第十七回 クリスマス開始・・・・・と思ったら急な SEKKYOU TIME
書いていて正座の苦しみを思い出していました。
あれはすさまじいものだった。
よく友人たちに突かれていた記憶が蘇る。
そんな私の感傷はともかく、今回の話です。
どうぞ!
クリスマス開始・・・・・と思ったら急な SEKKYOU TIME
天真たち三人が帰ってきた。
「パパ~。ただいま~」
天真がリビングに入って来てダイニングテーブルで準備していた宗に抱き着く。
「おっと。おかえり、天真」
「なにしてたの?」
「ん?これは今日の準備だよ」
宗は自分が持っていた飾りを天真に見せながら笑顔で答える。
「きょう、なにかあるの?」
「ああ。今日は楽しい楽しいパーティーの日だからな」
「ぱーてぃーするの⁉」
宗の言葉を聞いて嬉しそうにする天真。
「ああ。だからその準備をしてたんだ」
本当は天真が帰ってくるまでに終わらせるつもりだったのだが、宗は妹二人によ
る思わぬ妨害(脛蹴り)を受けたために少しの間、ダウンしていたのだ。
「ううっ。許してくれるって言ったのに・・・」
「あ、足が。足がビリビリしてきた・・・」
魔夜と玲美が正座でフローリングの床に座って飾りを作っていた。
「許してあげるのと反省するのは別だからね」
ニコッと正座をしてプルプル震える二人に笑いかける宗。
「ううっ。お兄ちゃんって理不尽なことに対しては容赦なく怒るの忘れてた
よ・・・」
魔夜が涙目で呟く。
と、そこに真麻と玲美がリビングに入ってきた。
どうやら荷物を車から出していたらしい。
「食材、買ってきたぞ~―――って、何してんの?お前ら」
真麻が玲美と魔夜を見てキョトンとする。
「何かあったの?」
悠美が心配そうに聞く。
「ううっ。お兄ちゃんを怒らせただけだから気にしないで・・・・し、しびれ
る・・・」
「宗を怒らせたって・・・。お前ら、何やったんだよ」
真麻が呆れながら魔夜たちに聞いた。
「特に理由もなく、イラッとしたからお兄ちゃんの脛を思いっきり蹴った」
「玲美もなの?」
魔夜の話を聞いて悠美が玲美に聞く。
「う、うん・・・・・・あぅっ」
玲美が正座で痺れている足をさすりながら悠美の問いに答えていると、天真が足
を指で突いた。
つい、正座を崩して倒れこんでしまう。
「ママ、なんであしをさすってるの?」
「天真ちゃん。なんて恐ろしいことを・・・。わ、私にはしないでね?」
天真が突いたことによってより足に痺れがきたのか、悶える玲美。
魔夜はそんな玲美を見て天真に懇願する。
「二人の反省のためにやっているのに、不公平はダメだよな。天真、魔夜にもやっ
てあげなさい」
宗がそう言うと、天真が嬉しそうに頷く。
「わかった!えいっ‼」
魔夜の足を突く天真。
「うきゃっ」
その痺れを受けて魔夜も玲美同様になり、悶える。
天真はそれで満足したのか、宗の所に戻った。お気に入りの宗の膝の上だ。
「それで?玲美も宗を蹴ったのか?」
真麻が話を再開する。
「は、はいぃ」
まだ、痺れが引いていないの、若干苦しそうに答える玲美。
「もうっ!なんでそんなことしたの?」
悠美が玲美と魔夜を叱る。
「だ、だって・・・。小学校から必死で逃げてきたのに元凶のお兄ちゃんが楽しそ
うに飾りつけしていたから・・・」
「それで、魔夜ちゃんはつい蹴っちゃったのね。玲美もそうなの?」
「うん。二人で必死に捕まらないように頑張ってたところにあんな嬉しそうにして
たからつい・・・」
俯く玲美。
「でも、元凶って言ったって宗君が望んでなったことじゃないでしょ?わざとって
わけでもないし」
「そうだぞ。魔夜、お前は特にそれがよく分かるはずだ」
悠美と真麻が真顔で言う。
「「・・・はい」」
「それで?宗にはちゃんと謝ったのか?」
「「・・・まだ」」
「はぁ、まったく。お前たちがすぐに謝ったら宗だってもっとすぐに許してくれた
だろうに。宗。もう、いいよな?こいつらも反省しているみたいだし」
「うん。いいよ」
真麻は二人に呆れながら、宗に確認を取る。
宗があっさり許可を出したのを聞いて驚く魔夜と玲美。
「なんだ、お前ら。宗が怒っているからってそんなにあっさり許してくれるなんて
思っていなかったのか?」
「う、うん」
「あと、三十分はこのままかと思ってた・・・」
玲美と魔夜が答える。
「宗がそんな理不尽なことするわけないだろ?お前らが気付いて謝ってくるのを
待ってたんだよ」
「そうだったんだ・・・」
玲美が呟く。
「ほら、さっさと宗の所に行って謝って来い」
真麻に促されて宗の所に行く二人。
ただ、さっきまで正座していたせいで、どこか歩き方がぎこちないというか、お
かしい。
それでも、なんとか宗の座っているダイニングのテーブルまでたどり着くと二人
で頭を下げて謝る。
「蹴っちゃってごめんなさい」
「ごめんなさい」
玲美と魔夜がそう言うと宗も二人に笑顔を向ける。
「うん。いいよ」
宗のその言葉にホッとする二人。
天真がそれを不思議そうに見ていた。
「ママもマヤもなんでそんなにビクビクしてたの?パパ、こわくないのに」
天真の言葉に真麻が噴き出す。
「そうだよな。宗が優しいのはみんな知ってることだもんな」
「急に持ち上げないでくれよ」
テレくさそうにする宗の姿がそこにはあった。
読んでくれて感謝です。
次は13日に投稿です。