第十三回 クリスマスの学校
クリスマスの学校
いつものように宗は学校に到着したのだが、何故か周りがいつもよりガヤガヤしていた。
「なんだろう?」
実はクリスマスに宗をデートやパーティーに誘おうと周りの人たちは考えている
のだ。
女子だけでなく男子までも。
まあ、女子は分かり切ったことではあるのだが、男子は宗がいれば女子が一緒にくっ付いてくると考えてのことである。
「まあ、今日はクリスマスだからな。みんな俺みたいに浮かれてたり、はりきった
りしているんだろう」
宗が良いように解釈していた。
結局、教室に着くまで宗は誘われることはなかった。
どうやら互いに牽制し合っていたようだ。
「おはよー」
宗は教室に入って挨拶した。
「宗。おはよ」
浩太が近くに来て宗に挨拶する。
「今日の学校はヤバいな」
「?」
宗は何のことか分かっていない。
「あー。まあ、お前が気付くわけないわな」
「?」
「まあ、気にするな」
「お、おう?」
「だが、今日は誰の誘いも受けるなよ」
浩太は友人の心配をしていた。
ちなみに、この友人は宗のことだけではなく、秋乃のことでもある。
下手に宗を誘ってOKを貰ったら最後。周りから嫉妬の嵐だ。
まあ、宗たちのクラスは秋乃のことを応援しようということで団結しているので、クラス内ではそのようなことにはならないのだが。
「ああ。元からそのつもりだよ。俺には使命があるからな」
言っていることは重大なことっぽいのだが、実際はパーティーの準備のことであ
る。
「なら、いいんだけどな」
浩太も宗の滲み出る意味の分からない迫力に若干引いていた。
「あれ?そういえば秋乃は?」
「あいつはまだ来てないぞ?」
「どうしたんだろう。もうホームルーム始まるぞ」
そう会話していると担任の先生が教室に入ってきた。
「席につけー」
宗と浩太はその言葉に従って席に着いた。
「えー。今日は終業式だが、倉西が風邪でお休みだ。みんなもこれから冬休みだか
らって羽目をはずし過ぎるなよ。体調管理をしっかりとな」
(秋乃は風邪か。大丈夫かな?)
宗は心配になった。
ちなみに、宗以外のクラスメイト達はみんな(あちゃー)と思っていた。
実は、クラスでどうにか宗と秋乃がクリスマスに一緒に過ごせるようにと二人に内緒で計画していたのだが、それもおじゃんだ。
それからつつがなくホームルームは進んでいった。
「じゃあ、最後に。真尾!今日は気をつけろよ!それからお前らも、一つの目的で
団結しているんだから今日はしっかり真尾をガードしてくれ。以上だ。これから終
業式があるから廊下に出ろ」
宗は先生の言うことに意味が分からないといった顔で困惑している。
クラスメイト達は宗とは違い、厳しい表情で先生の言葉に頷いていた。
宗はそのクラスメイト達の顔が魔王軍の軍人たちと重なって見えたのだが、気の
せいだと特に何も考えなかった。
・・・
終業式が終わり、帰りのホームルームが終了したので宗は帰宅しようと教室を出
た。
早めにホームルームが終わったので、宗は嬉しそうに席を立った。
しかし、何故かクラスメイト達に道を塞がれ、止められる。
「待て。家まで俺達が送る」
クラスを代表して浩太が宗に言う。
「?どうしたんだ浩太。なんか顔がどことなく劇画タッチになってるぞ?それにみ
んなも」
これからの戦にクラスメイト達は覚悟を決めているのだ。
「いいから!お前が家に着いたらみんなすぐに帰るから。気にするな」
「あ、ああ」
浩太達の迫力に気圧される宗。
「あ、でも。帰りに秋乃の家に寄って行かないか?何故かみんなで行動するみたい
だし。お見舞いに行こうぜ」
宗の提案にみんなでガッツポーズ。
((((((((((ナイス、天然!))))))))))
「聞いたな、みんな!これから秋乃の家を経由して宗を家に護送する!各自、持ち
場につけ!」
浩太のその言葉にクラスメイト達は統率された動きで散っていった。
「今日のみんなは一体どうしたんだ・・・」
うんざりした様子で呟く宗。
宗は自分の置かれている状況を全然分かっていなかった。
宗は帰宅と言う名の戦争のために準備に取り掛かるクラスメイト達を茫然と見て
いた。
読んでくれて感謝です。
次は15日に投稿です。