第二十五回 帰省する家族
今回は忘れずに更新できました。
朝起きたときは普通に忘れていましたけどね。
危ない危ない。
初詣もなんとか玲美と悠美の頑張りによって何事もなく終わり、次の日がやって来た。
この日は真麻が前々から決めていた魔界への帰省の日である。
時刻はまだ早朝の四時。
なぜこんな時間に行く必要があるのかと睡魔と戦う玲美は疑問でしかない。
天真などは未だに悠美に抱っこされながら眠っている。
「お母さん、お父さんの実家ってどこに行くの?」
「う~ん。遠くて近いところかな?」
「何それ?」
玄関でそう聞く玲美だが、はぐらかされてしまう。
玲美は帰省するからと、言われるがままに旅行の準備だけをしていたのでどこに行くかは聞いていなかった。
聞いたところでヘタレた真麻が教えてくれるとは限らないが・・・。
「まあ、着いたら分かるよ」
「そうそう。気にしないで行こうよ、お姉ちゃん」
「う、うん」
宗と魔夜にそう言われて渋々だが納得する玲美。
その姿を見てあからさまにホッとする真麻。
相変わらず、正体を言う勇気がないらしい。
「それじゃ、出発するぞ。車に乗り込め」
「「は~い」」
「いこ?玲美」
「うん」
真麻の号令の元、家族は車に乗り込んでいく。
実はこのような朝早くに出発するには理由がある。
それは魔界入りするところを玲美に見られないようにするためである。
勿論のこと、普通に移動して魔界に行けるはずもない。
本来は宗たち魔族の誰かが魔法を行使しなければ行けないような場所に・・・というか行使しないと行けない世界にあるのだ。
それを、宗たちの正体を知らない玲美の前で見せるわけにはいかない。
真麻が宗に泣きつき、宗が真麻に作戦を伝授したのだ。
「本当にどこに行くの?」
玲美が不安そうに家族に聞く。
そう。
さっきから真麻の運転する車は目的地がはっきりしないような方向転換を繰り返していた。
「気楽に行こう。父さんは自分の分かりやすい道を通っているだけだから」
「そうなの?」
「うん。だから気にしないでくつろいどきなよ」
宗が玲美をフォローする。
席も隣になっているのでフォローもしやすいのだろう。
席順は運転手に真麻。
助手席に悠美。
後部座席に子どもたち三人。
そして、天真はまだ眠っているので、悠美の膝の上となっている。
この席順だが、宗が真ん中に座っているため、必然的に玲美は絶対に宗の隣に座ることになり、内心ではドキドキなのであった。
「なかなか着かないね」
魔夜がそう呟く。
しかし、言外にこう言っているのだ。
(お姉ちゃん、なかなか寝ないね)
それに対して真麻が返答する。
「もうちょい待ってくれ」
しかし、ミラー越しの目線は宗を見ていた。
助けを求めているのである。
(宗!なんとかしてくれ!)
言外にこう言っている真麻に情けないと思う宗だが、確かに一向に眠らない玲美に宗も作戦失敗だと考える。
そして仕方ないとこっそりと切り札を切る。
「まあ、寝てたら着くだろ」
「それもそうだね。ね、お姉ちゃん」
「うん」
魔夜が宗の言葉にそう返事をしながら玲美の注意を引く。
その隙に宗は魔法を行使した。
「あれ?なんか、眠くなってきちゃった」
「朝も早いんだし、寝ときなよ」
「うん」
そしてゆっくりと眠りにつく玲美。
宗が行使したのは眠りの魔法の初歩中の初歩。
睡眠導入の魔法だ。
これは眠りの魔法のコツを掴むために良く使われる魔法で、特にデメリットらしいデメリットが存在しない。
ただ、眠気が来るだけの魔法なのだから。
気合を入れれば簡単に無効化出来る。
しかし、この魔法は特に違和感という違和感もないので暗殺や泥棒などの裏の人間には重宝されている魔法でもある。
何でも使う者によって凶器に変わってしまうのは同じなのである。
「ほら。眠ったから行くよ」
「ああ。悪いな」
「ホントだよ。俺の心が罪悪感で苛まれるよ」
「うぅ。本当にすまん」
宗はため息をつきながら背もたれに寄りかかる。
そして、車の窓からの景色は一瞬で切り替わるのであった。
魔界へと。
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