第九回 帰宅した三人の親バカが発動した
元の文量に戻ります。
また、少なくなることもありますが・・・。
そこはご容赦を。
では、どうぞ!
帰宅した三人の親バカが発動した
「「「天真~!」」」
帰宅した三人が天真に抱き着いていた。
「くるしいよ」
嬉しそうに文句を言う天真。
「「「ぎゅ――!」」」
「ただい・・おわっ!なんだこれ⁉」
玄関で三人が天真に抱き着いていると真麻が帰って来た。帰ってきた真麻は宗た
ちを見てかなりびっくりした。
「お前ら・・・。俺のこといつもドン引きしてるけど、今日は絶対お前らの方がや
ばいぞ?」
真麻がドン引きしていた。
まあ、絵面だけ見ると三人が抱き合っているようにしか見えないのでしょうがない。
真ん中で抱き着かれている天真は外側からは見えていない。
「お前ら、その辺にしておけ。天真も辛そうだし。それに何より、天真は小さいか
らな。今お前らは実質天真にじゃなく、三人で抱き合ってるんだぜ?」
真麻がそう言うと真っ先に玲美がその言葉に反応した。
「わわわっ」
「今頃気づいたのかよ。玲美も積極的だな~と思ってたんだが」
と、そこで宗と魔夜も天真から離れた。
「あー、くるしかった」
「ごめんな」
「ごめんね」
兄妹二人が謝る。
「結局お前ら三人ともかなりの親バカだな」
「「「うるさい!」」」
三人とも顔を真っ赤にして全力で叫んだ。
・・・
「じゃあ、これから家族会議という名の説教を開始するぞ」
家族全員が夕食もお風呂も済ませてみんながリビングにいた。宗、玲美、魔夜は
正座だったが。
ちなみに天真は正座している宗の膝の上に座っている。
「なぜか俺だけ責め苦が多い⁉」
「天真が一番懐いてるのはお前なんだからしょうがないだろ」
「ううっ!き、きつい~」
「とにかく、始めるぞ!」
真麻がゴホンと咳払いをして場の空気を一回リセットする。
「お前たち、今日の学校。一体何を考えて過ごしていた?」
「「「天真」」」
三人が同時にそう言うと真麻も少し戸惑う。
「お、おう。一片の迷いもなく言い放ったな。だがしかし、俺はそこに何か言った
り、文句を言いたいわけじゃないんだ」
「「「?」」」
「俺が言いたいのは、だな。お前ら他のことが手に着かなかったり、友達に心配さ
れたりしただろ」
あっさりと図星を突かれて真麻から目をそらす三人。
実はこの三人、前の話で描かれなかっただけで他にも色々と失敗しているのだ。
魔夜は家庭科の授業では天真のことを考えていて料理を焦がして失敗。
玲美は給食の時間に天真が寂しがってないか心配でスープをこぼしてしまう。
宗に至っては授業で先生に指名されていたことにも気づかないし、体育の時間のバスケットボールで顔面にボールの直撃を受けているのだ。(ちなみに宗は身体強化の魔法を無意識に発動していたので怪我自体はない)
「その反応だけでよく分かった」
分かりやすい三人に苦笑いの真麻。
「お前らは天真のこと考え過ぎなんだよ。このままいくと親バカ通り越してモンス
ターペアレントになるぞ」
「「「・・・・・はい」」」
「さっきのこともそうだ。天真が苦しそうにしていたのにずっと抱き着いていただ
ろ。親を名乗るならそこはちゃんと子供のことを考えないと!自分のことだけ考え
て行動するな」
「「「・・・・・はい」」」
「さっきからなんか不服そうだな。どうした?俺に何か言いたいことがあるの
か?」
真麻がそう言うと三人がアイコンタクトをとる。いつこんなことが出来るように
なったのだろうか。謎である。
代表して宗が言うのか、宗が真麻を見た。
「あのさ・・・」
「ん?」
「父さんの言ってることはもっともだと思ったんだけど・・・」
「うんうん」
「子育て経験皆無の人に言われたことになんか釈然としない」
宗にそう言われて固まる真麻。
「ううっ。そうだな、そうだよな!確かにお前の言うことは正論だ!だが、残念
だったな!俺がしているのは客観的に見たときの第三者の説教であって父親として
では決してない・・・・・うぅっ・・・」
そう言うが、徐々に悲しくなってきたのか、悠美に抱き着く真麻。
「息子たちが俺をいじめる~」
「母さんに泣きつくなよ。まあ、父さんの言うことだけはもっともだったし、反省
するよ。なあ二人とも」
「うん」
「そうね」
「だけってなんだよ⁉」
「そうね。「肯定しちゃった⁉」確かにもう少し私のこと信じてくれれば嬉しいわ
ね。今の三人は裏を返せば天真は自分たちがいないとダメだという驕りになるんだ
から」
「「「うっ!確かに。それは本当にごめんなさい」」」
悠美の言葉を聞き、シュンとなる三人。
ちなみに、真麻は味方の思わぬ裏切りによってダメージを受けていた。
この家最強は魔界最強の魔王とその子供たちを圧倒する悠美のようだ。
・・・
説教の間、天真がおとなしいと思っていたらどうやら寝てしまっていたようだ。
真麻は「珍しく俺がかっこよかったところなのに・・・」と落ち込んでいた。部屋の隅で「の」の字を書いている。カッコいいかどうかは甚だ疑問ではあったが。
まあ、掘り返すまい。
宗達は天真をベッドに運ぼうとリビングを出ようとしたのだが、そこで真麻が三人を引き留める。
「今日の話とは別に言うことがあったんだ。ちょっと三人とも待ってくれ」
「「「?」」」
「ちょっと部下に頼んで部屋をもう一つ作ってもらったんだ」
「ええっ!」
玲美がすごく驚いてた。
「それで今日仕事場に行ってたのね」
悠美が玲美にばれないように言葉を濁して言う。
「ハア。またフェルドマさんに無茶言ったな」
宗がそう言い、魔夜も得心いったのか宗と一緒にジト目で真麻を見つめる。
「まあまあ。そこは置いておいて。その部屋なんだがな?天真の部屋にしようと
思って作ったんだ」
「へえ~。それはまあいい仕事したな、父さん」
「ああ!それでな。最大で天真入れて四人まで寝れるベッドにしておいたから」
「なぜそんな無駄な大きさに⁉」
宗が驚く。
「いや、天真が一緒に寝たい人と寝られたらなと思って。どうせ天真が一番懐いて
いるのは宗だし、玲美もママって言われるぐらいだしな」
「あれ、私は?」
「お前は逆に天真に懐いてるだろ」
「うっ。まあ、そうだけどさー。そりゃお兄ちゃんとお姉ちゃんには負けるけど
さー」
魔夜は何とも言えないといった表情をしている。
「それで最大お前らが全員寝れるようにしたんだ。大変だったぞ、フェルドマを説
得するのは」
まあ、フェルドマのことだから「王族が同衾などいけません!二人には早すぎま
すぞ~~!」と言っていたに違いないが。
「まあ、今日はもう天真寝てるから宗のところで寝ればいいさ。あの部屋使うのは
明日からな」
「ちょっと待って」
玲美が顔を真っ赤にする。
「二人は兄妹だからいいかもしれないけど、私は血は繋がってないんだよ。さすが
にそれはまずいと思う・・・の・・」
ものすごい恥ずかしそうにモジモジしている。
「まあ、玲美の言うことももっともであるんだが。もし天真に『パパとママといっ
しょにねたい』って言われたらどうする?」
「「寝ます」」
即答の宗と玲美。
「だろ?じゃあいいじゃねーか、それで」
「「・・・はい」」
「まあ、それも明日からだし。それにいきなり宗と寝るかは天真次第だからまだ先
かもしれんし」
「た、確かに?」
よく分かっていないのか、曖昧に納得する玲美。
「だろ?じゃあ納得しておけ」
「はい」
「俺が言いたかったのはそれだけだ。以上!もういいぞ。おやすみ」
そう言うと三人は各々おやすみと言って自分の部屋に戻っていった。
「真麻さん。三人の仲が良くなるようにわざとそういうふうにしたでしょ」
「悠美さんには敵わないなあ。まあ、三人の距離を縮めるのにはちょうどいいと
思ってな。実行に移したってことだ。正確には宗と玲美の距離をだけどな」
「ふふふっ。あなたも十分親バカですよ」
そう悠美に言われた真麻は顔を真っ赤にしていた。
読んでくれて感謝です。
次は18日投稿です。