第十五回 護衛するクラスメイト 自宅帰宅編
護衛するクラスメイト 自宅帰宅編
マンションから宗と浩太が出てくると待っていた早川と木多見が駆け寄ってきた。
「もうちょっと時間かかると思ったけど早かったね。秋乃ちゃんどうだった?」
と宗に聞くのはさっきと同じ早川。
「うん。最初は元気だったけど、途中で熱が出ちゃったから休ませるためにすぐに出てきたんだ」
質問の答えと秋乃の現在の状態を伝える宗。
その横では木多見が浩太に再び話しかけていた。
「あんた、なんでちょっと悲しそうなのよ」
「いや、ちょっと自分の存在強度について疑問を感じ始めてしまって・・・」
「何を訳のわからないことを言ってんのよ。それより、秋乃ちゃんどうだった?嬉
しそうにしてた?」
ワクワクしながら聞く木多見。
「ああ。してたしてた。それに最後には宗に頭撫でて貰って真っ赤になってた」
「おー!さすが我らの王子様、真尾君。さりげなくカッコいいことするじゃん」
嬉しそうにする木多見。
「ん?なんか呼んだ?」
隣で早川と秋乃の風邪について話していた宗が自分の名前を呼ばれて話しかけ
た。
「ううん。なんでもない」
それに首を左右に振りながら答える木多見。
「それより、そろそろ帰らなくてもいいの?」
「あっ。そうだった。今日は急いで帰らないと!」
早川が宗に聞くと宗は思い出したのか、慌てた。
「それじゃ、護衛再開ね」
マンションを出た道路には一緒に帰っていた(というか護衛していた)クラスメ
イトの男子たちが待っていた。
男子たちは宗たちと合流すると再び周囲を警戒しながら一緒に歩き出した。
さっきまで会話をしていた浩太、早川、木多見も男子たち同様に周囲を警戒し出
した。
(なんなんだよ。このSPと護衛対象みたいな感じは)
宗はそう思いながらも、あまりに真剣に護衛する浩太達に何も言えなかった。
・・・
もうすぐ家に着くところまで着くと一緒に帰っていた護衛も減っていった。
どうやら最終ゴールである真尾家の前に着くころには浩太一人の護衛で残りは帰宅するらしい。
自分たちが周りの宗を誘ってくる連中とは違うという自負からこのような計画になっているようだ。
「着いたな」
歴戦の戦士のように呟く浩太。
実は何度も隠れて護衛していたクラスメイトから妨害したという報告と妨害失敗
という報告を受けていたのだ。
妨害失敗の連絡を受けた浩太は宗をそれとなく誘導した。
お店に入って隠れたり、お腹が痛くなったと嘘をつき、トイレに行ってくると言って宗をその場に待たせたり、違う道に進路変更したりと。
それはもう色々した。
幸いだったのは、予想していたよりも早く下校出来たことだ。
宗たちのクラスのホームルームが早く終わったことによって学校から秋乃の家まであまり宗をお誘いしようとする輩が少なかったのだ。
しかし、そこから追いついたのか、色々な手段でアタックするヤツらが出てきたのだ。
馬鹿正直にお誘いにくるヤツ。これはまだいい。潔い分好感が持てる。
だが、出会い頭にぶつかってこようとしてくるヤツ。不良にわざと絡まれてこちらに助けを求めようとするヤツ。などなど。
色んな手で宗をお誘いしようとしてきた。
まあ、出会い頭にぶつかろうとしたヤツは宗とは逆方向から来たクラスメイトにぶつかった。
ぶつかる瞬間、目を閉じていたのか相手が宗ではないと気づかず、宗に言うためのセリフを言ってしまい、そのままクラスメイトに連れられフェードアウト。
不良に絡まれ助けを求めようとしたヤツは助けを求める前にクラスメイトによって助けられ、作戦失敗。
それでもあきらめずにアタックしようとしたのでクラスメイトで作った人混みでフェードアウトしてもらったりと。
他にも色々頑張っていた。
報告と妨害によって浩太がそんな戦士のような顔になってもおかしくはなかった。
無論のこと、帰宅したクラスメイト達も同じような顔になっていたのだが、このときの宗には知る由もない。
「あ、ああ」
その浩太の姿にドン引く宗。
「じゃあ、俺は帰るわ。また学校でな!」
「お、おう。良いお年を」
「おう!良いお年を!」
本来なら家に上がってお茶でも用意するのだが、今回は天真がいる以上、それが
出来ない。
少し、申し訳がなさそうに浩太を見送る宗。
「なんか、迷惑かけちゃったかな?」
そう呟きながらも浩太が見えなくなるまで見送った。
「さて、それじゃ準備を始めますか!」
そう言って宗は家に入っていった。
読んでくれて感謝です。
次は29日に投稿です。