第二十回 天真、サンタクロース(真麻)と遭遇する
今回でクリスマスに関する話は終了です。
それでは今回の話をどうぞ!
天真、サンタクロース(真麻)と遭遇する
みんながプレゼントを渡し終える。
「悪い。ちょっと抜けるぞ」
真麻はそう言ってリビングから出て行った。
「どこいくの~?」
天真は不思議そうに首を傾げる。
「トイレだよ」
そう天真に教える宗。
「ふ~ん」
天真はそれで興味を失ったようだ。
しばらくすると、真麻が戻ってきた。
「わるいわるい。待たせたな」
「別に待ってないから気にしないでいいよ」
何でもない感じで魔夜が答える。
「辛辣!」
ピンポ~ン
真麻がショックを受けているとチャイムが鳴った。
「俺が出るよ」
宗はそう言って玄関に向かう。
天真はそんな宗について行った。
「は~い」
そう言って玄関の扉を開ける宗。
扉を開けて外に出るとそこには一人の人物がいた。
開けた先にいたのは
「メリークリスマス‼」
赤い衣装に身を包んだ・・・・・サンタクロースだった。
「うわぁ⁉」
宗は驚いて何歩か後ろに下がってしまう。
「だれ~?」
天真は知らない人の登場に不思議がっている。
「サ、サ、サンタクロース!」
宗は大きな声で叫ぶ。
音声遮断の魔法を家に周りに張りながら。
「どうしたの~?」
魔夜が宗の声を聞きつけて玄関にやってくる。
「サ、サンタクロースが・・・」
そう言ってサンタクロースの方を指差す宗。
「わっ‼ホントだ‼」
魔夜もサンタクロースを見て驚く。
その声を聞いて残っていた玲美と悠美も玄関にやってくる。
真麻も一緒だ。
「どうしたの?」
悠美が魔夜に聞く。
「サンタクロースがうちにやって来た!」
「あらあら。本当に~?」
「サンタクロース?」
悠美と玲美が不審がる。
その魔夜の視線の先を見ると確かに赤い衣装に身を包んだサンタクロースがその場にいた。
「メリークリスマス!」
そんな驚かれてばかりのサンタクロースはそう言うと宗とアイコンタクトを交わす。
そう。
このサンタクロースは変身の魔法を使った真麻である。
家の中にいる方の真麻は真麻の魔法で出来た分身なのだ。
トイレに行くときに入れ替わっていたのだ。
アイコンタクトを交わした宗は天候操作の魔法で一部を・・・つまり真尾家の周りだけ雪が降るようにする。
「すごーい!ゆきがふってきたー!」
天真が顔を輝かせている。
「これもわしからのプレゼントだよ」
天真をごまかす真麻サンタ。
まあ、サンタクロースが来た瞬間に雪が降りだすなんて都合良すぎだし。
雪を降らした宗は、そのままもう一つの魔法を行使する。
宗は外にトナカイとソリの姿を幻影の魔法で作り出した。
(よし)
目線を向けるとサンタクロース(真麻)も頷いていた。
「サンタさん。どうしたの?」
天真がサンタクロースの近くまで近づいてサンタクロースの顔を見上げながら聞く。
「ふぉっふぉっふぉ。何でもないよ。今日はいい子にしていた君にクリスマスプレゼントをあげに来たんだ」
「ほ、ほんとに⁉」
「ああ。本当だとも」
真麻サンタの言葉に嬉しそうにその場をピョンピョンとジャンプする天真。
「さあ、これがそのプレゼントだよ」
真麻サンタが天真にプレゼントを渡す。
「わー!ありがとう!」
貰ったプレゼントを嬉しそうに抱えてお礼を言う天真。
「ふぉっふぉっふぉ。礼には及ばないよ」
そんな真麻と天真のやり取りを見守る宗、魔夜、悠美。
玲美だけは突然の出来事に混乱している。
魔夜と悠美はこのサンタクロースの正体に気づいたのだろう。
まあ、玲美には未だに真麻達の正体を知らないので仕方のないことだ。
「さて、わしは他にも待っているよい子たちがいるのでね。そろそろ行かせてもらおう」
そう言うと、真麻サンタは宗が作ったソリに乗り込み、空へと走り去っていった。
まあ、実際には真麻が自力で飛行の魔法で飛んでいるだけで、トナカイとソリにしても宗が真麻に合わせて飛んで見えるように調整しているだけだ。
まあ、ソリに乗っているように見せるためにまあまあ無茶な体勢で飛行してはいるが。
「い、一体何だったの?」
そんな一連の出来事についていけなかった玲美が真麻の飛び立つ姿を茫然と見つめながら呟いていた。
・・・
真麻は皆が外でサンタクロースの余韻?に浸っている間に急いで帰ってきた。
バレないように気配遮断の魔法を使いながら分身のところまでやって来た真麻はそのままこっそりと分身を消して、本物である自分と入れ替わった。
「さ、みんな。中に入ろう。ここにいつまでもいたら風邪をひいてしまう」
そして、家族のみんなを中に入るように促した真麻は先に中に入る。
「そうだね。せっかくこれから冬休みなのに風邪をひいたらもったいないよね」
魔夜が真麻に続いて中に入った。
それから天真と悠美が一緒に中に入った。
「未だに信じられない・・・」
みんなが家に入っている中、玲美だけが未だにさっきの出来事を受け止められずにいた。
「どうしたの?風邪ひくよ」
そんな玲美に宗が声をかける。
「で、でも!」
宗に詰め寄る玲美。
「おおう。確かにさっきの出来事は信じられないけど、世界には不思議がいっぱいあるんだし。珍しい体験をしたと思ったらいいじゃん」
何とか興奮した玲美を宥めようとする宗。
(っていうか、そもそも身近にいる僕たちそのものが不思議な存在だし)
「そ、そうだね」
「そうそう。もう少しくらいは気軽に考えてもいいんじゃない?」
「う、うん。そうだね」
「そ、それはともかく・・・。そろそろ離れた方がいいんじゃない?」
「えっ?」
そう。
玲美はあまりに興奮していたので、ついつい宗にくっついてしまっていたのだ。
傍から見たら、玲美が宗に抱き着いているようにしか見えないだろう。
「「にやにや」」
そんな声が急に聞こえてきた。
宗と玲美がその声のする方向、つまり玄関に視線を向けるとそこには魔夜と真麻、それに悠美と天真もいた。
にやにや言っていたのは勿論のこと、魔夜と真麻だ。
「な、な!」
顔を真っ赤にして言葉に詰まる玲美。
「パパとママ、なかよし~」
天真は宗と玲美の様子を見て嬉しそうに言う。
「う、う~~!」
天真の言葉にさらに恥ずかしそうにする玲美。
「テンマもまざる~」
天真はそのまま玄関から飛び出して宗と玲美に抱き着く。
天真が抱き着いたことによってさらに宗に密着してしまう玲美。
「うう~~。ううううう~~~~!」
「はははっ。しょうがないな」
宗は天真が抱き着いてきたので、玲美と天真を抱きしめる。
「ひゃう!」
もう何がなんだが分からないといった感じの玲美。
宗に抱きしめられて嬉しそうにする天真。
そんな親子を見ている真麻達家族。
そんなこんなで真尾家の初めてのクリスマスは過ぎていった。
長かった。
クリスマス編をこんなに長くするつもりはなかったのですが、気づけばこんなことに・・・。
次から冬休み編です。
読んでくれて感謝です。
次の投稿は8月3日です。




