★不吉な出会い
朝食を食べ終え、クロードたちは出かける支度をする。
クロードたちはフードつきの長めのコートを着て、フードを被る。クロードは黒、ユリアは薄茶色のコートだ。
森を出ると街が現れる。辺境の街なので人通りは少ないが賑わっている。
日よけのためにフードを被る人たちが多くいるので、クロードたちがフードを被っていても怪しまれたりはしない。
「今日はどこ行くの?」
ユリアがニコニコしながらクロードに訊ねる。
クロードは顎に手を当てる。どこに行くとかあまり考えずに出てきてしまったと少し後悔した。そういえば食料がだいぶ減っていた気がするな、と思い答える。
「食料を買いに来たんだ」
「甘いもの食べたい」
「買ってやる」
クロードはユリアの頭をフードの上から撫でる。
ユリアは気持ちよさそうな顔をする。
「うっ、あ、すいません」
ユリアに気を取られているとクロードの肩に誰かがぶつかった。
「いや、こちらこそ余所見をしていた。すまない」
クロードはぶつかった相手を見て謝罪する。相手は二十前後の男性のようだ。
「えっ」
男性は驚いた顔をする。
「どうかしたか」
「いえ、何でもないです」
軽く頭を下げ、男性は去っていく。
クロードはその様子に顔をしかめる。まさか自分の正体がばれたのだろうという考えが頭をよぎる。
「クロード?」
男性が去った方を見つめたまま動こうとしないクロードに、ユリアは心配なって声をかける。
ユリアは薄々と気づいていた。クロードは、外に出るときはいつも警戒していることに。理由はよく分からないが、人よりも人の感情に敏感なユリアはクロードが家にいるときと外にいるときとでは様子が違うことは分かっていた。
「ああ、行こうか」
クロードは少しためらいながら歩き始めた。先ほどの男性はどこかで見たことがある気がするが、どこだったかが思い出せなくてスッキリしない。自分の正体がばれていないことを願う。
***
先ほどぶつかった青年――クロードから離れた後、男性――ラファール・カルマは路地裏に身を潜めて考え事を始めた。少し薄暗い路地裏は滅多に人が通らない。
「なぜ、生きてるんだ……」
ラファールはポツリと呟く。瞳は恐怖で彩られている。
青年の隣にいた少女を思い出し、ラファールは眉をひそめる。
「それにあの瞳は」
フードを被っていて見えづらかったが、左右の瞳の色が違かった。本当にそんな人が存在するとは思ってもいなかった。所詮ただの昔の伝承、信じるに値しないものだと思っていた。
「いったい、何をする気だ」
ラファールの瞳に不安が宿る。いくら考えても何をしようとしているのかは想像がつかない。