第二十六回 到着
「あれ?ここは?」
玲美が目を覚ますと、そこは知らない景色がそこにはあった。
勿論、車の窓から見た景色ではあるが。
「ああ。起きた?着いたわよ」
悠美がそう言って目的地に着いたことを玲美に教える。
「え⁉」
「あなた、ぐっすりだったわよ?昨日、夜更かしでもしていたの?」
「そ、そんなことはないと思うけど・・・」
昨日は早めに寝なくちゃいけないと思って、逆に少し遅くに寝てしまったが、目的地に到着するまで熟睡するほど眠たかったわけではない。
そう考えるも、結局は寝てしまったのだから寝足りなかったのだろうと判断するしかない玲美。
その様子を見ていた魔族組の三人はハラハラしていたが。
「でも、私、こんな場所見たことないけど、ここってどこなの?」
「うぇっ⁉こ、ここか⁉ここは〇〇県の山奥だ」
真麻が玲美の質問にしどろもどろになりながら答える。
魔界と言ってもここは王都からは離れた普通の村である。
魔王としての権力を使って村人全員に人間の姿になるように頼んだこと以外はまったくもって普通の村である。
まあ、村人の姿を人間に変えているのは真麻と宗なのだが。
「そうなんだ。お父さんたちの故郷ってここなんだ」
「ああ。標準語は話せるんだけど、ここだと色々と限界があるってことで都会に引っ越して来たんだ」
「ふ~ん」
玲美の質問に宗が危なげなく答える。
真麻にはない、バリバリの安定感である。
「それじゃあ、お父さんのお父さんとお母さんもいるってことなんだ」
つまりは玲美にとっての祖父母である。
そんなのが、ここにいるわけじないじゃん・・・と言いたいところだが、実は本当にいるのだ。
ここは本当に真麻の故郷なのだ。
なので、権力を使ったところで誰も言うことなど聞いてはくれないのだ。魔王なのに。
そこで、真麻が執った方法は単純明快。
DO☆GE☆ZAである。
魔界を支配する魔王が村民に対してまさかの土下座。
宗と魔夜にとっては情けないことこの上なかったのだが、今回は仕方ないと目を瞑ったのだった。
「ああ。早速挨拶しに行くか」
真麻を先頭に車から降りて歩いて家まで向かう真尾一家。
少し歩いていくとその家はそこにあった。
その家は他の家よりも立派に出来ており、ある場所は村の端っこ。
「ここがお父さんの家なの?」
「あ、ああ。そうだよ」
実は、これも玲美が起きる前に真麻、宗、魔夜が魔法で作った家である。
何故、村の端っこに造ったかといえば、村に元々あった家を取り壊して造るのは流石に出来なかったからだ。
そして、これが村民を説得出来た秘密でもある。
そもそも、真麻が土下座したぐらいで昔からの付き合いがある村民が言うことを聞いてくれるわけがない。
そんなわけで、断られたので仕方なく、玲美の方に幻覚を掛けるか、と考えながら真麻は宗と魔夜と共に家を魔法で造り出したのだが、それを見ていた村民たちが、「俺達の家もこんな感じに造ってくれるなら頼みを聞いてもいいぞ」と言って来たのでそれにより、了承を得たのだ。
そして現在。
「ああ。これから帰省が終わったら徹夜か・・・。なあ、宗。手伝っては―――」
「やらない」
「そ、そうか。魔夜は―――」
「やらない」
「はい」
そんなやり取りが陰でされていたが、玲美のあずかり知らぬことである。
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