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零の領域  作者: ziure
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第8話 条件

 追いかけっこをするときのスタート地点である屋敷の前に戻ってくると、そこにはすでにフェリアとメイリスの姿があった。

 

「お待たせ、二人とも。今回でレイも合格したよ」

「ホント!? やったー!!」

「やっと合格したのね。全く、遅いんじゃないの?」

 

 ティアさんからの言葉を聞き、フェリアは素直に自分のことのように喜び、メイリスは皮肉のようにそう言ってきた。


「とりあえず三人とも私の頭の中にあった基準を満たしたから、次の段階に入ろうかなって思うんだけど、いいよね?」

「いや、それを僕たちに聞かれても……ティアさんがいいと思ってればそれで良いんじゃ……?」

「それもそうだね。いやー失敗失敗。てへ」


 僕がそう言うと、ティアさんは失敗したとばかりに舌を出しておどけてみせる。容姿はすっかり大人なのにこういうところは子供っぽい。けどそれが妙に様になるから不思議と変には感じない。


「そういえば聞いてなかったけど、それぞれの合格の基準って何だったの?」

「それ私も気になります!」


 メイリスがそう疑問を抱くと、フェリアもそれに同調する。僕としても彼女らの基準が何だったのか気になる。基準が一緒で、彼女らよりも合格が遅かったということだったら、なんだかすごく悔しいし。 


「ああ、それは言ってなかったね。気になってるなら教えよっか」


 そう言ってティアさんは僕らの方を向き直り、指を一本立てる。


「追いかけっこをすることにした一番の理由は目を鍛えようと思ってたからよ。相手の動きを捉える訓練ね。いくらあなたたちが動けるようになったとしても、魔法がうまく使えるようになったとしても、相手の動きを捉えられないようじゃ意味がないからね」


 確かにいくら足が速くなったり、攻撃力が上がったとしても、その相手を捉えることができてなかったら、攻撃は当たらないし、こちらから動いて仕掛けることもできない。


「まず、それぞれの基準の前に全体の基準から。それは私の動きがそれなりに見えるようになることよ。まあ、最低限私が近づいてきたときに反応してれば良しってことにしておいたわ。完全に捉えることができるようになるまでってするとさすがに時間がかかりすぎるからね。それじゃあ、それぞれの基準ね。ちなみに言うと、私が追いかけるときのやり方は三人とも別々にしてたのよ? それぞれの基準に沿って、ね」


 どういう風に変えていたのだろうか? そんなことを疑問を持つが、きっとそれを今から話してくれるのだろう。  

 ティアさんの方に視線を向けると、ビシッとメイリスの方に指をさしていた。


「最初に教えるのはメイリスね。メイリスは私の魔法の領域に入っているかどうか、反応できるかどうかよ。合格ラインとしては、悪寒を感じたかってところね。どうやら私の聞き方が悪かったせいで、合格にするまでに時間がかかっちゃったけど」

「ホントだったら私が一番最初に合格してたはずなのに……。帽子を取られて、呆然としている瞬間に、『どうだった』なんて聞かれても普通は困るわよ。あなたの動きはほとんど見えないんだから」

「もう、拗ねないでよ。あんなに謝ったんだからさ」


 メイリスは他人の魔法領域に入ったかどうかが基準だったのか。

 もし僕がその課題であったならすぐ合格できたな。

 なにせ、あの環境の中では不意打ちで撃ってくる輩なんて当たり前のようにいたから、それに対応していくうちにその肌がざわつく感覚は見についている。


「それじゃあ次、フェリアね。フェリアは全力で直線的に向かってきたときの私の姿を一瞬でも捉えられたかどうかよ。合格ラインとしては、気配を感じ取って私が向かってきてる方角を向く、向かってきた私に対して帽子を取られる前に何らかの抵抗をすることよ。たぶん条件的にはフェリアが一番だったかもね」

「むー、そういうことは言わないでもいいことだと思うんだけど! これでもすごい苦労したんだから」


 ティアさんから、自分の条件は楽でしたなんてことを言われて頬を膨らますフェリア。

 そんな様子を見て、ティアさんは苦笑いを浮かべるばかりである。


「それじゃ最後にレイね。レイは方向性の問題もあるから、この中で一番厳しい条件になってたの。その条件は私の攻撃、というよりは帽子を取る行動を避けることよ。まあレイには言ってあるけど、一人で三十秒逃げ切るっていうのでもよかったのよねー」


 全員に話し終わったので、ティアさんはパンっと手を叩き、一旦話を区切るとともに僕らの注目を仰ぐ。

 そうされたことで、僕の方向性の問題ということについて聞くタイミングを逃してしまった。


「ていうわけで全員合格したわけだし、明日からは次のステップに進むよ! ちなみに次からは身体強化と共に魔法の訓練も始めるからね。それじゃ今日は解散!」


 解散という言葉を言い終わったかと思うと、ティアさんは一瞬で屋敷に入って行ってしまった。

 まあ、焦らずともきっと明日のこの時間には、自分が目指すべき方向性について聞けるだろう。




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