第十一回 クリスマスに挑む父親
クリスマスに挑む父親
学校が終わり、放課後。
宗はすぐに家には帰らず、電車で隣町の大型ショッピングモールに来ていた。
「さて、ここまで来たはいいけど、天真は何をプレゼントしたら喜んでくれるかな」
ショッピングモールの入り口に立ち、呟く。
結局、何も閃くこともなく、ここまで来てしまった宗。
「とりあえず、ウィンドウショッピングだな」
宗はそう呟くと、子供へのプレゼントの定番、子供向け玩具コーナーへと歩いて
行った。
・・・
「あれ?」
宗は玩具コーナーで何かを見つけたようだ。その直後、宗は急いで物陰に隠れ
た。
その速度は普通の中学生に出せるものではないが、それを見ている者は幸いな
ことにいなかった。
宗の視線の先には妹たち二人がいた。どうやら二人も天真へのプレゼントを買い
に来ているようだった。
さっきから「天真、これ喜んでくれるかな~?」とか「これがいいよ!」とかまさに女子の会話といった感じで話している。
「う~ん。このまま合流するのも気まずいしな~。それにプレゼントが被りそう
だ。ここは一旦離れよう」
ここに来るのは後でいいやと思いながら素早くその場を離脱した。
・・・
宗が次にやって来たのは子供用の服屋。
服にハズレはないだろうという考えからである。
「あれ?」
服を物色していると宗は再び何かを見つけたようだ。またまた物陰に隠れる。
宗の視線の先にいたのは真麻と悠美、そして天真だった。
どうやらプレゼントを内緒にすることなく、天真に選んでもらうようだ。「親は宗たちがやってくれているからこういう時に楽だわ~」とか「プレゼントを内緒にしないでいいのはありがたいですよね」とか結構無責任なことを言っている。
この様子にイラッときた宗。
「自分の子どもに任せて楽している能天気な父親にはお仕置きだ」
魔法で真麻の足の裏を床と一瞬だけくっ付ける。
天真は真麻から離れていたので天真が真麻に巻き込まれて転ぶといったヘマを宗はしない。
「どわっ⁉」
宗の魔法にあっさりと引っ掛かり、転ぶ真麻。
しかし、流石は現役の魔王。
急いで起き上がると即座に周りを見渡す。偶然転んだのではないことに即座に気づき、誰がそれをしたのか探っているようだ。
しかし、現役の魔王なら宗の魔法にまんまとひっかからないで欲しいものである。
「おっかしいな~?」
どうやら見つからなかったようだ。真麻は諦めて悠美と天真の元へ戻る。
ちなみにこの真麻の失態を見た悠美と天真は笑っていた。
「危ない危ない」
宗は存在遮断の魔法を使ってすぐに隠れていた。
真麻相手になると存在を遮断しないと見つかってしまうのだ。
「ともかく。仕方ないな。ここも後にするか」
宗は見つからないように別の店に向かった。
・・・
次にやって来たのはDVDショップ。
「子供向けのアニメのDVDセットはかなり有りだな」
ちなみに宗は王族なのでお小遣いも一般の中学生よりも多く貰っている。
それに加えてたまに真麻やその部下たちの仕事も手伝っているのでさらにお金を貰っている。
そのおかげか宗は個人でまあまあのお金持ちだ。
それはともかくとして。
宗がア○パンマンやドラ○もんなどのパッケージを見ていると
「あれ?真尾君」
宗が声のする方に顔を向けると同じく学校帰りなのか、制服姿の秋乃がいた。
「こんなところで会うなんてね」
こんなことをクールに言っている秋乃だが、心の中では(ラァァァッ
キィィィィ‼)と叫んでいた。
「ああ、秋乃か。秋乃はここで何か買うのか?」
「私、ミステリーが好きだからいつもここのレンタルで借りて観てるの。今日も借
りに来たんだ」
急に声をかけられた宗は若干動揺しているが、ポーカーフェイスを崩さない。
流石は王子だ。
「へぇ~。俺はあんまりミステリーは見ないからちょっと興味あるよ」
宗の言葉に「チャンス‼」といった感じの表情をする秋乃。
「じゃあ、私のオススメを教えてあげるよ。こっちに来て」
そう言って宗の手を取ってミステリーコーナーに宗は連れて行かれた。
・・・
三十分後。
疲れた顔でDVDショップの入り口に宗は立っていた。
「流石に長いよ」
あれから宗は秋乃に腕を組まれ(拘束とも言う)ミステリー作品について延々と
話を聞かされていたので、宗がこんなに疲れているのも仕方がないことなのだ。
宗は30分近く秋乃のオススメミステリーの話を聞いた後、秋乃が選んだミステ
リードラマを一シリーズ全て借りてその場で秋乃に別れを告げた。(秋乃は残念そ
うにしていた)
そのあと、秋乃が帰ったのを確認してDVDショップに戻り、天真のプレゼントを
購入した。
そして現在。
「やっと買えた。けど、これはサンタ用のだからな~」
そう。
宗には買わなければいけないプレゼントが2つあるのだ。
ちなみに買ったDVDはト○とジェ○―だ。
次は宗が天真にあげるプレゼント選びに向かった。
・・・
次にやって来たのは本屋。
天真に絵本はどうかと考えたのだ。
宗は誰か知り合いがいるかと警戒する。毎回違う店に行くたびに知り合いに会う
宗。
これは警戒しても仕方のないことだ。
しかし、今回は誰もいなかった。安堵する宗。
「行く先々で知り合いに会うからついつい身構えてしまった」
いないと分かると警戒を解き、絵本のコーナーに向かう。
「せっかくだから天使とか悪魔の出てくるお話とかがいいな」
天真は天族。宗、魔夜、真麻は魔族。玲美、悠美は人間。
出来るだけ天使とか悪魔とかに触れさせておきたいという宗の親心が発揮されてる。
中学一年生で親も何もないが。
3冊ほど見繕った宗はすぐに購入。ホクホク顔で帰路についた。
しかし、宗は忘れていた。
今回、このショッピングモールには家族全員がいたことを。
「「「「「あっ」」」」」
出口で気まずい空気になる5人とそれを不思議そうに見つめる天真の姿がそこに
はあった。
読んでくれて感謝です。
次は6月1日投稿です。