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第一回 再婚と娘との遭遇

流石にプロローグだけなのはどうかと思ったので一話目も投稿します。

こちらもどうぞ。


再婚と娘との遭遇



 そんなことがあったのも今から二年前。


 シュウは人間界で中学に入学し、マーヤは小学四年生になった。容姿もそれぞれ成長していた。


 シュウは、銀髪でサラッとした髪質。優しそうな顔立ちをしていて、身長も中学生にしてはまあまあ高い方。まさに王子様といった風貌である。


 マーヤは、同じく銀髪で髪を肩まで伸ばしている。兄のシュウのように優しそうな顔立ちをしているが、どことなく活発そうな感じである。


 現在の季節は夏。夏休みまでのカウントダウンが始まっている。


 さすがにそのままの名前を使う訳にはいかなかったので、苗字は真尾を使うことになり、シュウの名前はしゅうに、マーヤの名前は魔夜まやに、マーサの名前は真麻まさとなった。


 そんな人間界での毎日が普通になっていたある日の休日。


 今日はデートだと言って朝からいつものようにウキウキしながら出かけていた真麻が夕方に帰ってきた。


 普段、デートと言って出かけたなら毎回、夜遅くまで帰宅しない真麻が夕方に帰ってきたので宗も魔夜も心配になり、玄関まで真麻を出迎えに行った。


 真麻は身長185㎝ある大きな体で玄関を塞いでいた。


「どうしたんだよ父さん。こんなに早く帰ってくるなんて。何かあったのか?」


 宗がそう尋ねると真麻が威厳のありそうな顔(実際に威厳はあるのだが・・・)をどこか幸せそうな表情にして言う。


「いや、お前たちに報告があってな」


 モジモジしながら言う真麻はなかなか気持ち悪い。


「な、なに?」


 父に引きながら訊ねる宗。


「その前に紹介するよ。悠美さんだ」


 そう言って体をずらす真麻。家に入ってきたのはおっとりとした雰囲気の優しそうな女性。見た目は肩まで伸びたウェーブのかかった髪。大体見た感じ160cmほどの身長である。


「はじめまして。明野悠美と言います」


 ニコリと笑いながら挨拶する悠美。


「実はな・・・」


 真麻は溜めて言い放つ。


「俺達、結婚することになったんだ」


 その言葉に一瞬固まる宗と魔夜。しかし、すぐに我に返り、宗と魔夜は真麻に確認を取る。


「ままままじか!」


「ままままじなの⁉」


 宗と魔夜はめちゃくちゃ動揺している。


「ままままじだ」


 何故か真麻まで動揺しだした。


「うふふ」


 そんな様子を楽しそうに見つめる悠美。


「恥ずかしいところを見せてしまった」


 真麻は手で顔を隠す。


「いい歳したおっさんが乙女になるなよ」


「ドン引きだよ、お父さん」


 自分の子どもに総口撃をくらう父親。


「そんなことはどうでもいいんだよ!」


 宗と魔夜の冷たい視線を振り切り、持ち直す真麻。


「もう一人紹介する人がいるんだよ!」


 そう言うと玄関から宗と同い年くらいの女の子が顔を出した。


「さ、攫ったのか・・・」


 片手で顔を抑え、ついにやっちまったかと絶望した顔で真麻を見る宗。


「そんな訳ないだろうが‼」


 宗と真麻がアホな漫才を繰り広げていると女の子が気まずそうな顔をする。


「お、お母さん」


 悠美を母と言う少女は縋るように悠美に呼びかける。


 その言葉を聞いて宗は驚く。


「お母さん⁉そんな風には見えない」


「あらあら、ありがとう」


「報告からは挙がってなかったけど」


 思わずボソッと呟いてしまう宗。


「俺からのサプライズだ。父を部下に売った仕返しだ」


 ものすごいドヤ顔で宗を見る真麻。


 それを苦い顔で見つめ返す宗。


「もう!二人ともいい加減にしてよ!悠美さんと娘さんが困ってるじゃない」


 魔夜に言われてハッとなる宗と真麻。


「そ、そうだな。とりあえず応接間に行こうか。魔夜、案内してやってくれ。宗はちょっと話があるからこっちに来い」


「わかった。こっちです」


 魔夜は二人を連れて行きました。


 その場に残った宗と真麻はリビングに入る。


「それで、なんだよ。おふざけに走るなよ」


「いや、今回はちゃんと真面目な話だ」


 真麻はソファに腰掛ける。


「それって、俺達の正体についてか?」


「ああ」


「俺とフェルドマさんとした約束、ちゃんと守ったんだろうな?」


「守ったよ、きちんとな」


 宗が言っている約束とは、人間界で住む条件にフェルドマが出した条件の一つで、真麻が惚れたその女性に自分の正体を明かし、それでも構わないと言ってくれたのなら結婚に賛成する。しかし、もしダメだったのなら記憶を消し、魔界に戻ってきてもらうというものだ。


「悠美さんは俺達の正体を知っている。それでもと言ってくれた」


「言葉だけじゃなく、魔王だという証拠を見せたのか?」


「さすがに魔王だという証拠は難しかったから少なくとも人間ではないことは見せた。魔王だってこともちゃんと言ってるけどな」


 宗は唸るが、


「まあ、いいだろう。俺は賛成してあげるよ」


 あからさまにホッとする真麻。


「じゃあ、魔族であることも隠さないでもいいんだな」


 宗もなんだかんだでホッとしている。


 宗のその言葉に気まずそうに顔を背ける真麻。あからさまに口笛まで吹いている。


「おい。その顔をなんだ」


 真麻の顔は汗がダラダラと流れていてびっしょりだ。


「い、いや。あのね。悠美さんにはきちんと話したよ。話したんだけどね・・・」


 その言葉にもしやと思い、宗は訊ねる。


「まさか、娘さんには話してないのか・・・?」


 宗がそう言った瞬間、真麻は本当に魔族の王様なのかと言っても過言ではないほどのきれいな土下座を繰り出した。


「す、すまん!悠美さんに了承をもらった時点で舞い上がっちゃってすっかり忘れてた」


「なっ⁉ど、どうすんだよ。これから一緒に暮らすことになるんだろ?」


「どどどどうしよう⁉」


 息子に縋り、泣きつくダメ親父の絵がそこにはあった。


「はぁ~。仕方ない。いずれは話せよ。それまでは俺もマーヤもきちんと人間やるから」


「ありがとう‼我が息子よ~」


 そう言って泣きながら宗に抱き着くダメ親父の絵が完成。


「言っておくけど結構大変だからな、ちゃんと人間するのも。学校でも身体能力を下げに下げているし、魔界の言葉を使わないように気をつけたりして。そこのところしっかり分かっててくれよ」


 魔夜はまだしなくてもいいですが、宗に至っては魔法まで使って制限をかけている。真麻もそれは同じだが自業自得なのでこれに関しては仕方がない。


「ああ!もちろんだ」


「じゃあ、俺はそのことをマーヤに伝えるから父さんは悠美さんたちの相手をして」


「了解!」


 真麻はビシッと人間界で学んだ敬礼をして応接間に行く。


 少しすると魔夜がリビングに入ってきた。


「マーヤ。父さんがヘマしたらしい」


「どういうことなの、お兄様?」


「条件の一つに正体を明かすっていうのがあっただろう?」


「ええ」


「悠美さんはクリアしたらしいんだが娘さんは失敗したらしく、まだ話していないようだ」


「ええっ⁉」


「それによって、俺達は父さんが話すまで家でも人間をしなければならない」


「そんな~。私、家だけが気を抜ける場所なのに」


「俺だってそうさ。まあ、俺達の苦労もしっかり伝えておいたから多少はフォローしてくれるだろ」


 〝多少は”のところに息子から父への信頼度が出ているようだ。


「そうね。じゃあ、そろそろ戻りましょうか。私、お茶を入れてくるって言って出てきたから早く行かないと」


「ああ。俺も手伝うよ」




                ・・・




 宗と魔夜が応接間に入ってきてついにご挨拶が始まる。


 ちょうど真尾と明野で対面するようにソファに座っている。


「それじゃ、改めて自己紹介をしておこうか。子ども達はまだお互いのことを知らないし」


 急にキリッとし出す真麻。悠美にいいところを見せたいようだ。


 そして勢いよく立ち上がった。


「じゃあ、俺からいくぞ。真尾真麻まお まさだ。職業は主に政治関係に携わっているが、家にはしょっちゅういるので困った時には頼ってくれ」


 真麻はそう言うと座った。職業をぼかして言ったので致命的なミスは犯さなかったが、正体を明かさなかったヘタレ具合には宗も魔夜もがっかりだ。


「それじゃ、次は私ね」


 悠美がスクっと立ち上がる。


明野悠美あけの ゆみです。あっ、もうすぐ真尾になるのか。職業は小説家です。私も基本的には家にいるので仲良くしてね」


 悠美のセリフに嬉しそうにする真麻。


 席の順番的に宗のターンのようだ。


「えーと。真尾宗まお しゅうです。中学一年生です。趣味は知らないことを知っていくことです。よろしくお願いします」


 宗はそう言うとすぐに座った。


 ちなみに、宗の言う趣味は魔界にないものを知っていくという意味である。趣味なのかよく分からない挨拶になってしまったが、仕方がない。真麻の失敗によりそこら辺をはぐらかすしかないのだ。


 そして女の子の順番になった。


「あ、明野玲美あけの れみです。小学六年生です。趣味はお母さんの本を読むことです。よろしく」


 玲美は恥ずかしかったのか、言い終えるとすぐに座った。


 玲美の容姿は母親の悠美に似た雰囲気を持っていて、腰あたりまで伸びたサラサラ髪で可愛いか美人かで言うと美人寄りの容姿をしている。


 しかし、その見た目も今の玲美の感情で印象が小動物のようになっている。


「最後か~」


 そう言いながら立ち上がる魔夜。


「真尾魔夜です。小学四年生で、趣味はお兄ちゃんと一緒です。ジャンルは違うけどね」


 と、これで自己紹介が終わった。


「じゃあ、・・・」


 固まる真麻。


「こ、これからどうするんだ?」


 何故か宗に助けを求める。


「あ。じゃあ私、悠美さんとお話したい。ね?お兄ちゃんでしょ?」


 魔夜がナイスフォローをする。


「そうだな。じゃあ、父さんも玲美ちゃんと話したら?」


 それにここぞとばかりに宗が便乗する。


「そ、そうだな」


 二つのグループに分かれた。


「悠美さん。最初に確認しておきますが、俺達の正体、きちんと父さんから聞きましたか?」


 宗は玲美には聞こえないように問いかける。


「ええ。魔王さんなんですってね。ファンタジーね~」


 ものすごく芯がしっかりしている悠美。小説家なのも影響しているのかもしれない。


「それを聞いて安心しました。あんな父ですがよろしくお願いします」


「します!」


 宗と魔夜が頭を下げる。


「そんなにかしこまらないで。これからは家族なんだから。敬語もなしでいいのよ」


「「はい」」


 さすが兄妹。ハモるところはしっかりハモっている。


「それじゃ、改めて自己紹介するよ。俺はシュウ・ベルンハルト。一応魔界の王子です」


「私はマーヤ・ベルンハルト。魔界では姫をしているの」


宗たちは本名を名乗った。


「ただ、父さんが失敗したのでどうやら玲美ちゃんには俺達の正体が伝わってないそうなんだ。だから、今ちょうどマーヤがそのチャンスを作ったのだけど・・・」


 三人が真麻と玲美の方を向くと真麻がめちゃくちゃ情けない顔でこっちを見てきていた。


 玲美は少し恥ずかしそうに下を向いている。


「ダメそうだね」


 宗の言葉に魔夜と悠美が頷く。


「ということなので玲美ちゃんが正体を知るまで正体を隠すので協力してもらえないかな」


 宗はそう悠美に言う。


「宗くんや魔夜ちゃん、私が教えるのはダメなの?」


「うん。人間界に来て悠美さんと結婚する条件として父さんが言うことってお兄様と部下の人と約束したの」


「そうだったんだ~。でも、大変じゃない?隠すの」


「そうなんだけど、学校でも同じことしているからその延長かな」


 宗はそう言って苦笑いする。


 魔夜もそれにウンウンと何度も頷いている。


「でも、大変なのは大変だから父さんには頑張ってもらいたい」


 宗はため息をつく。


「私も出来る限りは協力するから何でも言ってね」


「「ありがとう」」


「それと、私のことはお母さんって呼んでね」


 そう言われて顔を真っ赤にする兄妹。でも、しっかりと頷いた。


 真麻が本気でヘルプを求めてきたので今回のご挨拶はお開きとなった。


「これからよろしくね。宗君、魔夜ちゃん」


「「はい」」


「玲美ちゃん、これから仲良く」


「・・・」


 悠美と真麻の人徳の差が出た瞬間だった。


 真麻、これでも魔王・・・。


 対照的に王子と王女とすぐに仲良くなった悠美、恐るべし・・・である。


(これ、意外に悠美さん本気で魔王の嫁、務まるかも)


 宗はこの光景を見てそんなことを思った。


 そうして悠美、玲美とのファーストコンタクトが終わり、二人は帰っていったのだった。


 二人が帰った瞬間、再び宗と魔夜に土下座をした真麻は本当に魔王なのか不安になるような、そんな情けない姿であった。土下座のときに叫んだ謝罪の声はどこまでも近所に響いていた。




                 ・・・




 そして、その一か月後。

 無事に結婚した真麻と悠美は一緒に暮らすことになった。ちなみに、真麻の部下の皆さん(魔族)も変化の魔法で姿を変えて参加していた。


 今は悠美と玲美の引っ越しがようやく終わり、夕食中。


 夏休み返上で宗も魔夜も手伝いをした。


「記念すべき新しい門出の日だ。盛大に祝おう!出前だ、出前」


 さすがは魔王。こういう時にはしっかり指揮を執る。


「真麻さん。それはいいのだけど、どこにするの?」


 悠美が質問する。


「こういう時はオールジャンルでいこう!宗、ちょっと頼めるか?」


「いいけど」


 宗は電話機のところまで行って電話帳を開く。


 と、そこで


「父さん」


「なんだ?」


「これ、直接取りに行かなきゃいけないところがあるけど、どうする?」


「え⁉マジか~。じゃあ、そこは別になしでもいいよ」


「でもここ、父さんの好きな寿司のところだけど」


「よし。行ってきてくれ」


 ものすごい変わり身である。


「ま、まあいいけど」


 宗も若干呆れながらも了承する。


「じゃあ、行ってくるよ」


「おう。早めに頼むわ」


 真麻の態度にイラッと来た宗だったが我慢である。


「宗君気をつけてね」


 悠美がお見送りしてくれる。


「うん。行ってきます」


 そうして宗は出発した。


 これが宗の今後を大きく変えることになった。




                 ・・・




 注文が終わり、帰路についた宗は道の端に立つ電柱の下に不自然な段ボールが置いてあることに気がついた。


「行きにこんなところに段ボールなんてあったっけ?」


 不思議に思った宗は段ボールに近づく。


「犬かな?猫かな?」


 そんな軽い気持ちで覗くとそこには


「スー、スー」


 小さな女の子が包まって眠っていた。


「はぁっ⁉なっ、なんでっ⁉」


 宗もこれには驚きである。


 しかし、宗が驚いたのはそれだけではない。確かにまさに捨てられているといった状況である子どもがいること自体に驚きはしたが、それだけではなかったのである。


「天・・族・・・」


 そう。その段ボールには天族の女の子が入っていたのだ。


 その証拠に天族の特徴であるとされる光天の輪が女の子の腕にスッポリと嵌まっている。


 さすがにこれは色々とまずいと考えた宗はその女の子を抱えて急いで家へと駆けていった。




                 ・・・




 家に着くと玄関ですぐに宗は真麻を呼んだ。


「父さん!ちょっと来てくれ」


 宗の声に焦りがあったのを感じたのか、真麻はすぐに来てくれた。


「なんだ。何かあったのか?」


 そう言う真麻に宗は腕に抱えた天族の女の子を見せた。


「なっ⁉天族・・・だと・・・。どうしたんだ」


「拾った」


 確かに、人一人拾うこと自体が大変なことである。しかし、真麻はそこに驚いたわけではない。


「どういうことだ、こりゃ。天族は魔族と違い、仲間意識が非常に高い。まして、子供を捨てるなんてことは絶対と言っていいほどありえない」


「うん。だから思わず連れて来ちゃったんだけど」


 魔族は力が一番大切とまで言われている。真麻達魔王一家がおかしいだけで魔族は力の優劣ですべてを決めている。しかし、天族は魔族とは逆で、また、天族は魔族が嫌いでもあるため、魔族と天族との間で起こった戦争が終わった一昔前から魔族とは逆の仲間を大切にすることを第一にしているのである。


「この子、どうしよう」


 さすがに宗もこれには悩む。


「な、なにかあった・・の・?」


 そこに二人が騒いでいるので玲美が様子を見に来てしまった。


「い、いや・・・。えーと・・・えーと・・・。あっ。ま、迷子‼迷子になった子を連れてきたんだ」


「な、なんで警察じゃないの?」


 玲美の完璧な返しに固まってしまう宗。


「連れて行ったはいいが、今は相手にできないほど忙しいから親が見つかるまで預かってもらえないかと逆に頼まれたんだ。な、宗」


 そこに珍しくフォローをしてくれる真麻。


「ああ!それで、連れてきたんだ」


「そ・・うなんだ」


 なんとか助かった宗と真麻。


 この後、魔夜と悠美に説明をし(玲美に怪しまれないように)、パーティを続行。天族の子のことが気になって最初のテンションで、とはいかなかったが。


 女の子は運のいい?ことに起きなかったのでとりあえず宗のベッドに寝かせておいた。


 そして、パーティが終わり、玲美が寝たあとに残りの家族が集合し、初の家族会議が始まった。


「ってことで魔族と天族はそういう関係にあり、天族にはさっき言った特有の輪が体のどこかにあるんだ。あの女の子だと腕だな」


 真麻が悠美に事前説明をする。


「それでその女の子、一体どうするの?」


 魔夜は深刻そうな顔で真麻を見つめる。


「どうするかは女の子が起きてからだ。宗、様子を見ていてやれ。お前、治療系の魔法も使えただろ」


「わかった」


「じゃあ、これで会議は終了だ。悠美さんも俺達関係のことで何かあったらすぐに俺達に言ってくれ」


「ええ」


 悠美も深刻そうに頷く。


 宗はすぐに自分の部屋に戻る。


「天族・・・か」


 なんだかんだで宗は初めて天族を見たことになる。

 

 昔は基本的に魔王城から出してもらえなかったし、今の生活になってからも人間界には通常、魔族も天族も姿は見せない。まして、宗たちのように住んでなどいないのが普通なのだ。


 宗は治療の魔法を使った後にソファに座り込んだ。


「ま、さすがに眠いや。寝よう」


 宗は自分の部屋にあるソファに横になった。


「おやすみ~」


 おっと。すっかりうっかり。真尾家の説明をしていなかった。


 基本的にこの家はフェルドマが発注して建てた家。しかも自分たちの種族の王がこれから住む所なのだから近所の人から違和感を感じるほどには大きい。


 もちろん、真麻、宗、魔夜は王族なので周りとの違和感など感じない。これが当たり前だと思っている。宗や魔夜はしっかりしているが、結局は王族なのでこの部分に関してはしょうがない。


 そんなどこか抜けている一家の一日はこうして過ぎていった。



 次の日の朝。



 宗が目を覚ますと女の子が宗の顔を覗き込んでいた。なぜか宗は、この女の子の目を見ると自分の心の底が何か警鐘を鳴らしている気がしたのだが、すぐにそれもなくなったので気のせいだと思うことにした。


「きみ、おきたんだ」


 半覚醒状態の宗が目をこすりながら確認する。


 コクコク。


 女の子は宗の言葉に頷くと宗に抱き着いてきた。

 

「な、なに?」


 困惑する宗。


「・・・パ」


 嬉しそうに宗に抱き着いている。しかし、そんなことを気にすることは宗にはなかった。


 あり得ない言葉。


 聞いてはならないような気がする言葉が宗の耳に聞こえてきたのだ。


 聞かなければ、少しは先延ばしできたかもしれないのに宗はついつい確認してしまう。


「だ、誰が・・・?」


 そう言うと女の子は宗の方を指差してもう一度その言葉を言い放ちます。




「パパ‼」




「はい?」


 入り口からは魔夜のそんな声が聞こえてきた。









次の投稿は明日です。

よろしくお願いします。

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