そして、続いていく―(2)
雪那がA組に戻ると、何故か机が教室の後ろにどけられ、黒板の前には椅子が何脚か並べられていた。
「あ!せーちゃん!A組の集合写真撮るよー」
(そういうことか)
智恵が雪那に気がつくとクラスの人は黒板の前に並び出したが、これまた何故か雪那は真ん中の椅子に座らされ、春希がちゃっかりとその隣に座った。
「撮るよー。はい、チーズ!」
パシャリとカメラのシャッター音がした。ポーズを変えながら何枚か撮っていき、途中から被写体の中に他クラスの人も混ざり、A組内はずいぶんと賑やかだった。
「クラスのグループに送っとくねー」
と、カメラの持ち主が言ったところで、春希は大事なことを思い出した。
「あ、たち…雪那!ラインのアカウント変えただろ?引っ越して行った後連絡取れなくてすっげぇ心配したんだからな。今度は電話番号とメアドも教えてくれよ?」
「ん?あぁ、そうだね。グループにも招待してもらえる?」
「当然!」
雪那は鞄からスマートフォンを取り出したが、そこについているストラップを春希は見逃さなかった。
「そのストラップ、つけてくれたんだ」
その言葉に雪那はただ微笑んだ。その笑みだけで春希には十分だった。
「あ、立花さん、あたしらにも教えてよー」
一通り操作が終わったところでクラスの女子がそう言うと、雪那は不思議そうに答えた。
「何故?グループからアカウントを探せばいいだろう。私は春希にだけ教えておけばいいと思っている。それに、君達と話すことなど何もないでしょう?」
「うっわ、全然変わってない。いつまでもそんなんだったら沢口君に嫌われちゃうよー?」
「……」
それを聞いた雪那からじっと見つめられた春希だったが、ややあって視線の意味に気がつき、慌ててフォローする。
「オレが雪那のこと嫌いになるなんてあるわけないだろ?大丈夫だって、雪那は雪那のままで」
「うん、解った。春希もね?」
「おう」
そうして二人は、笑い合った。
――――――――――
冷たい雪は、やがて訪れる春によって溶かされ、その水は沢となって流れ行き、花を鮮やかに咲かせていく。
きっと二人は、全てを解り合うことなどできないだろう。それでも、理解できないものを否定せず、互いが互いの言葉に耳を傾けることができるからこそ惹かれ合い、そして選んだのだ。
この先続いていく未来はきっと、二人は共に行くだろう。




