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秘める聖女と優しき逃亡者  作者: 黒羽、冥月 霜華
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☆街での出来事

「では、ごゆっくりどうぞ。カッツェ様」

「有難う」


 恭しく頭を下げ、部屋から出て行く宿屋の主人に少し疲れが見える笑みで答えたローザ。

 パタリとドアが閉まるのを確認すると、大きく息を吐きベッドへと腰掛ける。

 どこかだるそうな雰囲気で剣を枕元へ置くと、そのまま鎧を脱ぐ。


「私は一体何をしていたんでしょう」


 呟かれた言葉の意味を問う者がいない部屋に、ローザの声が響く。

 疲れているその顔に浮かぶのは自嘲の笑み。

 はぁっともう一度大きく息を吐いたローザは、そのまま仰向けにベッドへ倒れこんだ。

 目に映るのは屋敷の真っ白な天蓋ではなく、所々傷んだような木々の屋根。


「何故、私が……いえ、私でないといけないんですわ。今回の件は……」


 ごろりと寝返りを打ちながらローザは自分に言い聞かせるように呟く。

 外からはどこか賑やかな声が聞えていたが、ローザは気にも留めずに深いに眠りについた。


「うっ……」


 眠りについてからどれだけの時間が経ったか分からないまま、ローザは身体が命じるままに瞼を上に上げた。


「まぶし……」


 目を開けると刺すような光が見え、思わずローザは手で目を覆った。

 そのまま2、3度瞬きをし、光に目をならし、やっと手を目の上からどける。


「カーテンをしていませんでしたのね」


 さんさんと太陽の光を部屋に入れる窓を睨むように見ながら、ローザは昨日の自分がいかに余裕が無かったのかを知る。

 溜息を吐いたローザはベッドの淵に座り直すと、瞳を閉じ瞑想を始めた。

 身体の中を巡る魔力の量がほとんど戻っている事を確認すると、口角が僅かに上がる。

 そのまま瞳を開け、身体の力を抜いたローザはいつも通り鎧を身に纏い、レイピアを腰に差す。

 部屋の片隅にあった小さな洗面台で顔を洗い、髪を整えると扉の前に立つ。

 耳を澄ませ、扉の向こうに人の気配が無いかを確認したローザは、深呼吸をして扉を開けた。

 そのまま階段を下り、意識的に口角を上げるとローザはカウンターで転寝をしている宿屋の主人に声を掛ける。


「お早う御座います」

「んぁっ? お、お早う御座います! カッツェ様!」

「すみません。驚かせてしまいましたか?」

「い、いえ! そんなことは……」


 そう言いながらも分かりやすく顔を伏せた主人に、ローザは微笑みながらもう一度謝罪し、宿代を払う。


「もしかしたらまた、お世話になるかもしれません」

「わ、分かりました。こんなボロ宿で宜しければいつでもどうぞ!」


 勢い良く頭を下げた主人に礼を言いながら宿を後にし、街の入り口に繋いでいた馬の世話を一通り済またローザは、街の中心部へと移動すると簡単に食事を済ませる。

 そのまま情報を集める為、人々に声を掛けていたローザの耳に、誰かの驚く声が届いた。


「あれは……」


 振り返ってみると、城で何回か見かけた男性が何処かへと去っていく所だった。

 男性の動きにどこか違和感を覚えたローザは、話を聞いていた商人に礼を言うと足早に男性の後を追うのだった。

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