第二十二回 もうすぐ年末
どうも。
コングラの方を書いていて、ふとこの作品の方を書いていないことを思い出して大慌てしたティキ+さんです。
ヤバかったです。
今日はやることが多くて書く時間がなかったので、火曜日に襲い来る眠気と必死に格闘しながら何とか書き上げました。
夏休みの時期に差し掛かり、特に理由もなく油断していたので、気を引き締めようと思った一幕でした。
泣きついたこともあり、魔夜の宿題もどうにか終わる目途が立ったある昼下がりの日のこと。
「真尾一家、しゅ~ご~」
真麻のそんな声が家の中に響いた。
結構大きな声を出しており、近所迷惑になることは必至だろう。
「な~に~?」
「お父さん、うるさい~」
天真と魔夜が天真の部屋から真麻のいるリビングにやって来た。
どうやらお昼寝をしていたらしく、天真は眠そうに目を擦っている。
それを真麻の大声で起こされてしまったようだ。
ここで急に起こされて泣き出さない天真はいい子としか言い様がないだろう。
「用事があるなら早く言って~。私たち、もう一回寝に行くから」
「おじいちゃん、はやく~」
「うぐぐっ。威厳も何もあったもんじゃないな。だが、悪いが起きていてもらうぞ!」
「なんで?」
「てんま、ねむい~」
「ご、ごめんね。でも、こっちとしても大事な話だから」
天真が眠たいことを訴えかけると慌てて下手に出る真麻。
仕方のない魔王である。
「早めに終わらしてよね」
「ああ。だが、宗たちが来てからだ」
「お兄ちゃんならお母さんと一緒に買い物に行ったよ?」
「何⁉」
「お父さん、なんかごそごそやっていたから気づかなかったんでしょ?」
「・・・(うとうと)」
どうやら宗と悠美は買い物に行ってしまったらしく、ここにいないことを知った真麻はその場に崩れ落ちる。
ちなみに天真はすでに半分寝ている。
「どうして宗ではなく、俺を買い物のパートナーにしてくれなかったんだ・・・」
「あ、そっち?そりゃ簡単なことでしょ」
「どうしてなんだ⁉」
「お父さん、買い物そっちのけでふざけ出しそうだもん。実際、何度かふざけたんでしょ?お母さんから聞いてるよ?」
「うぐぐぐぐっ!」
「その点、お兄ちゃんならふざけたりもしないし、きちんとお手伝いしてくれるからお母さん的にはお兄ちゃんの方を誘った方がいいって判断したんじゃない?」
「そんなっ。俺は玲美さんの夫なんだぞ⁉」
「いや、普通の食材の買い出しだから。そりゃ、デートとかするなら6:4くらいでお父さんを選ぶだろうけど」
「なんでそんなに比率が拮抗してるんだよ!」
「自業自得じゃん」
「・・・・・・(うとうと)」
息子に負けたことに悔しがっている魔王。
何とも格好の悪い姿である。
ちなみに天真はすでに魔夜に寄りかかっている。
「じゃ、じゃあ玲美ちゃんは⁉」
「お姉ちゃんは転校前の友達がこっちに来ているらしいからそっちに行ってる。帰ってくるのも夕方になるんじゃないかな?」
「じゃあ、ここにいる三人だけしか今、この家にいないの?」
「そういうことになるわね」
「・・・・・・・・・(うとうと)」
呼ぶのを後回しにして何やらごそごそとやっていたために怒ってしまったしょうもないすれ違いである。
魔夜はヤレヤレと呆れた表情である。
ちなみに天真はすでに立つことを辞め、その場に座り込んで魔夜の足に抱き着いている。
「・・・こうなったら仕方ない!お前たちに先に言っておこう!」
「そうして。天真がすでに夢の中に旅立っちゃってるし」
「えぇ⁉それじゃ実質魔夜一人じゃないか!」
「もうそれでいいじゃん。早く言って」
「あ、はい」
あまりにしつこいのでいい加減にイライラし出した魔夜は怒気を孕ませた口調で真麻を催促する。
「この年末の話だ」
「年末?」
「ああ。実はな、せっかくだから家族で一回里帰りしようかなって考えているんだよ」
「お父さん、馬鹿なの?」
「ち、父に向かって馬鹿とはなんだ!」
「お姉ちゃんにまだ正体話してないじゃん」
「・・・あ」
「今、完全に忘れていたよね?」
「わ、忘れてなんていないぞ?ただ、ちょっと最近忙しくて言う機会がなかっただけで」
「それどっちにしろ一緒じゃん」
あたふたと慌て出す真麻。
魔夜はそんな様子の真麻を呆れた表情で見つめている。
天真はすでに完全に眠っているので魔夜が途中で抱っこした。
「で、でもさ。もう準備完了しちゃったんだよ」
「魔界に帰る用意?」
「そう」
「じゃあ、どうするの?」
「向こうで伝えようかなって」
「それ、大丈夫なの?」
「大丈夫!あんまりこっちと魔界に違いなんてないし、それに魔族の奴らにも見た目を人間に見えるようにするように通達しておいたから」
「なんという無駄な努力。そして、それに巻き込まれる民が可哀想だよ」
「こういう時ぐらいわがまま言ったっていいじゃん!」
「お父さんはそれ以外でみんなに迷惑かけてんの!今回が初めてみたいな言い方しない!」
魔王がこんな性格なのである。
部下は苦労するのは目に見えている。
「まあいいや。それじゃあ、魔界でお姉ちゃんに私たちの正体のことをしっかりと伝えてよね?」
「任せろ!」
「本当に頼むわよ?フェルドマさんとの約束のこともあるんだから」
「・・・うっ。はい、分かりました」
「はい。よろしい」
ここに小学四年生の娘に完全に尻に敷かれている父親の図がある。
真麻は完全に項垂れている。
「悠美さんと宗には帰ってから里帰りのこと、伝えておくよ」
「そうして。私は天真と一緒にもう一回お昼寝しているから」
「・・・ぅうん。まーや~?」
「行こうか、天真ちゃん」
「ぅん」
魔夜と天真は真麻をその場に残して天真の部屋へと戻って行った。
「しっかりしてよね。失敗しちゃったら私たち、魔界に帰らなきゃいけなくなるんだから」
そんな魔夜の呟きが真麻の耳には届いていた。
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