮圧する側からされる側へと変わり、各地で“元”パルチザンによる鎮圧攻撃に対して抵抗を続けているが、いずれ全てが制圧されるのも時間の問題となっていた。
暫定首都シオン 湾港部 日本軍基地司令部(仮)
アルティーア帝国軍を駆逐してセーレン王国を解放した自衛隊は、内陸部での滑走路建設と並行して、帝国軍基地の跡地に通信設備を含む司令部を建設していた。そしてプレハブで出来た司令部には、解放軍である日本軍に救いを求めるセーレン人が詰めかけていたのである。
「大陸に攫われた私の娘を・・・どうか取り戻してください!」
「・・・何とか、ウチの村を救済しては貰えないか。人手が足りないんだ」
司令部への嘆願を行う民衆を、陸上自衛隊員からなる駐屯地警衛隊が抑えている。彼らは万が一にもシオン市民が司令部へ侵入しようとしたならば、やむを得ず射殺しても構わないと命令を受けていた。
日本軍基地司令部(仮) 第一司令室
日米合同艦隊の司令である長谷川誠海将補は、第一司令室の窓から司令部に詰めかける民衆の様子を見下ろしていた。そんな彼の下に1人の幹部自衛官が訪れ、下の様子について報告をする。
「・・・我々に救済を求めるシオン市民が後を絶ちません。特に、奴隷としてアルティーア帝国に連行された者たちを救って欲しいという嘆願が多く、対応に苦慮している状況です」
「いやぁ・・・正直、そこまで面倒は見切れないというか、何と言うか・・・」
長谷川は頭をポリポリと掻きながら、シオン市民の要求に辟易としていた。自衛隊、そして在日アメリカ軍の目的は、あくまで日本を勝利に導くことであり、セーレン人の面倒を見ることはセーレン王国軍が行うべきことであって、大陸に連行されたセーレン人の救済を求められても、日本側としては困る。
「・・・まあ、首都や主要都市であれば、帰国を求めるセーレン人に声を掛けることぐらいは出来るか」
長谷川はアルティーア帝国の首都を制圧した後のことを考える。その時、もう1人の隊員が司令室の扉を叩いた。入室の許可を言い渡すと、折りたたまれた1枚の紙を持って、その隊員が入って来る。
「先程、王宮のヘレナス女王陛下より文が届けられました。内容は、“ささやかながら、祖国奪還を祝う晩餐を執り行うので、ニホン軍の将たるマコト=ハセガワ殿とその部下の方々には、是非ともご参加願いたい”とのことです」
「・・・ほぉ?」
王家から届けられたという文の内容を知った長谷川は、上がり調子の奇妙な声を上げた。女王直々に自分たちを晩餐に招待したいと言って来たのだ。
「そうだな・・・鈴木海将補とロドリゲス大佐、秋山一佐に連絡を付けてくれ」
「了解!」
艦隊司令の命令を受けた隊員は、敬礼しながらその命令を拝聴する。
その数時間後、王宮から派遣された二頭立ての馬車が、彼らを迎えに司令部へとやって来た。長谷川を初めとする4人は、公の招宴に出席する為の礼装に身を包み、迎えの馬車に乗ってヘレナス女王の住まう“旧シオン領主の屋敷”へと向かう。
・・・
同日・夜 シオン市 暫定王宮(旧シオン領主の屋敷) 門正面
2人の将官である長谷川海将補と鈴木海将補の他、陸上自衛隊の代表である秋山武史一等陸佐/大佐と、在日米軍代表であるアントニー=ロドリゲス海軍大佐の合計4名を乗せた馬車が、間も無く王宮へ着こうとしていた。
その為、彼らを晩餐会場まで案内する様にシモフ=ラクリマル近衛師団長から命令されていた1人の若い近衛兵が、屋敷の門の前に立っていた。そんな彼の下に、1人の男が近づく。それが上官であることを知った若い近衛兵は、その男に敬礼を捧げた。
「セ、セシリー将軍! こんな所でどうされましたか?」
若い近衛兵の下を訪れたのは、元パルチザンリーダーで、現在はセーレン王国軍の将軍に復職していたセシリー=リンバスだった。何故そんな男がこんな場所へ来ているのかと、若い近衛兵は疑問を呈した。だが、彼はその問いかけには答えることはなく、若い近衛兵に命令を告げる。
「ニホン国の連中は私がご案内する。お前はメネラス殿下のところへ行ってくれ」
「は、はぁ・・・?」
将軍の指示を受けた若い近衛兵は、首を傾げながら持ち場を後にする。その直後、長谷川たちを乗せた馬車が屋敷の門前に到着した。
いつもの制服とは違う礼服に身を包む彼らの姿を見て、セシリーは一瞬だけ憎悪の籠もった顔をしたが、すぐに表情を戻すと、彼らに向かってにこやかな笑みを浮かべた。
「ニホン軍の方々・・・ようこそお越しくださいました」
「貴方は確か・・・セシリー殿でしたか。将軍職ともあろう方にお出迎え頂けるとは思ってもいませんでしたよ」
セシリーの顔に見覚えがあった長谷川は、彼がセーレン王国軍の将軍であったことを思い出す。
「これはこれは、私の名などご記憶頂けていたとは、これは恐縮千万。私はヘレナス陛下より皆様をご案内せよとのご命令を賜っております。晩餐まではしばし時間がありますので、控え室の方にご案内致しましょう」
セシリーはそう言うと、長谷川一行を門の中へと招き入れた。市街地と屋敷の敷地を隔てる塀の内側にはかつて綺麗に整理された庭園が広がっていたが、アルティーア帝国兵によって荒らされた為、今はその面影がわずかに見られるのみである。
その後、長谷川たち4名は、セシリーに先導されながら屋敷の中へ入って行った。
暫定王宮(旧シオン領主の屋敷) 晩餐会場
その頃、晩餐会場では祝宴の準備が着々と進められていた。会場の中央に置かれた長テーブルには参加者たちの食器が並べられ、燭台には炎が灯っている。部屋の最奥に当たる上座には2つの椅子が設置されており、1つは主催者であるヘレナスが座る椅子、そしてもう1つは主賓である長谷川が座ることになっていた。
「おい・・・お前、こんなところで何をしている?」
会場の準備をしていた近衛師団長のシモフ=ラクリマルは、会場内をうろうろしていた部下の近衛兵を呼び止める。その兵士は、長谷川たちを晩餐会場まで案内する為、本来ならば外の門の前に立っている筈だったからだ。
「はっ! 先程、セシリー将軍にメネラス殿下の下へ向かう様に命ぜられたので・・・」
「・・・?」
その若い近衛兵は、敬礼しながら此処に居る理由を告げた。そんな命令が出ている筈が無いと、シモフは怪訝な表情で首を傾げる。
「それで・・・セシリー将軍は何と?」
「“来賓は私が案内する”と仰っていました」
「・・・」
部下の言葉を聞いて、シモフは大きな不安を抱く。明らかに日本軍を嫌っていたセシリーが、日本人のエスコートを申し出るなどあり得ないからだ。
その後、異変を感じた彼は、この一件をすぐさまヘレナスへと伝えた。事態を知った彼女は、眉を顰めながら付近に居た近衛兵たちに命令を出す。
「・・・すぐに、セシリーとニホン人の方々を見つけ出しなさい」
「はっ!」
女王の命令を受けた近衛兵たちは、屋敷内に居る筈の彼らを探す為、蜘蛛の子を散らす様に晩餐会場から出ていった。
屋敷内
その頃、長谷川海将補、鈴木海将補、秋山一佐、そしてロドリゲス大佐の4人は、晩餐の控え室という部屋の前へ案内されていた。
「晩餐の準備が整うまでこの部屋でしばしお待ちを・・・さあ、どうぞ扉をお開けくださいませ・・・」
「・・・?」
客人に扉を開けさせるのか、それがこの国での作法なのだろうか、長谷川はそんな事を思いながら、セシリーに促されるままその扉を開ける。すると、部屋の中には薄暗く狭い空間が広がっていた。
「これは、控え室というより・・・物置?」
セシリーが控え室だと告げたその部屋の中には、椅子もテーブルも無く、モップと箒とバケツが並べられていた。鈴木がつぶやいた通り、その部屋は控え室などではなく、掃除道具の物置だったのだ。
「・・・セシリー殿、これはどういう・・・!?」
自分たちを物置まで案内した真意を問うため、長谷川たちは背後に立っていたセシリーの方へ振り返る。その時、彼らはようやくセシリーの心の底に眠る憎悪を目の当たりにすることとなった。
彼は長谷川たちに対する明らかな敵意をむき出しにしながら、腰に差していた剣を彼らに向かって構えていたのだ。
「・・・何の真似だ」
突然の凶行に走る案内人に、秋山一佐がドスの効いた声で問いかける。するとセシリーは、ゆっくりと口を開いた。
「この国には、貴様らの様な穢らわしい蛮族が棲み着いて良い道理など欠片も無い。即刻、この国から立ち去って貰う。せめてもの情けだ、素直に従えば命だけは勘弁してやろう」
「・・・何だと?」
セシリーが告げた言葉を聞いて、長谷川は顔色を変える。セシリーの表情は、彼が長谷川らのことを酷く見下し切っていることを全く隠さないものだった。
「・・・ほぉ〜? それは女王陛下の御意志ですかな?」
鈴木は今にも飛びかかりそうな長谷川を抑えながら、セシリーの行動がヘレナスの命令に依るものなのかどうかを問いかける。
「・・・そうだ、そうであるに決まっている! お前ら蛮族がどんな小汚い手を使ってあの方を脅迫したかは知らないが、私はこの国を貴様らの薄汚い魔の手から護る為に行動している! 陛下が喜ばれぬ筈が無い!」
セシリーは声を震わせながら答えた。彼はまるで、自身を無理矢理納得させるかの様な素振りを見せる。そんなセシリーの言動を目の当たりにして、鈴木はこれが彼の独断専行であることを悟った。
「・・・汚い手も何も、基地の建設はこの国をアルティーア帝国から救った見返りとして、女王陛下に認めて貰ったものさ。私が言うのも何だが、我々は仮にも、この国にとっては恩人では無いのかね?」
「アルティーア帝国軍など・・・パルチザンの力だけで追い払うことが出来た! お前たちはただ余計なことをしただけだ!」
「・・・?」
鈴木が述べる正論もセシリーの耳には届かず、彼は支離滅裂な言論を展開する。そのアルティーア帝国軍に完敗を喫して、国を占領されていたのは何処の誰なのか。喉元過ぎれば熱さを忘れるとは、正にこのことだろう。長谷川たちは怒りを通り越して呆れ果ててしまい、言葉の1つも出なかった。
その時、廊下の向こう側から数多の足音が聞こえて来る。それらはヘレナスの命令を受けて、セシリーと長谷川たちの捜索を行っていた近衛兵たちの足音だった。
「・・・捕らえろ!」
軍の将官が来賓たちに刃を突きつけている場面に出くわし、想像以上に事態が深刻であったことを知った近衛兵たちは、来賓である長谷川たちの身を護る為、セシリーに向かって一斉に襲いかかる。セシリーも抵抗しようと、長谷川たちに向けていた剣の切っ先を近衛兵たちに向けようとしたが、時既に遅し、多勢に無勢、瞬く間に取り押さえられてしまった。
「は、離せ・・・お前ら!」
床の上に組み敷かれたセシリーは、身体をよじらせながら必死に抜けだそうとするも、腕と脚をがっちり掴まれて到底逃げ出せない。そんな彼の姿を、長谷川や鈴木たちは唯々困惑しながら見下ろしていた。
その後、他の近衛兵を引き連れた近衛師団長のシモフと女王のヘレナスが、騒ぎを聞きつけてその場に現れる。ヘレナスは取り押さえられていたセシリーを一瞥すると、長谷川たちに向かって深く頭を下げた。
「マコト殿、そしてニホン軍の皆様・・・本当に申し訳ありませんでした!」
ヘレナスの第一声は、家臣の凶行に対する謝罪だった。異国の軍の将に向かって頭を垂れる王族の姿を見て、近衛兵たちの間には少なからず動揺が走る。
「・・・!?」
当のセシリーはと言うと、彼が1番喜んで貰いたかった人物に、自身の行動を真っ先に否定されてしまった為か、まるで陸に上がった魚の様に口をぱくぱくさせながら、言葉が出ない様子だった。
「・・・この国を救って頂いた貴方方に対してこの様な不祥事、私の不徳の致すところでございます。ですが、我が国には貴国に敵対する意思はありません。誠に身勝手ではありますが、どうか許して頂きたい」
「・・・」
ヘレナスは悲痛な表情を浮かべながら、謝罪の言葉を続ける。その後、同盟国の来賓に狼藉を働いたセーレン王国の将・セシリーは、近衛兵たちによって連行されて行った。
「・・・仮にも貴方の家系は王家の重臣・・・ですがもう二度と、私たちの前に顔を見せないでください。協力者も居るでしょうね・・・その者たちも軍職から永久追放です」
「・・・!?」
セシリーが連行される間際にヘレナスが言い放った言葉は、彼を絶望の底へ落とし込む。その後、セーレン王国軍将軍のセシリー=リンバスは、貴族としての爵位と軍での地位を剥奪され、今回の一件で共謀していた彼の部下たちと共に、軍職を追放されることとなった。
「すぐに晩餐の用意を!」
「・・・はっ!」
ヘレナスは近くに立っていた侍従に、晩餐会の準備を急ぐ様に指示を出す。その侍従が走り去って行くのを見送ると、彼女は再び長谷川らの方を向いた。
「・・・此度は本当に・・・本当に申し訳ありませんでした」
彼女はそう言うと、再び深く頭を下げた。
「・・・今後は、この様なことが無い様にお願いしますよ」
少なからず気分を害していた長谷川は、再発防止に務める様にヘレナスに釘を刺す。その後、彼を含む4名は女王の侍従に案内され、晩餐会場へと辿り着いた。
予想外のトラブルに見舞われたものの、晩餐そのものは滞り無く執り行われ、日本国とセーレン王国の関係を深める有意義なものになった。
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2月15日 ウィレニア大陸 アルティーア帝国 首都クステファイ 港
ウィレニア大陸の東半分を支配するアルティーア帝国の首都クステファイの港には、出港準備が整えられた数多の帆走軍艦が並んでいる。その1隻1隻には、船の操舵や水上戦闘を行う海軍兵と、上陸後の戦闘を行う陸軍兵が多数乗船しており、まだ見ぬ蛮族「日本人」を討伐する為、その士気を高めていた。
艦隊の出撃準備はこの街だけでなく、国内各地の港で完了しており、それらは洋上で合流して大艦隊を形成する予定となっている。この「日本侵攻艦隊」の総指揮官として任命されたのが、海軍将軍のテマ=シンパセティックという男だった。
彼は今、旗艦「アルサカス」の甲板に立ち、首都の港に所狭しと並ぶ帆走軍艦の群れを眺めていた。多種多様な艦種が軒を連ねているが、その光景は荘厳の一言であり、列強国の国力の高さを誇示するものであった。艦隊に参加する艦数は1700、兵数は38万を超えており、如何に日本という国の軍が戦上手であろうとも負ける筈は無い、そう確信させる程の戦力だった。
各艦には“風使い”と呼ばれる魔術師が乗船しており、船は風にあまり左右されずに進むことが出来る。こうして魔術師を大量に揃えることが出来るのも、列強ならではの人的資源の豊富さ故なのだ。
「・・・さてと、話してみるか。ニホンという国の将と」
テマはそう言うと、この世界の通信機である“信念貝”を懐から取り出す。それは大陸間の通信も可能な長距離用のものであり、指揮官である彼に軍事局から貸与されたものであった。
彼は貝の中に向かってコードを唱える。それはかつてセーレン王国を占領していた、アルティーア帝国軍基地へ繋がるコードであった。
・・・
同じ頃 セーレン王国 暫定首都シオン 自衛隊基地司令部
日米合同艦隊がセーレン王国に上陸していから約1ヶ月の時間が流れる。昼夜不眠不休で行われた工事によって、滑走路はすでに8割方が完成していた。建設途上にある自衛隊基地へは、輸送艦によって絶えず物資の輸送が行われており、あとは基地の完成を待つばかりとなっていた。
そしてこの日、司令室で執務を行う長谷川海将補の下へ、1人の隊員が訪れていた。彼は敬礼をしながら、司令の下へある報告を届けていた。
「捕虜とした帝国兵士の魔法道具“信念貝”に通信がありました。それによると、どうやら帝国は、我々を駆逐しこのセーレンを再び支配するために、残存戦力のほぼ全てを編成した大艦隊をここに送り込んで来るようです」
「何!? ・・・とうとう来たか」
遂に敵が動き出したことを知り、長谷川は驚きの表情を浮かべる。そんな彼に、隊員は更なる報告を続ける。
「更に、いえ・・・こちらの方が重要です。アルティーア帝国日本侵攻艦隊の指揮官より、交渉の場を設けたいとの申し入れが、捕虜の魔法道具を介して届けられました」
「・・・何だと」
長谷川は目を見開いた。ロバーニア、そしてセーレンでの戦いを経て、初めて彼の国の方から接触を図って来たのである。