表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
輪廻  作者: 福壱柚
2/6

第一話 始まり

目を開けると、目の前には闇が続いていた

右も左も、下も上も分からない


「佐崎苗様ですよね」


突然名前を呼ばれた。振り返ると、ホウっと明かりに照らされた蛇がにゅるりと地面らしき所にいた


「・・・へっ蛇がしゃべった・・・」

「ハァ、何故に人間と言うものは私たち共みたいな動物が喋ると、驚くのでしょうか」


くたりと蛇の首が垂れる

何なんだこの蛇は・・・

私は手の平で自分の頬っぺたを抓った


「痛い・・」

「当たり前田のクラッカーです」

「・・・・・何それ」

「知らないのですか?」


私は考える。いままで生きてきた中で(まぁもう死んでいるけど)そんな言葉あったのか

多分私の言葉の辞書には書いていないだろう


「・・・これはもう現代では死語ですか・・・」


ふぅ、とまた蛇はため息をついた


「つい、三十年前までは流行語だったのに・・・」

「あのー・・いいですか?」


蛇はちらっと私を見て言った


「あぁ。そういえば忘れていました」


するりと蛇は私に近づいてきた

びくっと体を震わせると、大丈夫とやさしい声で言ってきた


「佐崎苗様。このたびは六道案内ツアーをご利用ありがとうございます」


はぁ?と私が小さく声をもらす

大体この蛇は一体なんなんだ?


「貴方様は一時間前自ら命を絶たれましたね」

「まぁ、一応」

「こちらでは、えーと、迷える魂とでもいいましょうか、そう言う魂の方は天国には行かず輪廻の世界に行かれるんです」

「・・・りんね?」


首をひねると蛇はうなった


「うーんと、ようするに、地獄よりももっとひどい世界に行かれるんです」


自殺すると地獄に行くと思っていた私は蛇の話を聞いてぞっとして、火の中を永遠に走り回っている人の想像をした


「あっ・・・そんなひどい世界じゃありませんよ」





「ただもう一度生き返るだけですから」

「せっかく死んだのに?!」


冗談じゃない、こっちは痛い思いして死んだのに

心の中で叫んだ


「そういう運命なんです、と言うか、自業自得ってやつです」

「そんなぁー・・・・・」


がくっと私は肩を落とす

それを見たのか、蛇は慌てて付け加えた


「と、ごくまれに貴方様のような魂の方のために、案内人の私共がいるんです」

「・・・はぁ」

「申し遅れました、私、蛇の屍≪しかばね≫と言います。以後おみしりおきを」


くにゃりと首を下げる

蛇に頭を下げられていると思うと変な気分になった

蛇がふっと後ろを向いた、何かを確認しているみたいで、あぁそうだなとか、ちょっと手間取っているとか(私のこと?)ぶつぶつ言っている

その間私は話を整理した


一つ目、私は六道輪廻と言うわけのわからん世界に来たこと

二つ目は、そこで私はもう一度生きかえらなくちゃいけないと言うこと

三つ目は、その、案内人は変な蛇の屍と言うやつだっていうこと


「ハァ・・・」


自然とため息がでる

いくら頭の良い私だってこんな状況テストに出ても分からない


「苗様、そろそろ本題に移らせてもらってよろしいでしょうか」

「はい、どうぞ」


ゴホンっと屍は咳払いをする


「今から貴方様に六つの冥界。地獄道、餓鬼道、畜生道、修羅道、人間道、天界道の中の人間道の世界に行ってもらいます」

「どんな所?」

「ついさっきまで貴方様がいた世界です」


ほっとした。少なくても火の中を追いかけられることはないだろう


「やることは簡単です。貴方様はその世界で、真実を洗いざらい見てきて下さい」


さらりと屍は言う


「どうやって?」

「貴方様が見たいと思った相手に近づき、手を握って下さい。あぁ、大丈夫です、相手には見えませんし、触られている感覚もありません」


なにせ死んでますからとにこやかに言った

以外とつめたい蛇だなと、私は思った


「それでは行ってよろしいですか?」

「は?いや、駄目。大体、真実ってどういうこと?」

「どういうことと言われても・・それは自分自身で考えて下さい」


この駄目蛇めと小さく声を漏らした


「それでは行きますね」

「えっ・・・ちょっと」


待ってといい終わらないうちにふわりと体(魂かな?)が浮いていった


「わわわ・・・」

「大丈夫です、怖いのならば目をつむっていて下さい。今からもっとおぞましい世界が見えますから」


屍に言われ、慌てて目を閉じた

ぎゅんっと衝撃が大きくなったと思えば、辺りに血の香りが漂った

手で鼻をつまむといくらか楽になったが、鼻に血の香りがこびりついて吐き気がした

段々ぎゅんぎゅんと進むスピードも衰えはじめ

最後にポムっと音がしたかと思えば、ぶわっと爽やかな風が顔にかかった


「苗様。目をあけても大丈夫ですよ」


おそるおそる目を開ける

そこには、つい先ほどまで居た町並みが広がっていた






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ